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シニアになって働く意味を考える④ ~マンションの借金のために40歳で離職~ (改題・内容変更なし)
定年前後のシニアに「働く意味」についてインタビューした記事です。
一般的に、働く意味はおおざっぱに以下の2つにあると言われます。
1)自分の好きな仕事、やりがいのある仕事、社会的使命感のある仕事のために働く
2)家族のため、趣味や自分の余暇を充実させるために働く
ところが実際にシニアの方々にお話を聞くと、どうもそんな単純なものではないようです。そこで、シニア一人一人のインタビューを積み重ねて、「働く意味」のスペクトラムを描けたらいいかなぁって思っています。どんな平凡な人生にもドラマがあります。
58歳で早期退職、悠々自適の生活と思いきや?
Hさんは約20年間勤務した半導体商社を58歳(2019年)で早期退職する。現在、マンションオーナーで(ギリギリ)生計を立て、東京都の市民農園のグループリーダーとして活躍し、多くの友人と海釣りなどの趣味を楽しまれています。悠々自適の財産家シニアの話かと思いきやとんでもなく早合点です。このことを読者の方々に分かってもらうには、Hさんのユニークな人付き合いの歴史を紹介しなければなりません。
親から譲られたマンションの借金のために40歳で離職
半導体商社の営業職にやりがいを感じていた40歳で離職を余儀なくさせられる。理由は親が所有する空室だらけのマンションを引き受け、当時の借金を返済するためです。東京都の市郊外の駅から遠く立地条件が不利なだけでなく、当時のマンション管理会社の入居者募集も熱心ではなかったそうだ。マンション経営には素人のHさん、これまで仕事で培った営業経験をいかし、一年ほどで満室状態に復活させて収支トントンにまで経営を安定させる。遠慮なくその方法を聞いてみる。銀行のセミナーに多数参加して必死に勉強し、いくつものマンション管理会社と真摯に交渉し数社から援助をもらえるようになる。また、自宅から離れた現場マンションへも足しげく通い、掃除やゴミ拾い、面倒くさい入居者との人付き合いを心がけ、安心して住んでもらえるようになったという。
41歳でハローワークに通い再就職、「先見の明」で大手商社の要職ポジションへ
なんとか赤字化を逃れたマンション経営も安定し、やりがいのあった半導体商社の営業職復帰にチャレンジする。ハローワークで見つけた小規模なユニークな半導体商社に41歳で再就職に成功する。その商社は今大きな注目を浴びているパワー半導体の専門会社だったことから、その後次々と大きい商社に取り込まれていき、早期退職前には有名大手商社のパワー半導体営業の要職だったというから、Hさんの先見の明には驚かされる。
なぜ、大手商社の営業の要職を辞して58歳で早期退職?
早期退職の理由を聞くと、Hさんは「面倒くさい人付き合いも後々活きてくるもんですね」と言う。中学高校がHさんと同じだったある先輩が地元市議選挙に立候補し、ボランティア応援を頼まれ、商社の仕事をこなしながら、連日選挙カーを運転したそうです。その縁が、今の市民農園のグループリーダーを頼まれることになる。農業研修やトラクター運転講習などを受けて、市民のための農業指導者への道を歩まれている。農作物の販売やビニールハウス栽培などの展開を計画中だと言います。
地元や会社員時代の「面倒くさい人付き合い」が、今では月数回の海釣りを楽しむ気が置けない友人づくりにもなっているそうです。
「(ギリギリ黒字を何とか維持できるまで)マンション経営立て直し、市民農園リーダー、遠慮がない親しい友人関係などが、やりがいのあった営業職を早期退職した理由ですかね。今思うと」としみじみ語られているHさんの穏やかなお顔が素敵です。
働く意味については?
商社勤務時代は多忙だったが、「休日に釣りなどのアウトドア活動や家族旅行などにハリがありまし、今は市民農園の(ボランティアが多いが)仕事自体にハリを感じます。ハリがあることが『働く意味』でしょうかね」と答えられました。Hさん言うハリとは、人付合いを通して得られたやりがいや充実感(リア充)、自己肯定感のようなものだったんでしょう。
後記:
「面倒くさい人付き合いも後々活きてくるもんですね」を文字通り実践されてきたHさんの言葉はズシンときます。他人との距離感を誤り、結果自分が傷つくことを恐れ、一人飯やソロキャンプの方が楽という気持ちもよく分かります。でも、人は一人では生きていけないというのも、シニアの年代になればリアルに実感(重複表現ですね)します。Hさんの言葉は10トントラックぐらいありそうです。重い(思い)ですね。
(余談)今悩みはありますか?という質問には?
順調そうな早期退職後のHさんの生活ですが、何か悩みはありませんか?と言う質問にしばらく考えた後、「今大学3年の息子の就活かな。親が考えても仕方ないけど、ついつい上から目線で親の意見を押し付ける時がありますね」こちらもシニア男は要注意です。
あまりにいいお話だったので、後記が長くなりました。
(2023.03.11投稿)
(2023.04.01改題、リード文変更、内容変更なし)
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