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フィードバックは「ギフト」よりも「プライズ」。取りに行こう

株式会社INFORICH、CHROの佐々木です。

Feedback is a gift (フィードバックはギフトである)という言葉があります。フィードバックの研修を受けたことがある方であれば聞き覚えがあるかと思います。確かに与えられたフィードバックには示唆に富むものが多く、受け取り手が消化してそれを行動に反映すればそれは素晴らしい ギフト と言えるでしょう。

一方、自分は以前からこの言葉に少しだけ違和感を覚えていました。
ギフトは、基本的に自分から望むことなく、相手からいただくものです(もちろん、何をいつ欲しいとリクエストすることもありますが)。一方フィードバックの本質が、受け手、つまり自分自身の成長にあるのであれば、むしろ自らが取りに行くべき プライズではないかと思うからです。

今回はフィードバックを自ら求め、取りに行くことがなぜ重要かについて書いてみます。

執行役員CHRO
佐々木 丈士 Takeshi Sasaki
フォード・ジャパン・リミテッド、フィリップ モリス ジャパンにおいて人事ビジネスパートナーとして、さまざまな事業部門の組織開発を担当。2015年にMeta(旧Facebook社)に入社。日本、韓国、マーケティングソリューション事業部の人事戦略を担当。

https://inforich.net/our-team

How Can I Do It Better?

以前所属したとある会社で、自分が人事としてパートナーをしていたリーダーの中に、一人、フィードバックに強烈なこだわりを持つ人物がいました。フィードバックを与えまくるのではありません。フィードバックを自分から求めまくるのです。

例えば、自分とそのリーダーが企画して社員に発表する機会がよくありました。発表するのはそのリーダーです。発表が終わったあとの会話は大体こんな感じでした。

リーダー :「プレゼンどうだった?」
佐々木 :「良かったと思う。ストーリーも一貫していたし、社員達にも響いたと思うよ。トーンもペースも適切。あと良かったのはウンヌンカンヌン(基本的に上手いので褒めるしかない)。」
リーダー :「ありがとう。で、How can I do it better(どうしたらもっと上手やれると思う)?」
佐々木 :「(いや、今、全部褒めたじゃねえか)あー、いや特には。。」
リーダー:「ありがとう。しかし、お前のそのフィードバックは役に立たん。」

毎回こんな感じです。
具体的に、どうすればもっとうまくできるのか?という問いを、必ず、誰にでも、その場で投げかけるのです。
こうなると、自分を含め周りの社員は少し緊張します。何が上手くいったか、よりも何があればもっと効果的かを言う準備をして、そのリーダーの「どうだった?」というフィードバック要求に対応しなければならないからです。

もう一つ、そのリーダーはもらったフィードバックの多くを実践して、次の機会に「前回もらったフィードバックをもとにやってみたが、どうだった?」と再度聞くのです。
このサイクルが常に回るので、周りの社員も具体性のある、かつ建設的なフィードバックを与えることが徐々に習慣化されるのです。

フィードバックは、そもそも面倒に感じる

フィードバックって、習慣化しないと面倒に感じると思うんです。特に与える時に。こんな不安があると思うからです。

  • どう受け取られるか不安  
    感謝されるのか、機嫌を損ねてしまうのか(相手との関係性)

  • フィードバックの効果性に不安
    伝えても相手の思考や言動は変わらないのでは?(相手の真剣さ)

  • 何を伝えたら良いか不安
    何が役に立つのかわからない(具体性)

  • どう伝えたら良いか不安
    言いたいことを上手く伝えられないかも(スキル)

しかも、上記全てフィードバックしてみないと分からないことが多いので、そりゃ面倒です。しなくて済むならその方が良いと思うのが自然。

視点を変えてみましょう。
あなたはフィードバックを欲しいと「一応」思っているし、会社の360度フィードバックもちゃんとやっている。あなたがチームを持っていれば、時々部下との 1 on 1で「何か困ってることある?」と聞くこともあるでしょう。でも、上司からも同僚からも部下からも、当たり障りのないフィードバックを受けて「自分、大丈夫かな?」と思いつつ「ま、極端にネガティブなこと言われてないからいいか。」と安心してしまう(かもしれない)。

これは、本来有益なフィードバックを、与える側が面倒に感じて与えず、受け取る方も自発的な動きをしていないので受け取れず、結局フィードバックのやり取りが十分に発生していないという残念な構造です。
フィードバックが、「与える側」のアクションとスキルに依存しているからです。

求めることのパワー

「あなたのフィードバックが欲しい。自身の成長に繋がると思うから。自分のコレコレこういう点について。しかも比較的最近あなたが観察したこと(あるいはさっき終わったプレゼン)について。」とお願いされたらどう感じますか?しかも定期的に。その場ですぐに。
さらに、前回あなたが与えたフィードバックを覚えていて、それに基づいて行動を変えていて、それについて次回またフィードバックを依頼されたら?

「どう思われるだろう」という不安は減るはずです。向こうから求められているので。「何についてフィードバックしたら良いのか?」と迷わないはずです。向こうから指定してくれているので。

「フィードバックしても何も変わらないんじゃないの?」という疑念は、相手があなたのフィードバックを覚えていて、それについて行動を変える(あるいは変える努力をする)ことで相手への信頼に繋がるはず。
そして毎回あなたのフィードバックについて「ありがとう」と感謝されれば、これを定期的に行っていくことへの心理的抵抗はグッと下がるはずです。

また、フィードバックを求めることは、上司・部下のようなパワーが異なる関係において、また、日本を含め建設的なフィードバックや反対意見を直接言わない傾向にある文化において(※) 特に有効だと思います。
※参考 The Culture Map 邦題 異文化理解力, Erin Meyer

上司に対して、基本的に部下は遠慮するものです。
上司がどんなに「何でも聞くから、何かあったら、いつでも言って」と言ったって、部下が自発的に思っていることを全て伝えるのはとても稀だと思います。
しかも聞き方が具体的ではないと、さらに得られるフィードバックは少ないでしょう。文化的な側面についても、待っていてもフィードバックを得られにくいのであれば、取りに行く方が効率的と言えます。

習慣化の仕掛け

どうすればフィードバックが、特に「求める」ことが習慣化されるのか。
現在INFORICHで実施しているもの、これからやっていきたいものは下記です。


  • リーダー・マネジャーが徹底的にやる。経営陣も、全ての部下持ち管理職も。役員陣が直近で求めたフィードバックについて、全社員ミーティングで共有してもらう。

  • 仕組み化する。パフォーマンス評価における360度フィードバックや、1 on 1、普段からカジュアルなフィードバックが行える社内ツールなど。

  • スキルを身につける。SBI (Situation状況、Behavior 行動、Impact インパクト)モデルや I Message/You Message など。全社員向け。


と、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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