![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/114092452/rectangle_large_type_2_54922bf486934de1f3aac00e3f709085.png?width=1200)
【思い出】入学式で殺害予告された話
私が中学校に入学するときの話です。
私は離島出身で、その離島には中学校が一件しかありませんでした。
入学するのは小学校から知っている同級生たちばかりで、小学校の延長のような感覚がありました。
一見すると「なんだ、すごい安心だね」と思うような環境です。
実際に、この学校には子どもの個性を尊重するような雰囲気がありました。
例えば。
制服を着崩す人ばっかり。
制服を着てこない人すらいる。
テスト用紙を紙飛行機にして遊ぶ。
飛んでいった紙飛行機は、輝かしい未来に希望を抱く若者のように、どこまでも羽ばたいていったといいます。
そんな中学校の入学式。
私たちは体育館に集められ、入り口で入場を待っていました。
周囲の同級生たちは、投獄される囚人よろしく、顔を蒼白にさせていました。
それもそのはずです。
私が以前「中学校の体験入学」に来たときには、おもちゃのナイフをお腹に刺されましたし、道ばたですれ違ったときには「ゴラァ!!」と脅されたこともありました。
いずれも、怯える姿を見た先輩は「ギャハハ」と笑っていました。
そんな人たちとの生活が始まるのです。
いっそのこと、動物園に入学したいと思いました。
キリンやゾウの優しい目を、何度も思い出しました。
そんなことを考えていると、突然入場のBGMが体育館内から聞こえていました。
しばらくすると、先頭に立っている先生が入場していきました。
同級生たちもゾロゾロと後に続いていきます。
私は強ばった筋肉に「うごけ、うごけ」と命じながら、少しずつ歩き始めました。
玄関をくぐると、正面に大きな空間が広がりました。
正面には「入学式」という看板が、ゴシック体で吊り下げられていました。
見せしめにされてる?? と思いましたが、そんなことはありません。
そして視線を下げると、何百もの「眼」がこちらを見ていることにも気がつきました。
私はギョッとました。
虚ろな目をした先輩たちが、じっとこちらを見つめていたのです。
その見定めるような目とは裏腹に、彼らは両手で乾いた拍手をしていました。
奇妙なギャップに一層の恐怖心を感じながら、この先輩の間を通っていかなければならない運命に絶望しました。
まあでも、友達もいるし大丈夫だろう!
私は気分を切り替え、前後にいる友人の陰に身を隠すように歩いて行きました。
背を縮ませながら先輩の間を通っていると、ふと一人の先輩がこちらを見ていることに気がつきました。
その先輩は、じっと私の方を睨んでいました。
彼は鎧を着ているかのような体格で、顔の彫りは深く、眉間にしわを寄せていました。
あっこれヤバい。
私は本能的に顔をそらし、顔を強ばらせました。
しかし、私の足は前へと歩き続けています。
その恐怖の先輩にどんどん近づかなければなりませんでした。
何事もなく過ぎ去ってください・・・
私は激しく高鳴る心臓を抑え、その人の真横を通りました。
その時、私だけに聞こえる声で、彼は言ったのです。
「おい〇〇、お前殺すからね」
キ――――――ン!!
極度の緊張で張り詰めた糸が、ちぎれる音がしました。
ついでに大切な何かもプチンプチン! と千切れ、全ての音が聞こえなくなりました。
入学式からこれかい・・・
私は、この先訪れる楽しい学校生活に思いを馳せました。
その後の学校生活といえば、特に不幸なことはありませんでした。
先輩からも特に暴力を振るわれることもありませんでした。
それもそうでしょう。
私は「先輩を刺激しないこと」を第一優先事項とし、温厚に、平静に学校生活を送ったからです。
ここで、私の社会性スキルは培われたといっても過言ではありません。
どのような悲しい過去からも、人は学べるのです。