シニアになって働く意味を考える㉕ ~働き過ぎだった、今となっては反省?~
約40年の会社員生活でキツイ時が3回ありました
Aさんは60歳でいったん会社を退職し、同じ会社の延長雇用制度で品質保証の専門職として現役続行中だ。定年退職となる65歳までは仕事は続けたいといいます。
約40年の会社員生活をいつもの仕事人生満足度曲線に描いてもらいました。下降局面が3回あったことが分かります。入社後の1回目、40歳になって品質保証部署へ異動した2回目、50歳になって部門長としてリストラを慣行する側になった3回目です。この記事では、2回目、3回目の下降局面をどうやって乗り越えたかを紹介します。
ノリノリで仕事していたのに、ストレスと仕事量が半端ない品質保証部門への異動
生産技術職として新工程ラインを次々と立上げ、仕事も充実し脂の乗り切った時期の40歳、品質保証部門へ異動となる。大企業ではありがちないわゆる”人事の妙”。
初めての慣れない職、かつ、“品質”と言えばやはり相当ストレスフルな仕事。仕事満足度は一気に急降下。しかし、Aさんのスゴイところは、ここで4,5年間、専門技術と知識を一から身につけ、部長に昇格されたことです。この間、同僚・上司にも恵まれたことが大きかったといいます。(やっぱ、”人事の妙だったのかも?)
と、ここまでは”成功譚”なのですが落とし穴が待っていました。今から20, 30年ほど前の日本の工業製品は世界トップの品質を誇っていました(今では見る影もなしか?)。当時は”品質が命”みたいな風潮で、万が一製品に不具合が起こると徹底的に調査し、危険因子全てに改善対策がなされた後、長時間の信頼性試験を行って効果を検証します。これがどういう意味かと言うと、仕事に終わりがないってことです。
過剰品質で仕事に終わりがなかった昭和の時代、今の新しい仕事のやり方がいい
Aさんは当時を振り返って「今は効率化、省力化で、役割分担し、淡々と自分の職務をこなすのがスタンダード。あの時代の過剰な品質対応はやり過ぎで、費用対効果がなかった。今の新しい仕事のやり方のほうがいいかも」と思うようになったそうです。
今でもAさんは、品質保証の専門職として顧客で起こった不具合対応業務を行っています。「(うるさいお客さんへの)クレーム回答書の作成業務は経験豊富だし、国内外の各工場や関係部門と連携し、会社グループ内の多様な人たちと話しながら問題解決するのが楽しい。」とも言います。ベテランのプロの域ですね。
50歳代の3回目が一番きつかった、吸収合併後、単身赴任とリストラ役が同時に
3回目の急降下は50代に来ました。Aさんの出身会社は、同業社に実質吸収された(表向きは対等合併)。そして、合併相手方の事業所へ単身赴任となり、「企業風土の違いで、以前のような顧客の要望に沿う対応は否定され、費用も極限に絞られ仕事の自由度がなくなる。更に、旧会社の製品開発や品質保証のやり方も否定され、ストレスに感じた」と言う。
ダメ押しはリストラ役。部長職として部下の人員削減を命じられ、4名の候補の内2名を選ぶという状況だった。各人と何度も面接し、2名を降格・異動(出向解除)として、対象者の生活ができるだけ成立つような決着にもっていけたそうです。キツイなぁ、ほんと。
「オレ、何で働いてるの?の図」
著者の勝手な指標で作った「オレ、何で働いてるの?の図」を作ってもらいました。Fさんのは、こんな感じです。
Aさんのこの労働観は、「自立」が突出。会社に翻弄されたことが影響している気がします。そして、「他者との絆」が次で、仲間に苦境を救ってもらったことが理由でしょうか。
「働くモチベーションの6つのカテゴリー地図」
「学習のモチベーション」を描いたマップ(参考文献は下図に記載)を参考に、「働くモチベーションの6つのカテゴリー地図」というのを作ってみました。Fさんがどこに位置するのか図示してもらう。
Aさんの働くモチベーションは、専門職で会社生活を乗り切ってこられたように「訓練志向」。家のローンや教育費の負担は終わったそうで、「生活のためのおカネ」のモチベ―ションは過去程強くないそうです。
それよりも、65歳で雇用延長期間も終了するため、リタイア後、社会的な繋がりをどうやって作っていくがAさんの悩み。「昭和の働き過ぎ」時代ではなく、今は余裕もできたので、これから試行錯誤してみるとのことです。2,3年後に、続きを聞きたいですね。
後記:
これまで25名のインタビューさせてもらい、現役中で定年退職後のプランを持っておられる方は少数です。日々を送るのが精一杯というのが正直な所なのでしょう。とは言え、定年退職したら会社とは縁が切れ、自分自身で道を開拓・選択していくしかありません。多くの会社員にとって本当の意味での自立は定年退職後になるのでしょうか?
Aさんの1回目の仕事人生満足度の急降下は?学生時代の専門・電子工学を活かせると思い、入社後に(先端電子部品の)プロセス技術部を希望。希望通り配属されるも仕事の内容は生産技術、つまり設備設計技術でメカ屋さんの仕事となり気持ちダウン。それでも一ライン全部を任されるプロになられたので、もともと努力家なんですね。
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