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社会課題とイノベーション。災害に強い都市にするにはどうすればいいか。

1.防災システムが普及しない原因

ア. 防災システムが必要な社会的背景
 日本は災害立国とも呼ばれるほど災害の多い国でですね。震度6以上の 地震も毎年のように国内のどこかで発生するし、世界で発生するM6以上の地震の2割が日本国内で発生しています。
また、最近では大型台風、ゲリラ豪雨による大規模水害も毎年発生しています。こういった災害に対する対応を迅速・的確に行うため、GIS(地理情報システム)を活用した総合防災システムの導入が求められてきていましたね。
 日本国では、阪神淡路大震災を契機に防災システムが普及しましたが、大手インフラ企業、国、都道府県、一部の政令市レベルの普及に留まっています。その理由は、この防災システムは有事に利用するシステムである割に、構築する費用が高額であるためです。災害が発生した際には、基礎自治体が最も混乱する現場になるのに、今もなお、防災システムの普及は進んでいないのが現状ですね。

イ. 防災対策に必要な気象データの入手が出来ない。
 総合防災システムが脅威とする事象は多々ありますが、その中でも気象・地象の自然災害への対策は必須な事象と言えます。特に台風、ゲリラ豪雨による風水害、地震の対策は必要であります。発災時に速やかな初動対応を行うためには、どこで、どのような事態が発生したのかを正確に情報収集する必要があります。そのために各種センサ(地震計、雨量計、レーダ雨量、水位計、風速計)を利用することで異常を検知する必要がありますが、基礎自治体で管内にセンサを設置する予算を確保するのも難しいのが現実ですね。また、市区町村から見た場合、気象庁のデータは粒度が粗く初動対応に有効に使えない点もあげられます。

ウ. 防災システムが高額であるため構築できない
 防災システムは、主に災害発生時に利用するシステムである。平常時のシステム利用は少なく、発災時に多量のアクセスが集中します。システムとしては発災時の瞬間ピークを考慮したハードウェア構成、サーバ群の冗長化構成、地震等を考慮したバックアップサイトの確保など重厚なハードウェア構成が必要になります。そうなると購入費、保守費は市町村にとって非常に高額なコストとなり、とても保持できないことになります。

2.阻害要因に対する解決策

ア.インフラ企業が保有するセンサデータを官民共用利用
 国内のインフラ企業は、自らの事業運営を行うため各種センサを整備し、気象データを保有しています。例えば、都市ガス事業者は地震計を保有していますし、他にも電力会社は雷センサ、鉄道事業者は地震計・雨量計、風速計など、インフラ事業者は事業運営するために各種センサを市中に整備しています。気象庁の保有するデータ、インフラ企業の保有するデータを防災クラウドに集約することで、これまでに無い高密度な気象データが網羅され、発災時の初動対応に有益に活用できることがあげられます。
 気象庁の地震計は基本的に1つの市区町村で概ね1つですね。よくA市の震度6などの速報がマスコミを通じ、すぐに知れることになりますが、現実的にはその市内が全て震度6であるはずがないですね。阪神淡路大震災でも箇所ごとに被害はマチマチであり、震度のバラツキは想像できると思います。例えばインフラ企業が保有する気象センサを集約することで、被害情報収集のエリアを限定的に効率的に進めることができますよね。

イ.個別オンプレミスから共用クラウドサービスへの移行
 これまでの防災システムは自治体毎に個別システムとして構築しており、オンプレミスで構築するのが大半でありました。災害が発生するとシステム利用者は急激増加するため、それを見越したサーバスペックを準備しておく必要があり、そうすると高額となる。これをクラウドにすることでクラウドサービスが持っているオートスケーリング機能を利用して高負荷になれば自動で拡張し、負荷が下がれば最小構成に戻れば良いですよね。利用料は利用分に応じて変動することでコスト負荷が大幅に抑制できる。クラウドサービスへ切り替えることでこれほど効果の出る業務システムも無いくらい効果的ですよね。
防災システムをクラウド利用することで通信障害時の影響を考える必要がありますが、衛星ブロードバンド通信がこれから普及しますね。その回線をバックアップで利用することも考えられますね。まさにAmazonやスペースXが進めていますよね。クラウドサービスは複数のリージョンに分散させることで堅牢性の担保を行う事は簡単にできますよね。

3.官民共用利用の防災クラウドサービス

ア.国、都道府県、市町村、インフラ企業、国民が共有できるデータ
プラットフォームで利用できるコンテンツとして以下がありますね。これら必要に応じてセキュリティを設け閲覧範囲を限定する必要はありますね。
 ・気象庁が保有するセンサ等の気象・地象データ
 ・インフラ企業が保有するセンサ等の気象・地象データ
 ・国、都道府県、市町村、インフラ企業が保有する防災基礎データ
 ・関係各所が保有する被害データ
 ・関係各所が保有する復旧計画・実施データ

イ.防災クラウドの利用機能
①官民の保有するセンサデータの集約化
 前述に記載の通り気象・地象センサは気象庁以外にもインフラ企業も保有している。
以下に関東圏(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)の地震計数を見ると
 気象庁92基、地方公共団体534基、防災研84基=公的地震計710基
この防災クラウドに公的な地震計710基+インフラ企業(ガス事業者)がこのエリアに保有する地震計4000基を集約させ、4710基の地震計データを発災時に官民で活用することができれば初動対応は飛躍的に向上できる。
②被害報告のシームレス化
 現状では個別システムで作られた防災システムは他の防災システムとデータ連携ができない。これは市区町村、都道府県、国の関係であっても同じです。基本的にシームレスに連携されていませんよね。これでは被害状況などの情報は共有できませよね。防災クラウドを利用することで被害情報を入力した瞬間にデータが共有化されます。もちろん、セキュリティに応じた閲覧範囲でとなります。
 また、社会にスマホが普及していますので、誰もがGPS+高精度カメラを常に手に持っている時代であります。国民から被害報告を受け付ける機能を設け、一段と早い被害情報の収集も可能となります。国民から見ると伝達先が1つなのでわかりやすいですよね。
③復旧計画の共有化
激甚災害は、道路、電気、ガス、水道などのライフランが同時に壊滅的な被害を受けます。早期復旧を目指す場合には、これらの復旧計画も共有することが効果的であります。例えば道路が使えない無い中でガス管を復旧することは効率が悪いですね。道路、水道は自治体の管轄であり、ガス、電気、通信はライフライン企業の管轄となり、各々災害対策本部で復旧計画が立案されます。それら復旧計画を共有することで個別最適ではない全体最適な早期復旧を目指すことができます。
また、これら復旧計画は国民生活にとっても重要な情報であります。自分の家でいつ電気が通電し、いつガスが使えるのか。この防災クラウドを通じて国民にも情報を共有することができます。
③操作性の習得
阪神淡路大震災や東日本大震災の時もそうでしたが、大震災が発生すると、全国の自治体から復旧の応援にきます。これは自治体に限らず、電力・ガスのライフラインも同じですね。東日本大震災の時は、関西電力さん、大阪ガスさんから応援部隊が駆け付けましたね。防災クラウドが整備されると応援先のシステムも見慣れたシステムであるため、操作性や使い方を気にせずに即日から利用可能となります。道路の被害状況や他のライフラインの被害状況、復旧計画を見ながら復旧計画を立て、早期復旧を目指す。


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