情報を所有から共有へ。買い手ファーストで営業のスタンダードを変える。リード投資家3名が語るインフォボックス
BtoB市場における購買体験をアップデートし「ALL-WINNER」な世界の実現に取り組む株式会社インフォボックス。2024年2月に営業データプラットフォーム「infobox」をリリースしました。今回は、各ラウンドのリード投資家3名とインフォボックスCEOの平沼が対談。リリースまでの道のりを振り返り、今後のプロダクトにかける期待を語り合いました。
■株式会社インフォボックスの調達リリース:営業データプラットフォームの株式会社インフォボックス、プレシリーズAで6.6億円の資金調達を実施、累計調達額7億超えに。
■「infobox」プロダクトサイト
(右から)
・イーストベンチャーズ 村上 雄也 氏
・ANRI 中路 隼輔 氏
・XTech Ventures 髙本 寛将 氏
・インフォボックス 平沼 海統
起業家としての狂気性と妄想力
平沼:
今回は、各ラウンドにおけるリード投資家のみなさまに集まっていただきました。それぞれ、シード期にイーストベンチャーズの村上さん、プレシリーズAがXTech Venturesの髙本さん、エクステンションラウンドがANRIの中路さんですね。
これから皆さんと、インフォボックスのこれまでを振り返りつつ、プロダクトに対する今後の期待について、ざっくばらんに話したいなと。
最初に、それぞれ投資のきっかけを振り返っていければと思います。
村上氏:
平沼さんと出会ったのは、インフォボックスがITのスタートアップではなく、営業代行会社だった頃。あるYouTubeの動画がきっかけで、私から「一度会いませんか?」と声をかけたんです。たしか、どこかの経営者の方と、当時二十歳前後の平沼さんが対談している内容でした。若さを感じさせない落ち着いた話ぶりに、成熟した印象を受けた記憶があります。そこから実際に会うことになりました。
初めて二人で話してみて、「営業代行事業で感じたリアルなペインを元に、本気で購買市場を変えたい」という切実さが、まさに唯一無二の起業家だと思いました。また、その無謀とも思えるような未来予想図が本当に実現できそうな気迫があって、その人間性にも強く共感しました。
イーストベンチャーズは、創業初期や、20代、30代といった若い世代の起業家に投資するという特徴があります。平沼さんはその点でも相性が良く、2021年の春には最初の投資が決まりました。
その後、XTech Venturesの髙本さんにリードをバトンタッチしたのがその年の7月くらいでしょうか。
髙本氏:
そうですね。実は、私がXTech Venturesに入社して初めての案件が、インフォボックスなんです。だからこそ特別な思い入れがあります。
VCという立場だと、プロダクトそのものに深くコミットして誰かに向き合うことは難しくなりがちですが、自分のことを「誰かのためじゃないと本気になれない」性質だなと感じていて。だからこそ、投資先候補の方と会う時は、人として興味を持てるか、自分と同じ熱量で話せる人かというところをかなり重視しています。
初めて平沼さんに会った時、そうした「熱量」の部分に、ものすごくシンパシーを感じたんです。もちろん事業の構想だったり、今後の成長可能性みたいなところもありつつですが、何よりも起業家としての資質と熱意に惹かれました。
セールステックは市場として大きい分、プレイヤーも多いですし、どうしても各社の考えるソリューションやアプローチは似通ってくるもの。競合企業もどんどん出てくる中で、どのくらい泥臭くやり切れるかどうかがそのまま事業の成長に関わってくると考えています。
私たちXTech Venturesの掲げているバリューに「元気があれば突破できる」というものがありますが、社内の投資検討会議においても、「やり切れる起業家か」という視点は重点的に議論されています。
中路氏:
プレシリーズAのエクステンションラウンドでリードをした中路です。
平沼さんに初めて出会った時から、泥臭く粘り強い起業家というイメージでした。今もその印象は変わっていません。
BtoBのスタートアップって、結構大人のプレーというか、ネットワークゲームになりがちなところもあるんです。だからこそ、そこを突破して頭ひとつ抜けるには、髙本さんが話されていた「元気があれば突破できる」じゃないですけど、地道に、活力を持って動き続ける力が何より重要になってくるんですね。
