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稲村ヶ崎の賃貸(アトリエのある長屋)の内覧会
パッシブデザインを積極的に取り入れたアトリエ付き賃貸長屋「LANIKAI VILLAGE INAMURA」の内覧会に行きました。
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LANIKAI VILLAGE INAMURAは江ノ島電鉄線の稲村ヶ崎駅徒歩0.5分という駅すぐそばの場所にあります。
藤沢から江ノ電に乗って向かうと沿線から板壁の外観が現れます。
(沿線空間の視点としても気になるプロジェクトです。)
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1階はアトリエとして使うことを想定されたつくりとなっていて、床がコンクリート土間となっており、天井高も3m近くあり開放的です。
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1階の高い天井高を利用して、中二階にトイレが計画されています。
これは1階床が基礎(ベタ基礎)の底盤コンクリートをそのまま土間床としていることにより床下が無いためで、トイレを中二階にすることによりその下を設備配管スペースとしているようです。
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1階トイレとアトリエ用水まわりと2階のキッチン、浴室の位置が上下階でひとまとまりにまとまっており、シンプルな平面計画です。
同様の平面計画のメゾネット住戸が5戸配置されているのですが、それぞれの住戸の配置と敷地周辺環境との関係の違いによりどの住戸も空間体験が大きく異なります。
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2階天井付近と1階足元付近の空気を循環させ住戸内の空気温度のムラ(熱層)を小さくするためのダクトファンが取り付けてありました。
これにより室内温熱環境の快適性が大きく改善されます。
断熱性能は近年よく知られるようになったHEAT20(一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)という水準のG2というグレードで、断熱等性能等級6(品確法による住宅性能表示制度(R4.10改))を取得する基準とのことです。
主要な開口部(大きな窓)は南に面していて日射取得の条件が良く、ダクトファンにより取得熱量を効率よく運用できると思われます。
このような断熱や日射取得など、設備エネルギーに拠らない屋内の環境制御の手法のデザインのこと”パッシブデザイン”と言いますが、賃貸住宅でここまでパッシブデザインによる性能の高い例は非常に少ないです。
事業収支の視点では、賃貸住宅は利回りを重視するためコストを削るためにパッシブデザイン、特に断熱については軽視されます。省エネでどれだけ光熱費を節約できるかの比較で費用対効果から判断することも可能ですが、ここまで高い性能の場合は光熱費の費用対効果以上に、快適性に対する経済的価値を見出さないと実現に至らないと思います。
このようなパッシブデザインに配慮された賃貸住宅のこれからの可能性を見ることができました。
※パッシブデザインプラスの冨田さんがパッシブデザインのアドバイザーとして関わられているようで、お会いしてお話を伺うことができました。今度じっくりお話を伺いたいと思います。
<Lani kai Village Inamuraについて>
企画:丸山アーバン
設計監理:NEWEST一級建築士事務所
温熱環境監修:パッシブデザインプラス
参考記事:Lani kai Village Inamura 内覧会のお知らせ