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イエナプラン教育の世界に足を踏み入れた話【前編】

こんにちは。
静岡県島田市で学童保育設立準備を進めている田中です。

『10年前、日本の学校制度・教育制度は世界と比較すると3周も遅れているといわれていました。コロナを経て現在、日本は5周も6周も遅れてしまっています。

…周回遅れどころの騒ぎではない!!
2023年8月20日に長野県にある大日向中学校で開催されたイエナプラン全国大会。その講演で聞いた、非常にインパクトのあるコメントでした。

イエナプラン教育とは

イエナプラン教育は、ドイツで始まりオランダで広がった、一人ひとりを尊重しながら自律と共生を学ぶオープンモデルの教育です。特徴は下記になります。

  1. 異年齢でクラスを構成

  2. ブロックアワー

  3. ワールドオリエンテーション

  4. サークル対話

  5. 評価を手放す

ピンときませんよね。
私もピンとこなくて、現地に行ったんですから。

大日向中学校での取り組み

自然豊かな緑に囲まれた八ヶ岳のふもと、軽井沢から少しだけ南に行ったところにその学校はあります。

イエナプランを知ったきっかけは友人からの「イエナプランって知ってます?」のメッセージと下記の記事でした。

大日向小学校は2019年4月に佐久穂町で開校した日本で初めてイエナプランスクールとして認定された小学校。 一条校にあたります。(一条校というのは、教育基本法に基づく「小学校」や「中学校」という学校の単位に該当する、ということです。平たく言うと、普通の学校と同じ、と認められているということです。)

お子さんの自立性やほかのお子さんと共に生きること世界や社会とのかかわりを持つことを大切に学校を運営しています。小学校に続いて、2022年4月から大日向中学校が誕生し、こちらも一条校として認められています。

【建学の精神】
※企業の場合は企業理念にあたるもの
誰もが、豊かに、そして幸せに生きることのできる世界をつくる

大日向小学校・中学校運営元、学校法人茂来学園HP/https://www.jenaplanschool.ac.jp/school/meaning/

そうであったら素晴らしい。と感じる方ばかりではないでしょうか。


大日向中学校の校長先生、長沼さんからの基調講演で中学校で取り組んでいることの『現在地』についてお話がありましたので、一部をご紹介します。

【普通の中学校にあって、大日向中学校にないもの】

  • 時間割、宿題、試験、数字による評価

  • 学年別の教室

  • 同一方向を向いた机、教卓、黒板、校長室

  • 先生という呼称

  • PTA、校則、制服、部活

自然の中で、自由と自律・自立を大切にした教育方法をとっています。
私の目指したい学童保育の姿と重なる部分が多く(イエナプラン教育が完成形なのではないかと思う)、非常に勉強になりました。

長沼さんは校長先生ですが、学校内では生徒からも職員の先生からも「チョーさん」と呼ばれているそうです。長年教育の世界に携わられて、”抑圧のない世界”を教育で実現したい想いがあり、行きついたのが”イエナプラン教育”だったそうです。チョーさんの著書リンク置いておきます。

【大日向に関わる全ての人が目指す6つの姿】が紹介されたのですが、その中でチョーさんが特に好きなフレーズがこちらだそうです。

⑥身近な自然や地域の人々との関わりといった実社会と地続きの学習環境の中で学ぶ

大日向に関わる全ての人が目指す6つの姿より

『地続き』…この表現です。
学びと実践はしばしば切り離されてしまうことが多いですが、この学校はそうじゃない。

「どうして勉強しなくちゃいけないの?」と聞いてくる子ども達が、自分の力で「勉強をする目的」や「勉強の先にある未来、そして現実」をみつけることのできる”場”を提供していると、そう感じました。

もう1点、すごいなと思ったことなのですが、大日向小学校の在籍生徒数は170名、中学校で30名で、そのうち8割が教育移住とのことでした。
東京から北陸新幹線で約80分、週の半分は都内に出勤して、残り半分と週末は家族で長野で過ごす。そんな暮らしをしている保護者さんともお話しすることができました。充実した、そして納得した表情をして、大日向にことを楽しく話してくださる姿が印象的でした。

地方創生の手段の一つに「教育移住」があるなんて、全然頭にありませんでした。現場に行った実感としては「教育移住」するだけの価値がここにはあると感じました。長野県は教育県として有名で、自然を生かした保育園や、柔軟なカリキュラムを導入した学校法人が多くあるとのこと。軽井沢にある風越学園も有名です。

ちなみに、冒頭で紹介したイエナプラン教育の特徴について下記にて補足します。

1.異年齢でクラスを編制
中学校1~3年生の異年齢混合の2クラス(15名ずつ)

茂来学園大日向中学校校長 長沼豊さん基調講演資料より

2.ブロックアワー
・目的:自立する
・かたまり(ブロック)の時間。
・単元ごとの課題が与えられ、生徒は自分のペースで学習を進める。
・グループリーダー(教師)は最初に最低限の説明(インストラクション)をするのみ
・毎週末に一週間を振り返って、進度を確認。グループリーダーに報告し、次週の計画を立てる

茂来学園大日向中学校校長 長沼豊さん基調講演資料より

ブロックアワーの午前時間帯に英語、数学を実施し、国語&社会&理科はまとめてプロジェクト型の学習にしているそうです。家庭科、技術、体育もブロックアワーの午後時間帯にやるそうです。

3.ワールドオリエンテーション
・目的:世界に目を向ける
・探求的な学び、地域に根差した学び
・教科の枠を超えた学び、学年の枠を超えた学び

茂来学園大日向中学校校長 長沼豊さん基調講演資料より

ワールドオリエンテーションはいわゆる「総合的な学習の時間」を指しているのかなと思いました。

4.サークル対話
・クラスメイトが集まり、きれいな輪になって、顔の見える関係(環境)で対話する時間が朝と帰りの時間帯に設けられている。
・クラスの事について、全員で話し合いをするときも。
・合意形成のスキルをつける場

茂来学園大日向中学校校長 長沼豊さん基調講演資料より

朝も帰りもみんなで輪になって話すなんて、「丁寧な暮らし」だなー!と。それだけ、対話を重視しているといくことなんでしょうね。

5.評価を手放す
・成績表そのものがない。

茂来学園大日向中学校校長 長沼豊さん基調講演より

ノンジャッジメンタル。生徒にも、一緒に働く同僚にも。

参加者の顔ぶれ

Peatix経由で参加申し込みをしたのですが、最大100名の応募で、おそらく100名ぐらいいたかなと思います。

現役の教員、オルタナティブスクールやフリースクール運営者、幼稚園運営者、教育関連の会社関係者幹部、大日向に通う生徒の保護者などなど。いろんな人が「イエナプラン教育」の旗印の下、全国から集結し、ものすごい勢いと熱狂、ムーブメントを感じる会でした。

つづく

基調講演の後は、分科会が開催されました。それも非常に興味深かったです。特に、学童保育で導入予定のSEL教育(Social Emotional Learning)をさらに一歩進めた、SEE‐Learningの実践が勉強になりました。

そうです、大日向中学校ではゴールが「自律と共生」で、その達成手段として「SEE‐Learning」を導入しているんです!

続きは【後編】で!


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