鯛の思い出
みなさんの周りには本当に頼りになる人ってどれぐらいいますか?
どれだけ能力が高くても、信頼がおける人であっても連絡がつかなかったら、やっぱりその人を頼りにできないですよね。
そんなひと夏の体験をしてきましたので、ご興味があればご一読ください。
心臓が悪い人、痛みに弱い人は閲覧注意です。
2022年の8月のことでした。
かねてから私は「今年こそは海釣りに行く」という目標を立てていました。
まあ夢は言葉にして語ると叶うと信じてやってみたところ、まあまあすぐ叶いまして。
「釣りがしてみたい!」と人々に言い続けたところ、三重県四日市の環境コンサル企業であり、弊社のワンネス経営を受講してくださった株式会社丸商様の皆様がめちゃくちゃ釣り好きが多く、かなり盛り上がり、さらにたまたま参加していたトレーナーの井上剛典さんもかなりの釣り好き。結果、その場のノリで井上さんと我々で海釣りに行こう!となりました。
初めての海釣りは船よりも海上釣り堀がおすすめとの情報をゲット。
その存在を知った瞬間、いつものごとく漫画から知識を得ました。
こちらのマンガで事前学習を完璧に予習した状態で当日を迎えることになります。
四日市から紀伊長島までの道のりで、運転手の井上さんと「青!青!青です!」と大物がかかった際の声出しのイメージトレーニングも完璧です。
途中、生き餌なども買い求め、異常値のテンションで海上釣り堀の現場に到着。
この海上釣り堀の仕組みそのものが面白く、まず朝一番に予約したお客さんが集められくじ引きをします。引いた数字の順番によって好きな席を選ぶことができるのです。
そこで何と私は鮮やかに1番をゲット!
私たちメンバー3人が横並びで釣りをすることができました。
準備もそこそこに開始時間を待ちながらサンドイッチを頬張ります。
特に朝一はモーニングラッシュと呼ばれており、魚たちの食いつきがとてもいい。
そんなマンガ知識を思い出しながら、もう気持ちだけは大漁気分です。
その海上釣り堀の中に放流されている魚はなんと、鯛、シマアジ、ヒラマサ、カンパチとなかなかの高級魚ラインナップ。
日本のどこかの海で育った魚が輸送され、今この紀伊長島に放流されています。
スタッフの方の号令で一斉に釣りスタート!
本当にモーニングラッシュ!私たちはビギナーズラックもあったのか、とにかく釣れました。イメージトレーニングが完璧だった「青です!」も叫ぶこともできました!
ご覧のような釣果です。
このように楽しく釣りの時間を楽しむことができました。
おや?意外とあっさり?とお感じでしょうか?
そうなんです。釣りの興奮を伝えたいのは山々なのですが、今回はそこじゃないんです。
事件は終盤に起きました。
徒然草の第百九段で吉田兼好も書いてます。
木登り一番気をつけるべきは高い場所ではない降りる直前である。
釣りで一番気をつけるべきは釣りの最中ではない下処理作業である。
現場で下処理をやっておくと後々料理が楽になる。
そんな家族思いの釣り人達がこぞって施設に備え付けの処理場で魚のうろこ落としや内蔵の処理をこんこんと、淡々と、やり続けていました。
私は普段魚など捌いたことがありません。でも何か手伝いたい。何ができるだろう?
ウロコぐらいは取れるんじゃないか?と魚プロの井上さんに手伝いましょうか?と確認をとります。しかし「あー大丈夫です!」と回答。「イヤイヤなんかしますよ」と私。
「いやいや、大丈夫です」「そんなことおっしゃらずに」めちゃくちゃ食らいついて、ウロコとりの役割ゲット。
専用の器具を片手に鱗を落としていきます。
1匹目、あーなるほど。こうやってやるのか。と確認しながら。
バリボリバリボリ。
2匹目問題なくウロコを取ります。ノってきました。
3匹目。 単純作業やな〜、へぇ、そうやって魚って捌くんだ〜と、隣の様子をうかがいながらバリボリバリボリ。気を抜いた瞬間でした。
ズン。
指に激しい衝撃が走ります。
痛みはありません。衝撃です。
右の人差し指に何かとてつもない衝撃を感じます。
え??