平沼:
その頃は、壁にカビが生えてるようなビルの一室で寝起きしてひたすらに仕事をしてました。元気と粘り強さには自信があります(笑)
中路氏:
まさに、生命力の塊ですね。
起業家のそうした部分を、私の中では「狂気性」と呼んでいますが、普通に考えたらおかしいような、無茶なことを突き詰めて現実にする力は起業家に必要な資質そのものだと思います。
ANRIのファンドとしての特徴に、新規投資のあと追加投資を続けるという点があります。投資をし続けるファンドはそう多くないと思いますが、私たちはシード期の不確実性をしっかりと下支えしつつ、その後の成長にも伴走していきたいと思っています。
また、個人的には「新しいことや、定石ではないこと」をやりたいと考えています。その点でも、平沼さんはセールステック業界に新しい風を吹かせるプレイヤーだと確信しています。
村上氏:
平沼さんには、数値やロジックの積み重ねだけでは見通せないようなストーリーを妄想して、未来を信じてそれを伝える力と、その実現のために泥臭い努力をやり切れる力、この二つが備わっていると思います。
「妄想こそが事業構想力」という言葉が本当に似合う人です。
髙本氏:
最近の起業家の傾向として、スマートでリアリストな人が増えている印象です。スタートアップという枠組みの中でなくても、成果を出せる人や出してきた人が、セールステック業界において堅実な方法でチャレンジを始めているんですね。
だからこそ、一見楽観的にも見えるような突き抜けた視座や戦略を持って、ものすごいエネルギー量で駆け抜けられる人は、起業家の中でも希少な存在です。
エクセルの延長にないプロダクトで、本質的な価値に向き合う
平沼:
インフォボックスの挑戦するセールステック市場では、日々たくさんのプロダクトがリリースされています。その中で、インフォボックスが強みとして価値提供できる点はどこにあると考えますか?
中路氏:
やはり、自身の営業経験から「こういうものが欲しいよね」とプロダクトを作り、ロジカルさだけで問題を解こうとしていない姿勢は、他にない唯一無二のものだと思います。
ベンチマークとしている企業はあるものの、常に自分たちの提供したい価値を問い直しながらプロダクト開発を続けているからこそ、他のセールステックにはないようなオンリーワンが実現するんじゃないかなと思います。
髙本氏:
テクノロジーの革新性や市場を見る目みたいなところから考えるのではなく、小さなインサイトを積み上げて、プロダクトを作っていますよね。
今回、一定のコストと時間をかけて「infobox」という新プロダクトがリリースされたのもまさにそうした背景があると思います。
中路氏:
SaaSのプロダクトはたくさん出てきていますが、スプレッドシートを少し便利にしただけでは?というものもあるのではないでしょうか。お金をかけて導入するくらいなら、使い慣れたスプレッドシートの方がいいじゃんみたいな。
だけど「infobox」は、エクセルの延長にないシステムだと思うんですよね。
今、世の中の流れとして、SaaSで解ける問題なのかSIerで解ける問題なのかが揺れている時期だと感じていて。全てSaaSでプロダクトドリブンで進めるやり方がうまくいくかと思いきや、そうでもないぞ?となっている。その中で「infobox」が取り組んでいる課題は、ちょうどプロダクトドリブンで解決できる可能性があると感じています。
平沼:
様々なセールステックのシステムがありますが、一度CSVをダウンロードしてエクセルでいじってというふうに、システム上で完結しないものも多いですよね。もちろん、それが必ずしも悪いわけではないですが、データが一つのシステム上に集約されるからこそ実現できることがあると思っています。
思いを伝播させ、チームとして1000%の力でやり切るには
平沼:
初めて投資を受けてから、自分が引っ張らないとという思いで突っ走ってきましたが、この数ヶ月で「組織としてどう成果を出すか」という意識へと完全にシフトしたと感じます。一人でできることの限界値を改めて、痛感させられたというか。
ここまで伴走している投資家の目線から、インフォボックスの組織としての成長や成熟を感じることはありますか?
