かわいい父と激しい母と私の介護日記(33)
ターミナルケア
父はとうとう食事もとらなくなり、水分もスプーンで少しづつ、口に入れる程度になった。
ドクターの集中治療も、あまり効果が出なかった。もしかしたら、何処かに癌があるせいかもしれないが、検査や治療をする体力はもうないとの事だった。
今後の治療について、点滴に入れる薬の変更をして、少しでも腎臓機能の回復を促す事。引き続き点滴での、水分栄養補給。家族の選択が求められた。
ドクターは母を心配している。栄養補給の点滴を外したら、10日程度と思われる。外さなくても2ヶ月~3ヶ月。
ただ、オシッコが出なくなってしまったら、もう終わりとの事。
「10日なんて無理。耐えられない。」食事を摂らなくなって、覚悟はしていたけど、母から話を聞いて私はそう答えた。
母も、「私も無理。でも、何ヶ月もこの状態では、お父さんが可哀想だよ。」と。
「だから、もう少し点滴続けてもらって、お父さんの様子や私達の気持ちの整理が出来たら、先生と相談しよう。」
私も賛成した。でも、父の意思はどうなのだろう。確かめるのが怖いし、ほぼ昏睡状態の父に確認するのは難しい。
私達は、父がいなくなるのがイヤで、こんな選択をしている。
「お父さん、ゴメンね。もう少し頑張って。」と母が言っている。父を解放しなきゃいけないと、わかっていても出来ない私達がいる。
しばらくして、父は新しく入れた薬が効いたのか、意識が少し回復してきた。
されるままのオムツ交換が、「寒いっ!」と反応したり、「お母さーん、お水。」と呼んだりするようになった。
「お母さ〜ん、オクラ!」とナゾの言葉を言ったりして、相変わらずカワイイ父で、私はドクターに感謝しつつ、やっぱり点滴続けて良かったと安心した。
母は「お母さーん」が多すぎて、「うるさくて、大変なんだけど。」と文句を言っているが、やはり嬉しそうだった。
でも、ある日の朝から、バルーンのオシッコが極端に減った。毎日1000cc出ていたのに、500cc程度になった。
そして、父はまた昏睡状態になり、時々目を開けるが、ほとんど反応しなくなった。「オシッコが出なくなってしまったら終わり」
もうお別れしなきゃいけないのかな。
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