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漢方薬の副作用:頻尿と尿閉

※本稿は、2020年5月に私設ホームページで公開した論考の転載です。

漢方薬の副作用としては、軽微なものとしては下痢などの胃腸障害、重大なものとしては、間質性肺炎、肝機能障害などがあります。 あまり知られていない副作用に、頻尿と尿閉があります。頻尿の方は、内服してから数か月後~数年後に生じる場合があります。 漢方薬の副作用と考えず、泌尿器科で頻尿としての治療を受けてしまう場合があり、特に注意が必要です。

頻尿:朝より就寝までの間に8回以上排尿

尿閉:排尿障害、膀胱から尿道にかけて通過障害があり排尿できない状態 

私が実際に診察した症例を、ご紹介します。

症例 7歳  女性  全頭脱毛症

 漢方薬で治療中に、頻尿が生じた。授業中にも尿意を感じ、日常生活に支障をきたした。 漢方薬は5年前より内服していたが、副作用としての頻尿は否定できないと判断し、漢方薬を1週間中止とした。 頻尿は改善した。漢方薬を再開したところ、再び頻尿は増悪し、再度中止にて改善した。

内服して数年後に、頻尿が生じた場合は、副作用かどうかの判断は、現実にはなかなか困難です。 漢方薬の副作用に、頻尿があることを認識していないと誤診する可能性が高くなります。 原因生薬は、柴胡が怪しいと私は考えています。

症例 60歳代前半  男性  乾皮症性湿疹

 アゼプチン錠と越婢加朮湯を投与した。翌日、尿閉が生じたため、再受診した。 再受診時、薬剤師より既にアゼプチン錠中止の指示を受けていた。アゼプチンが原因薬剤とは考えられないため、越婢加朮湯も中止を指示した。その後、尿閉は改善した。

ポララミンなどの第一世代抗ヒスタミン薬では、副作用として尿閉が生じる場合があります。 アゼプチンは、第二世代抗ヒスタミン薬であり、通常は尿閉は生じません。 越婢加朮湯が、尿閉の原因薬剤であったと考えられます。原因生薬は、麻黄です。 高齢の男性では、前立腺が肥大している場合が多く、麻黄を含む漢方薬を内服する時は、特に注意が必要です。

漢方薬の副作用としての頻尿と尿閉は、医師や薬剤師においても、あまり知られていないのが現実なのです。

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