指の感覚がありません。
どうやら私はとても強靭な鯛の背ビレのトゲに指を自ら刺しに行ってしまったようです。
しばらく、指にしびれが続き感覚が全くない状態。あ、これはやばい。直感でわかりました。
しかし、出血は大したことないのです。
うそでしょ?その痛みの先を触ってみると、皮膚の下に何か硬いものを感じます。
どうやらトゲが折れて指の中に残ってしまっているようです。
刺さったのはちょうど手の甲側、人差し指の第一関節、そこから約八ミリ先に5ミリほどの硬いものが確認できます。
しばらくすると痛みとしびれもなくなってきました。
そこで車で帰路を進みながら、私は助手席で指を曲げてみようと試みますが、途中までしか曲がりません。痛みより角度に制限がある感じです。
さて、この状態をどうしたものか?と車内の三人で会議。
今すぐに病院に行くべきだ。
いいや、実は大したことないんじゃないか?
なるほど。この車の中に正しい医療的な視点でジャッジできる人間がいないことに気がつきました。
私自身が理学療法士の資格を取って早15年。一度も病院に勤務したことがありません。ここまでペーパー医療従事者としてやってきたのです。
雰囲気だけじゃ答えが出せない。そう気がついた私は、三重県から岐阜県に向かう車の中で休日診療をしてくれるあらゆる医療機関を調べました。
しかし。そもそも何科?問題が解決しない限り正しい答えは見つかりません。
皮膚科?形成外科?外科?どこ?
そこで #7119 を思い出しました。
救急車を呼ぶか迷った際に医療アドバイスをしてくれます。
と、ひらめき、かけました。
出てもらえません。それでも諦めずに、かけ続けること十数回、ただの一度も繋がりませんでした。なんと、その日は全国的にコロナ感染者数のピークだったのです。おそらく緊急相談回線がパンクしたと想像されます。
その結果、誰も答えがわからないまま、どんどんどんどん岐阜県に近づいています。
その中で(だんだん痛くなくなってきたし受診は明日で大丈夫なんじゃないか?)という正常性バイアスが働きはじめました。実は大したことがないと思いこもうとする脳の仕組みです。しかし同時に「一日置くと化膿してしまうのでは?」という思いが湧いてきます。
いいや、やっぱり明日、いいややっぱり今日。と葛藤が止まりません。
そして最終的に私は閃きました。
それは理学療法士の同級生Nに電話することでした。
彼はそもそも学生時代から大変勉強熱心で、マニアックな人間でした。
彼らなら正しい判断ができる。
福永:ちょっといい?
N:どうしました?お久しぶりですね
福永:本当だね。久しぶりだね〜
なんていう差し障りのない挨拶から始まるのかな?と思っていたところ。
実際は
福永:ちょっといい?
N:いいですよ
まさかのノーリアクション。
久しぶり〜とか感動的な再会があるのか?と思っていましたが、全くなかったです。
福永:かくかくしかじか、で何科に行ったら良いの?
N:整形外科っすね
即答。
N:ネットから調べて整形の先生がいるところ行ってください
福永:はい。わかりました。ありがとう。
まさかのあっさり解決。
実際にホームページを見ていくと、いた。整形外科の先生。
電話して予約をとり、受傷後2時間でなんとか解決に至りました。
その時のレントゲンがこちらです。
これをドクターが見事にぐりぐりと傷口を広げながら無事にピンセットで抜いてくれました。私の指は元通り曲がるようにすぐになりました。
あのまま一日放置していたかもしれないと思うと今でも冷や汗が出ます。
本当に旧友に感謝をした1日でした。
本当に頼りになる人は、あなたのそばにいるのかもしれません。
最終的にその魚たちは、井上さんの奥様が非常に美味しく料理をしてくださいました。
皆さんも初めてする体験は大切にしてほしいです。
ただし慣れないことはするもんじゃないというのも、頭の片隅に置いてください。
おわり。