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デイリーポータルZで企業を取材した記事の一覧

デイリーポータルZでいろんな企業を取材しています。テーマにあるのは「身近だけど正直よく知らないもの」。知られざるストーリーが出てきて、取材ではずっと「へぇ~!」ばっかり言ってます。

だいぶ数がたまってきたので、シリーズを一気にまとめてみました(下に行くほど古いです)

マジックインキ

・マジックインキを製造販売する寺西化学工業株式会社を取材
・日本初の油性マーカー。油性マーカーを「マジック」と呼ぶのも、使用後にキャップを閉めるようになったのも、マジックインキが起源
・もともとは工場など現場向けの製品。学校は想定していなかった
・ペン先やインキを交換できるように作られている。補充用インキを船底にペンキで塗る会社も(フナムシがつかないため)
・ニオイはきついけど体に有害なものは入っていない

駅の構内図

・駅の構内図を全国2000枚以上手がけている株式会社ナビットを取材
・駅の構内図を作る最大の目的はバリアフリーのため。車いすの人がホームに出るための道筋「バリアフリールート」が赤い点線で描いてある。
・構内図は、ほぼ現地調査で作成。全国の主婦が駅を調査して最新情報を報告
・「のりかえ便利マップ」もナビットの制作。代表の福井さんが1人で256駅を調査してまとめたのが元になっている
・情報が間違っていると乗りこんできた鉄道マニアに逆に仕事を依頼して、全国の鉄道研究会に仕事を依頼するネットワークを作ったりした。

プチプチ

・梱包材の「プチプチ」を製造販売する川上産業株式会社を取材。
・そもそも「プチプチ」が商品名。商品ラインナップは細かく数えると1000種類以上ある。
・1万個に1つの割合でハート型のプチがあり、2ヵ月に1回すべての工場でハートの場所を変えているが、誰にも気づかれていない。
・空気でかさばりすぎて輸送コストが見合わないので、すべて国内生産。
・プチプチの技術を応用した「板」も開発。宇宙開発に使われる可能性も。

ファミレスの呼びだしボタン/フードコートで呼び出されるアレ

・どちらも製造販売している株式会社パシフィック湘南を取材
・呼び出しボタンは当初まったく売れなかったが、当時の社長が「100セット売る」と全てを投げ打って取り組み、結果ファミレスに採用。
・フードコートの呼びだし(ワンタッチコール)はそもそもフードコート用に作ったものではない。
・コロナ禍で飲食業界がダメージを受け、呼び出しボタンもピンチだったが、ワンタッチコールがクリニックの呼びだしに使われてピンチ脱出
・工場や塾、APECの国際会議などにも使われている。

輪ゴム

・「オーバンド」を製造・販売する株式会社共和を取材。
輪ゴムはチューブ状のゴムを金太郎飴のように切って作る
・用途や要望に合わせて太さや大きさを変え、ノーマルな輪ゴムだけで73種類もある(取材当時)
パッケージは1953年からずっと変わっていない。デザインしたのは日本モダンデザインの父・今竹七郎氏
・株式会社共和は粘着テープや「ビニタイ」も製造。留めるものばかり……!

プロンプター

・偉い人がスピーチしているときに見ている透明な板「プロンプター」。日本製プロンプターを初めて手掛けた株式会社ページワンを取材。
・鏡面加工した透明な板を斜めに設置し、下に原稿を置くことで、「スピーチする人には原稿が見えるけど聴衆からは見えない」を実現。
・制作のきっかけはNHKの歌番組。歌詞を表示する仕組みを作った。
・スピーチ用のものは作っていなかったが、あまりにも勘違いした問合せが多いので作ることに。
・専用ソフトで使い勝手を向上。あくまで「読みやすい」「不安がない」が大事。

ガソリンスタンドの洗車機

・ガソリンスタンドで見かける「門型洗車機」を日本で初めて作ったビユーテー株式会社を取材。1号機が今も社内に展示されている。
・当時の社長が渡米したときに勢いで洗車機を買ってきたが全然汚れが落ちず、自分たちで作ったのが最初。
・車に機能が追加されるたびにアップデートしないといけないので大変。
・最近はブラシを使わずにジェット水流で洗車するタイプもある。
・ガソリンスタンドが減ってきたので、最近はコインランドリーなどにも展開

