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BtoBインタビューの設計と考慮のポイント

こんにちは、インフォコム UXteamのfurukuboです。インフォコムでは医療、一般企業向け等のソフトウェア開発を手がけており、オンラインや対面で法人の担当者様にお話しを伺うことがあります。
最近、コロナ禍の影響が落ち着いてきたこともあり対面でのインタビューの機会が増えてきました。私は主に病院や介護施設へ訪問してお話しを聞くことが多いのですが、その際にtoC向けのリサーチと比較して苦労するポイントがいくつかあると考えました。BtoBのUXリサーチのうち特にインタビューについて考慮するべきポイントについて触れたいと思います。


リクルーティング・日程調整

BtoBのインタビューでは、ユーザー数が相対的に少なく、リクルーティング・日程調整の難易度が上がり時間もかかります。プライベートではなくビジネスの時間を使ってインタビューに割くケースでは、以前から関係構築のできているクライアントを持っている担当営業へ調整を依頼することが近道です。また、調査したい事業領域でコネクションのある会社へリクルーティングの調整を有償で依頼することも有効でした。
また、BtoCでもよく使う方法ですが、インタビューしたい属性が多く登録しているオウンドメディア等の会員情報の母集団を社内に持っている場合は、メルマガで対象となるユーザー情報を収集するアンケートの実施から、インタビュイーを勧誘していく方法があります。この方法はスケジュールが読みやすく、採用できる確率も高めだと感じました。ギフト券などで報酬をつけると確実性が高まります。また、検索するといくつか出てくるネットリサーチサービスへ依頼することでも有償で同様のサービスや効果が得られます。

業務知識や関連法規のインプット

BtoB向けのサービスでは、相対的にBtoCよりも深い業務ドメインの知識が求められることがあります。BtoCではグルメ、ビューティー、ECなど生活に身近なサービスも多く、普段から接点のあるサービスである場合、サービス体験を把握するのにさほどコストがかかりません。(もちろん、金融などそうでないケースもあります。)また、ペルソナ像もイメージしやすいことが多く、思考や行動を考える際の障害は少ないかと思います。
一方で介護や病院領域になるとその事業領域のサービス知識に加えて、介護医療の業務知識が問われてきます。専門用語や特有の職場環境の文化を知らないと、インタビュー設計や質問の際に詰まることがあります。
また、関連する法律について知っている必要がある場合もあり、そこまで理解を進めるとなると時間がかかってきます。何も知らない状態でお話しを聞くことも可能ですが、どうしても話が止まったり、深いところまで聞くことが難しくなり、慣れるまで学習が必要ではないでしょうか。
あるサービスのインタビューではメインフレーム(大型コンピュータ)の製品についての話題になり、それがどのような製品と役割でどのような振る舞いをするかといった知識がなかったため、話を展開することが難しく、深い部分の話がしにくく苦労しました。経験が浅い場合、知識を持った社内のメンバーに同行してもらって、サポートを得ながら進めるのが良いかと思います。

利用者/管理者など複数属性の考慮

BtoBサービスの場合、法人として導入するため、商品を購入する決裁者と利用者が完全に異なるケースがあります。部署や管理職などの組織や関係者が関わることもあります。そのため、インタビューにおいては、インタビュイーの方がどの属性、組織の方なのかを理解した上で、質問を設計することや、インタビュー内容の分析する必要があります。あるサービスや機能について、利用者の反応がよくても決裁者からすると重要ではないことがあるため、ペルソナを分けてそれぞれの課題と行動特性を考えることが必要です。

訪問先の状況への依存

実際にインタビューを行う際に、相手先の企業や施設でインタビューを実施することが多くあります。現場の状況によって、想定していない状況でインタビューを実施することがあります。過去に、行動観察を含むインタビューという条件もありますが、立ち話で最後までお話しすることもありました。質問できる時間が想定より短いといったこともあります。
テーブルがなくパソコンなどを開いてインタビュー原稿を参照できないケースでは、事前に質問事項などをプリントアウトしておくか、スマホで参照する準備が必要です。

介護や医療施設に限るとマスクの着用が今でも求められるため、こちらの表情を伝えるのは難しく相手の表情もわかりません。また時間もないため、初対面で双方リラックスして話しはじめる雰囲気を作ることが難しいと感じます。
また、1名のデプスインタビューの想定で訪問すると、対象者以外に「現場に詳しい者」として複数名が同席することがよくあります。反対に、訪問目的が正しく伝わっておらず、知りたい業務に詳しくない者「だけ」が出席するケースもありました。誰が何に詳しいのかを見極めて質問していく必要があります。そのため序盤に知りたいことに合致する業務に携わっているかなど、参加者の属性を早めに知る質問をするようにします。
事前に確認できるようであれば、どんな場所と進め方で誰にインタビューしたいかをあらかじめ丁寧にお伝えしておくと良いでしょう。また、同席者がいるかどうかどうか、どんな方かも予め聞いておくと良いかと思います。

まとめ

・リクルーティングできる関係者に協力を依頼/メルマガや外部サービスも活用
・業界や業務の知識を押さえる。不足している場合は詳しい人に同席をお願いする
・利用者や決裁者ごとの課題やニーズをおさえる
・訪問先に要望や誰にどんな話を聞きたいかを概要を伝えておく/出席者と属性を事前に確認する

訪問先でのインタビューは、自社にインタビュイーを呼んで実施する際に比べて、想定外のことが起こる頻度が高いように思います。BtoBの世界は知らないことも多く、貴重で面白いお話しをうかがえる貴重な場ですので、なるべく本質的なタスクに集中してインタビューに取り組みたい際にご参考ください!



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