村上氏:
本当に創業期と今では、組織の全てが変わっていると思います。当時は、平沼さんの熱意がイコール会社のパワーでしたが、今はCOOの清水さんをはじめ、信頼して任せられる人材が続々と仲間になっていますよね。チームでしか持ち得ない強さを感じます。
中路氏:
経営者が1000%の力で頑張っても、組織全体として1000%の成果が出せるかというとそうじゃないんですよね。特に、組織が成長すればするほど、レバレッジを効かせる必要が出てくるので、そういうふうにメンバーを巻き込めるかどうかが鍵になります。今、強い人材をきちんと採用できているのは、平沼さんがまさにその才能を持っているからだと思います。やっぱりバックグラウンドが営業なんですよね。
髙本氏:
そうですね。初期は一人ひとりに任せる良い循環ができていたのに、組織規模が大きくなってモメンタムがなくなった瞬間に、上手くいかなくなる組織も見てきました。
それぞれが自分の持ち場を守り、その責任を全うするためには、経営者が「俺たちいけるよね」という思いを組織全体に信じさせること、「これをやれば成功するんだ」という気持ちを伝播させることがとても大切だと思います。
情報の所有から共有へ。インフォボックスが日本の購買市場を変える
平沼:
私たちインフォボックスは、これからますますギアをあげて「ALL-WINNERな世界」を目指し、日本の購買環境を根本からよくしたいと本気で考えています。
今後の私たちに寄せる期待について、メッセージをいただいてもよいですか?
村上氏:
調達が完了し、プロダクトもリリースされた今は、一つひとつの戦略が今後の売り上げや成長に直結する本当に大事なフェーズ。その中でインフォボックスは、目先の数字にとらわれず、顧客にとっての本質的な価値に向き合えています。だからこそ、これまで作り上げてきたプロダクトを一旦白紙に戻し、「infobox」をリリースする判断ができたのだと思います。「うさぎと亀」でいうところの「亀」でもいいから、きちんとした土台を築くことで、最終的に大きな果実を掴んでほしいと思います。
髙本氏:
平沼さんと最初に話した時から、「より良い購買のための情報は、もっと流通していいよね」という共通した課題感を持っていました。もちろん、プライバシーやリーガルの問題等、ケアしなければいけない部分は多いですが、あらゆる情報が、必要以上にクローズドなものとして扱われている状態は、日本の購買市場で大きな機会損失をうんでいると思います。
もちろん、投資をしている身としては、会社として売り上げを立ててほしいですし、そのために大きなプレイヤーに導入して欲しいという思いもあります。ですが、まずはインフォボックスの実現したい世界感に芯から共感してくれるお客さんにこそ、導入して欲しい。そうすることで、インフォボックスが描く唯一無二の世界観をプロダクトに着実に落とし込んでいけると思っています。
平沼:
まさに今、導入してくださるお客様は、初回のご提案時からコンセプトに共感してくれる方ばかりですね。だからこそ、実際に使ってみての素直なフィードバックがもらえているし、それらをプロダクト開発に活かすいい循環ができていると思います。
「情報の所有から共有へ」という軸は、事業の構想段階からブレていません。
これは日本人特有ですが、個人情報に限らず情報を保有したがる傾向にあります。日本でビジネスを展開するからには、そういった文化的な背景は無視できません。「多くの人がなんとなく抱いている不安」を払拭し安心してプロダクトを使ってもらうために、リーガルやプライバシーには、とても真剣に向き合っています。
髙本氏:
今って、個人情報に対する必要以上にセンシティブでクローズドな雰囲気に、みんな「このままじゃいけない」と感じているはずなんです。でも、ベストな策が何かはわからないでいる。
だからこそインフォボックスが「ALL-WINNER」な情報流通の解を提示することで、営業という概念を根本から変えるチャンスだと思います。
中路氏:
インフォボックスにはプロダクト目線、投資家目線でそれぞれ期待するところがあります。
まず、プロダクト視点で言うと、日本の生産性をあげてほしい。労働人口が減っているにもかかわらず、日本の一人当たりの生産性はものすごく低いんです。その原因の一つが、情報がクローズドになっていることにあると思いますし、そこを解決できるのはITの力だけです。
投資家目線でいうと、セールステックは、私たちに残された残り少ない市場です。
今後AIやテクノロジーがさらに発展していくと、個人で事業を立ち上げる人も増えるだろうし、そうなるとますますセールステックが必要になってくる。その流れは海外の市場の流れが証明しているところです。
一方で「市場が大きいぶん競合が多い」という意味でもあるので、どこまで踏み込めるかも重要です。
平沼:
今、セールス分野で世にリリースされている多くのプロダクトが使い手を選ぶと感じています。やっぱりできることが増えるほど操作は複雑になりますし、かといってエクセルでできることを簡単にするだけでは意味がない。
私たちのプロダクトは誰でも迷わず使えて、必要なデータを扱える状態を目指したいと思っています。まさにあらゆる営業活動のインフラとして、根本から日本の購買環境を変えていきたいなと。
これからも各投資家の皆さまからたくさんのご意見をいただいて、事業を前進させていきます。今日はありがとうございました。