チャッカマン

・製造販売元の株式会社東海を取材。「チャッカマン」は東海の登録商標。商品の分類は「点火棒」
・創業者がアメリカ出張の際、BBQに誘われて点火棒を見たのがきっかけ。日本でもアウトドア用途でも売れるかと思ったが、仏壇で使われてびっくりした
・発売当初、高い山の上で火がつきにくいというクレームが入り、富士山に登って試験をした。
「ターボ」「ともしび」などラインナップが15種類もある。

ド派手な花火のパッケージ

・昭和5年創業の花火メーカー、株式会社オンダを取材
・その昔、花火はバラ売りでお店の人が説明してくれた。商流が代わり、量販店やホームセンターで売られるようになって目立つ必要が出てきた。
花火自体のデザインと、外側のデザインを両方やる必要があり、調和を保つのが大変。
・誰も説明してくれないのでパッケージに全部書くしかない
・ロケット花火は取り扱い自体が減っていて、鳥獣駆除用途で使われる方が多い

食品などに入っている「たべられません」

「脱酸素剤」というもの。世界で初めて実用化した三菱ガス化学を取材。
・密閉された袋内の酸素を吸収して「脱酸素状態」にし、劣化を防ぐ働きがある。
・袋を開けたころには酸素を吸収する機能を失っているので、捨てていい。
・食品以外に医薬品や文化財の保存に使われており、特に食品用は食品ごとに機能が異なるためラインナップがめちゃくちゃある。
・脱酸素剤が初めて使われた食品は仙台銘菓「萩の月」。賞味期限が1日から2週間に伸び、お土産として持ち帰れるようになった

テレビで見かける「落とし穴」や「せりあがり装置」

・1976年創業、テレビやコンサートの電飾、システム、メカトロニクスを手がけてきた株式会社テルミックを取材
・M-1グランプリのせり上がり、めちゃイケの露天風呂スライダー、嵐のコンサートのムービングステージも全部この会社。
『M-1グランプリ2005』で使ったせり上がりは、『VS嵐』で使われていた。
・罰ゲーム用のマシンは出荷前に社員がテストしている(痛い)

ミロ

・生まれはオーストラリア。パッケージの「MILO」の後ろにある白い形は、オーストラリアをかたどったもの
・正確な分量は「大さじすりきり2杯に牛乳150ml」。想像以上に濃い。
・厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」が更新されるたび、含まれる栄養素の量を調節している
・日本で販売されるミロは、シンガポールの工場で作られ、日本の工場でパッケージに詰めている

コンビニに置いてある「防犯カラーボール」

・防犯カラーボールを開発した双喜商事を取材。シェア約100%。
・双喜商事が開発したのは外側のプラスチック。最初は警視庁からの依頼で作ったが、年々警察からの需要が増え、全然営業していないのに口コミで全国に広まった。
・消火剤を入れたボールや、不審船にぶつけるボールもある
・『ほこ×たて』に「当たれば必ず割れるボール×どんな衝撃もすべて吸収するマット」というマッチメイクで出演したことがある。

ソフトクリーム

・ソフトクリームの総合商社・日世に取材。1950年代にソフトクリームを輸入し、「ソフトクリーム」という和製英語を作ったのが日世・日世は製造機と原料とコーンを提供している。ソフトクリームを作るのはあくまで販売店。販売店=アイスクリーム工場の扱い
・大阪万博でソフトクリームを売った2~3年後、全国的にブームに。地元に帰った人が「あのとき食べたアレが美味しかった」と口コミで広めたため
・バニラやミルクなど白いソフトクリームは『白物』、それ以外は『色物』と呼ぶ

のりたま

・2020年で発売から60周年。2019年に販売された「のりたま」は8.6億食。1食は約2.5g。
パッケージは1食分以上の「のりたま」がかけられている。
・旅館の朝食で出された「のり」と「たまご」をヒントに創業者が考案
・「のりたま」の構成パーツは7種類(取材当時)。卵だけでも3種類。食べ始めと食べ終わりで卵を感じるよう粒の大きさなど全部計算している。

雪の宿

・製造元の三幸製菓はもともと漬物屋。新事業を始めるにあたり、「カップラーメン」か「おせんべい」かで迷った末に「おせんべい」を作り始める。
・おせんべい業界は競合が3000社。差別化のために甘いおせんべいを作った。
・本当は「雪見宿」という名前にするつもりだったが、社長からの電話を社員が聞き間違えて「雪の宿」になった。
・甘い面を下にして食べると味わいが違う

