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かわいい父と激しい母と私の介護日記(26)

再びせん妄へ

しばらく落ち着いていた様子の父だか、再びせん妄が現れた。

近所に、自分の経営するお店を建設中という妄想と、外を歩いたという妄想。
母は、なんとか現実に戻そうと父の妄想を詰める。

「お店どこ?そんな土地あるの?」母。
「近所の人に借りたの。」と父。
「へぇ〜なんて名前の人?」母。
「忘れちゃった。」困る父。
「土地借りてる人の名前もわからないなんて、おかしいでしょっ!」母キレる。
「忘れる時もあるでしょ!もーっお母さんとは、この話しないっ!」泣きそうな父。

母がいくら夢だと言っても、父はガンとして“お店は建設中”と思っている。他のことは(今日のテレビ番組や、介護サービスの予定など)すごくしっかり理解してるのにこの妄想と、歩ける妄想だけは抜けない。

母はあきらめずに、父に全部夢だと言う。この人は、相手が病人でも容赦なくケンカする。

父も一生懸命言い返すけど、結局母に負ける。大人と子供のけんかみたい。かわいいし面白くて、漫才?私は笑い転げて、「もう、やめてあげて。」と母に頼むのが精一杯。

父は、母に妄想の話をするのをやめて、母がいない時だけ私に、
「はなちゃん明日休み?明日お店に行きたいから、車で連れてって。」と言うようになった。
「いいよ。」と、次の日父を迎えに行くが、もちろん歩けない。何度か立ち上がろうとする父を手伝うが、立てない。「困ったなぁ。昨日は沢山歩いたのに。調子が悪いから、明日にする。」とベッドに戻る。

父を見てると、せん妄って人間の防衛本能ではないかと思う。
父は仕事が生きがいだった。仕事が出来ない事と歩けない事が、父には受入れがたい現状で耐えられないのでは?
だから、妄想で精神のバランスを保っている気がしてしょうがない。

父の妄想は、やっぱり否定しちゃダメだと思う。これはネットで得た情報じゃなく、私が父と接しての感覚だ。


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