英文契約書の用語・単語 evidence、 exceptionについて
今回は、「evidence」、「exception」について見てみます。いずれも英文契約書でこれらの単語が単体で用いられほか、他の語と組み合わせて成句として登場します。このブログの目的は、英語の性質上、英語の1つの単語は様々な意味を持つ場合が多く、特にその単語が使われる分野が異なると、その単語はその分野特有の意味を持つことが多くなります。このブログではその単語が英文契約書で使われる場合のその単語の意味と使われ方を手っ取り早く解説します。いずれも作成した具体的例文(法律の条文を除く)を通して契約書翻訳の観点から見てゆきます。
Evidenceについて
evidence証拠、証言、しるし、形跡、reliable evidence(信頼に足る証拠)、enough evidence(十分な証拠)、documentary evidence、evidential document(証拠書類)またはdocumentary evidence(証拠書類)、evidential document(証拠文書)
一般的には、「事実・真実を明らかにする根拠となるもの」ですが、法律文では時として「立証を必要とする事実の存否について裁判官が判断を下す根拠となる資料」。
Subcontractor shall provide written evidence of such approvals, consents, permits or licenses to the satisfaction of the Contractor, on demand. (下請業者は、要求に応じて、請負業者が満足する当該承認、承諾、許可または免許についての証拠書類を提供する)
An accounting audit shall include the evidential documents for the amounts stated the financial statements. (会計監査には、財務諸表に記載された金額の証拠文書を含める)
The parties hereto shall immediately report the evidence of fraud if such evidence is discovered. (本契約の当事者は、詐欺の証拠が発見された場合、直ちに報告する)
The administrative determination on the merits must clarify the facts of a marine accident and the details of intentional or negligent conduct in which the examinee engaged in the course of their duties, and also state the reason for the finding of facts based on evidence;(本案の裁決には、海難の事実及び受審人に係る職務上の故意又は過失の内容を明らかにし、かつ、証拠によつてこれらの事実を認めた理由を示さなければならない)(海難審判法)
Exceptionについて
Exception(裁判に対する)異議、但し書き、除外条項、
「except for」、「except that」として使用される場合が多く見れられます。まずは「exception」を使った例文。
Either party hereto may assign or transfer all or part of obligation under this Agreement without a written consent of the other party. With the exception that the parties hereto may assign or transfer it to a party’s affiliates or members. (本契約のいずれの当事者も、相手方の事前の書面による承諾なしに本契約のすべてもしくは一部の義務を譲渡または移転できない。ただし、例外として、本契約の当事者は、本契約のすべてもしくは一部の義務を当事者の関係者または構成員に譲渡または移転することができる)
例文として作成したのでいささか冗長な文章になりましたが、「except that」などを使うと上記の例文よりもすっきりしたものになります。
Either party hereto may not assign or transfer all or part of obligation under this Agreement without a written consent of the other party except that the parties hereto may assign or transfer it to a party’s affiliates or members.
この文章は、以下のようになることもあります。
Either party hereto may assign or transfer all or part of obligation under this Agreement to a party’s affiliates or members, however, provided, that a prior written consent of the other party is obtained.
ここでは、「assign」を譲渡、「transfer」を移転としましたが、和訳の際に「transfer」を「譲渡」としたり「assign or transfer」を一括して「譲渡」または「移転」として訳出することもあり、いずれも文脈から判断します。経験的には、英文契約書の場合、「assign」のみが書かれている傾向がままあるようで、文脈的に「assign」を「譲渡」として訳出するケースが多いように感じます(あくまでも経験です)。
次回は、「exclusion」、「exclusive」について見てみます。
参考図書:
ビジネス法律英語辞典(日経文庫)
研究社新英和辞典(研究社)
日本法令外国語訳データベースシステム他