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ソラマメ

私の住む赤倉は、川の冷気が夜のうちに貯まるのか、朝が一番寒く感じる。
しかし、朝の寒さに反応して服を着こんでしまうと、日中は暑くて大変。
5月の天気のいい日なら、半そでで、風を感じてるくらいがちょうどいい。
ご近所さんが訪ねて来られたのは、そんな汗ばむ陽気の午後だった。

本日のいただきものはソラマメ

「今日伺うからと思ってね、今朝、畑で採っておいたんですよ!」
そう言って差し出して下さった、玉ねぎ、じゃがいも。
そして、ソラマメ!
私にとって、今年最初のソラマメだ。
ソラマメは、夏の先触れのような気がして、少しウキウキする。
初物がいただきものなのもなんだか嬉しい。
今晩は塩ゆでして、ちょっとお酒もいただこうかな。
とはいえ、一人で食べきるには多い。
(茹でて冷凍しちゃうか、何か別のものにしてストックするか……)
そう考え始めたところで、一緒にいただいた玉ねぎが目に入る。
玉ねぎは、例によって、炒め玉ねぎにしておこう。
保存も効くし、何にでも使えるし。
前回いただいた時も、ホワイトソースのベースにしたら最高だった。

どうしようかと考え込んだその時、作ってみたことは無い、ひとつのお料理が思い浮かんだ。

ソラマメのスープ。
どこかで食べたことがあっただろうか。
いや、思い出せないけど。
でも、これから作るもののイメージは、なぜか確固としてある。
うんうん、大丈夫。
材料からして、おいしくなる予感しかしないし。
検討することがあるとすれば、あったかいか冷たいか。
それだけだな!

初挑戦メニュー、ソラマメのスープ

いただいたその日のうちに、塩ゆでしておくことにした。
外側の皮をむいていくと、ころんと実が覗く。
ソラマメグリーン。
なんて色の名前を付けたくなっちゃうほど、可愛い。
家庭菜園と侮るなかれ。
めちゃめちゃ立派なソラマメじゃないか。
ちょうどお茶摘みにいらしてた大家さんの奥さんにおすそ分け。
「この人、上手やねぇ。この付け根の黒いのがちょうど食べ頃なんや」
と豆知識も教えていただいた。
外側を見て十分育ったと思い、収穫してしまう。
すると中の実の付け根がまだ白く、早かったと悔やむこともあるらしい。
今日がちょうど食べ時のものを、まさに今日いただくなんて。
わたくし、ホント果報者だわ~。

その日は晩酌のおつまみ分だけ食べて、残りを冷蔵庫に入れておいた。

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翌朝は、まず炒め玉ねぎを作るところから。
数分炒めては数十分冷ます。
このくり返しだから、合間にいろいろ家事をやってしまおう。
玉ねぎを炒めて、食器を洗って。
玉ねぎを炒めて、洗濯物を干して。
玉ねぎを炒めて、ソラマメの中の皮をむいて……

さて、玉ねぎを冷ます間に、ソラマメを煮つぶしておこうかな。
鶏ハムを作ったゆで汁をベースにして、弱火でコトコト豆を煮る。
ソラマメの灰汁をすくって、少しお水を足して、スープの味見。
(うん、塩気は足さなくても大丈夫そうかな)
つまみ用に塩を強めにふったソラマメと鶏ハム汁、非常にいい塩梅だ。
おたまの背で押しつぶすと、ソラマメは徐々に溶け出していく。
淡い黄色とわずかな黄緑を含んで白く濁っていくスープ。
また少し味見すると、先ほどとは違い、豆の風味が香る。
実を言うと、ここでソラマメの臭みが出ることをちょっと心配していた。
でも。
(イヤな匂い、全然しない。やっぱりソラマメが新鮮だからかなぁ)
小さい頃は嫌いだったソラマメ臭。
今日みたいなおいしい豆だったら、嫌いにならなかったのかもね。
ほっと安心したところで。
ここに粗熱の取れたとろーり玉ねぎを投入。
私が絶大な信頼を置く、魔法の玉ねぎだ。
(ソラマメさんとも手を取り合って、甘みとコクをお願いね!)
鍋をかき混ぜかき混ぜ、具材の皆さまに願いをかける。
さて、大好きな大内山牛乳を入れて、と。
ここで塩気が足りなければ加えるけど、たぶん大丈夫だろう。
牛乳と豆と玉ねぎが、違和感なく混ざったくらいで火を止める。
少し冷ましたら、ミキサーちゃんに混然一体にしてもらうのだ。

さて、できるとこまではできた。
牛乳と玉ねぎの甘みと、後味にソラマメの風味。
どろっとした茹で豆の食感が、食事スープらしく仕上がった。
あとは、温製・冷製の問題だけど。
今日も陽ざしは強そうだ。
大家さんと奥さんは、この陽気の中でお茶摘みをしているはず。
お昼は、持ってきたお弁当をうちで食べてくはずだから。
(うん、冷製のスープで。お弁当に添えていただこう)

持ち寄りおしゃべりランチタイム

午前中のお茶摘み作業を切り上げて来られた、大家さんご夫妻。
私にも、お弁当のチキンライスをおすそ分けくださった。
赤いチキンライスと、乳白色のソラマメのスープ。

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それぞれのお料理が彩りよくマッチして、上機嫌の私。
それでは遠慮なく頂戴しまして。
「いただきます!」

大家さんの奥さんのチキンライスは、甘みと鶏の風味が絶妙だった。
大家さんご自身も奥さんも、ホントに料理上手なご夫妻なのだ。
(味付けのセンスなのかな~、ちょうどここっていうお味なのよね)
そんなお二人に食べてもらうのは、少し緊張もするけれど。
でも、日ごろの感謝の気持ちを込めて。
ご近所さんからの頂きものに、私なりの愛情もプラスして。
自分がおいしいと思う味を、一生懸命作ってみた。
だから、たぶん大丈夫だろう。

「あのソラマメをこんな風に?あらおいしい」
そう言ってくださる奥さんと、おしゃべりしながらの楽しいランチ。
奥さんは、私の鶏ハムをほめてくださって、もうひと口。
大家さんに差し上げてみた、アマゴの炊き込みのご飯おにぎり。
お口に合ったようで、これまた嬉しくなる。

誰かから食べものを賜って、お料理して。
お料理したものを誰かに食べていただいて。
また別のお料理を誰かからいただいて。
たべびとの幸せは無限ループだ。
この歓びの無限ループサイクルの中に、自分が存在していること。
それが何よりの幸せだなぁ。

本日も、たくさんの方々からの賜りもの。
素敵なグリーンのソラマメと魔法の玉ねぎをくださったご近所さん。
アマゴ炊き込みご飯を褒めて下さった大家さん。
チキンライスをご馳走くださった奥さん。
大内山牛乳の酪農家の皆さま。
鶏肉、しょうが、諸々の食材を提供くださるスーパーと物流の皆さま。
おかげさまで、今日もたべびとは豊かさと幸せを味わっております。
皆さまに感謝と愛を込めて。
「ごちそうさまでした!」


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