シャウエッセン

・ウインナーの「シャウエッセン」は、ドイツ語で観劇を表す「シャウ(schau)」と、食卓を表す「エッセン(essen)」をあわせた合成語
・発売以来35年間味が変わっていない。売上も35年間右肩上がり
・工場には「パリッ」を測定する器械があり、実際に食べて確かめる試験も毎日行っている
・ユーザが高齢化し、2019年は電子レンジを解禁するなど改革の年だった。社内にはレンジ反対派もいたが、解禁したらもっぱらレンジ

体育館にひいてあるライン

・あのラインは何色がなんのコートなのか、スポーツ施設の整備を行う会社に聞いた
・どの競技を何色にするかは作り手の指示。ただ、一番よく使うコートはラインが一番上になるようにひいている。
・色は最大8種類。専門の職人さんが手で描く。
スポーツのルール変更でコートが変わることがあり、そうなると一斉に描き直しの依頼が入る。床の表面を削ってラインを消して描き直す。

薬局に置いてあるフリーペーパー

・アイセイ薬局に置いてあるフリーペーパー。テーマに沿った表紙が毎回凝っていて面白い
・表紙案は多いときには100案以上にもなる。表紙に登場する小道具を手作りすることも(氷でできた下半身とか)
・具合が悪い人が読むので、中身の見開き2ページ完結のイラストにしている
・過去30号分と豪華特典をつけたボックスセット14,800円が完売

自動車を輸出する「自動車専用船」

・自動車専用船「PISCES LEADER」を見学。長さ199.98m、幅35.80m、高さ54.46m
・中に入ると完全に立体駐車場。自動車7000台を一気に運べる。
・船内は12階建て。1階から3階は海面より下にある。
・プロの駐車テクニックがすごすぎ。
・全長が200mを超えると夜間の航行などいろいろ制限されるので、わざとギリギリの199.98mにしている。

会社に届く胡蝶蘭

・お祝いで会社に届く胡蝶蘭、どこからやってくるのかと、埼玉の胡蝶蘭農園を取材
・ハウス内に約1万株の胡蝶蘭が並ぶ。相場は1株1万円。7本寄せ植えしたら(花が7列になって垂れていたら)1万円×7=7万円
・これだけ花が咲いているけど無臭。鉢植えで2ヶ月もつ。花言葉は「幸せが舞い込む」。宅配便の発達により贈答品の定番に。
。胡蝶蘭の株はクローン。同じ形、同じ花が咲く。

エレベーターの渋滞

・エレベーターを待つために行列ができるビルがある。なんとかならないのか三菱電機にきいた。
・結論から言うと、設定をいじるくらいではどうにもならない。
・そもそもエレベーターの設計は「在籍人数の約20%が5分間に集中する」ことを想定して行われている。前提が崩れると困る。
・複数のエレベーターの管理は「イライラ度は待っている時間の2乗に比例する」ことを想定して行われている。
三菱電機本社も昔はエレベーター渋滞が起きていた(いまは新システムで解消)

でん六の「鬼の面」

・山形の本社を置く「でん六」で歴代の鬼の面を見せてもらった
・赤塚不二夫デザインになったのは1972年から
・トレンドを取り入れたデザインにしているが、出荷の都合上前年の5月に翌年2月のトレンドを予想しないといけない
・恵方巻きブームは敵対視していない。むしろ節分を一緒に盛り上げてもらってありがたい。でも恵方巻き売り場に鬼の面を飾られるとモヤモヤする。

スーパーで「ポポーポポポポ」と鳴る機械(呼び込み君)

「呼び込み君」という名前。作っているのは群馬県に本社を置く群馬電機
・店番を目的に作られた。実は2曲入り。声も吹き込める
・当時では珍しかったデジタル音源にいち早く着手。
・手を付けるかどうかで社内で揉めた。
お子さんの誕生日プレゼントに買った人もいる

スケートリンクを走る整氷車

・スケートリンクをピカピカにする「整氷車」を運転させてもらった
・整氷車の運転に特に免許はいらない。体で覚える
・整氷はお湯をまいて表面を削る。0.2mm削るか削らないかの世界
・整氷のプロはスケーターが滑っている音を聞いて「今日は氷が硬い」などわかる

* * * * *

たまに勘違いされるのだけど、これらは全部PR案件じゃない。純粋にそのものが気になって取材をさせてもらっている。宣伝じゃないので、興味が赴くままに根掘り葉掘り聞いてしまう。ご協力いただいた企業の方々には感謝しかない。

毎回、話を聞くたびにいろいろな発見がある。知らなかったことに触れると、世界が少しクリアになる。解像度があがる。記事を読んだ方の解像度もあがったら嬉しいです。

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井上マサキ
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