環境と向き合う姿勢 / 西粟倉を冒険して(なるる)#Season1
西粟倉の冒険。
その冒険は、何か不思議な物語りが紡がれそうな工房の中で行われました。
インタビューは、渋谷さんがいったい何を作っているのか?という投げから始まりました。
(左が案内人の新荘さん、右が今回お話を伺う渋谷さん)
西粟倉は森と共存する村。95%が山林とのことです。ただ、その山林には鹿がたくさんおり、ときに人間の生活に入り込み害を与えてしまう。いわゆる害獣被害です。
こうした被害を無くすために地元の猟友会が鹿を狩るのですが、狩った後の鹿の皮が無駄になってしまいます。
渋谷さんは、その鹿の皮を利用してカバン、財布やキーケース、手帳などを作っているのです。
インタビューで印象に残っているのは、渋谷さんの鹿に対する価値観でした。
まず、猟師の方が鹿を狩り、解体場で解体される。解体される鹿は、基本的に肉をとる事が目的になるので、皮は副産物です。したがって、ときには端切れのような皮しか取れないこともあると聞きました。
鹿の皮を使って何かをつくりたい、よし鹿を狩ろう。
ではなく、あくまでも狩った鹿を無駄にしないための手段として、鹿革製品作りがあるのです。
狩るということは、動物の命をいただくこと。
「つくりたい」という想いが「狩る」という行為を追い越すことはありません。つまり、ものづくりのために命を無駄に奪うことはありません。
(鹿革にまつわるストーリーを、想いを込めて話してくださる、渋谷さん)
こういった生命に対する倫理観を知ることができたのは、非常に貴重で大切だったと思います。
なぜなら、革製品をみたときに、こういった倫理観を知っていることで、その製品への価値観に変化が生まれると思うからです。
例えば、革でできたカバン。
化繊などでできた普通のカバンは、財布や携帯、パソコンなどを入れるための製品です。けれど、革でできたカバンは単に物を入れるためだけではなく、そのカバンを通じて、山村の人々の生命に対する倫理観に触れることが出来るのではないでしょうか。
物を便利に運ぶためのツールであった鞄が、どこかお守りのように自分の生活を見守ってくれるような存在になるのではと感じました。
僕がつくり手の立場になったときにも、こうした生命の倫理観を尊重しながらものづくりをしたいと思いました。
(渋谷さんのものづくりにかける情熱が、お話の中で何度も伝わってきました)
残念な話ですが、世の中には製品を作るための素材を提供するために狩りを行おうとする人もいるようです。
今、僕が使おうとしている素材は、動物の命を無駄にすることなく手に入れた物なのだろうか?
ものづくりに向き合う姿勢として、そういう自問自答は必要だと思いました。
ここまでは鹿革を使ったカバンと狩りにおける生命の倫理観について書いてきましたが、他の産業では環境とどう付き合っているのだろうか。
自分のよく知っている会社は、環境とどういう付き合い方をしているのだろうか。
そんな問いが、西粟倉の工房で生まれました。
なるる
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