#11 MBTIはAI社会のプロローグだ
AI、IoT（Internet of Things）、ロボット等先端技術が社会に実装され、今までにない新たな価値を生み出し、多様な人々がそれぞれ の多様な幸せを尊重し合い、実現でき、持続可能な人間中心の社会
AI社会は突如その姿を現した
ChatGPTの世界的流行により、AI社会は瞬きする間もなく僕たちの前に姿を現した。
お客様へのメール対応も、大学のレポート課題も、最近気になっているあの子のことも、AIに尋ねる。AIによって僕たちの意思決定と行動そのものが変容している。
アニメ「PSYCHO-PASS」は、22世紀の日本を舞台にしたSFサイコスリラーで、公安局刑事課のメンバーたちがテクノロジーによって犯罪を防ぐ未来社会を描いている。物語の核には、シビュラシステムと呼ばれる高度なAIシステムがあり、このシステムは市民の精神状態や心理傾向を数値化し、社会秩序を維持するために「サイコパス指数」や「犯罪係数」として管理している。この指数が高くなると「潜在犯」と見なされ、監視対象となるか、拘束・処罰の対象にされる仕組みだ。
この未来社会では、個人の自由や人権がシビュラシステムによって制限され、幸福で平和な社会を維持する一方で、管理・監視社会の問題や倫理的なジレンマがテーマとなっている。人々の行動や心理状態が完全にデータ化されているため、個人が自由な意思を持つことや、自分の未来を自分で決めることが難しい状況が生じ、物語を通してシビュラシステムの是非や、人間の自由意志とシステムとの関係性が問われる。
登場人物たちは、シビュラシステムの下で正義を守ることに葛藤し、システムのもたらす「正義」と人間としての「正義」との間で対立や悩みを抱える。
MBTI が個人のハッシュタグになる時代
ChatGPTの流行と同時期に、若者を中心に拡大した性格診断テスト「MBTI（Myers-Briggs Type Indicator）」は、心理学に基づく性格診断ツールで、個人の心理的傾向を16の異なる性格タイプに分類する。
MBTIは、4つの対極的な心理指向に基づき、各個人の思考や行動傾向を把握する。
1. 外向（E） vs. 内向（I）：
他者や外部に関心を向けるか、自分の内面や自己に関心を向けるか。
2. 感覚（S） vs. 直感（N）：
現実の情報を具体的に受け取るか、未来や可能性に目を向けて抽象的に捉えるか。
3. 思考（T） vs. 感情（F）：
論理や客観的な分析に基づいて判断するか、他者との関係性や感情を重視するか。
4. 判断（J） vs. 認知（P）：
計画的で組織的なスタイルを好むか、柔軟で臨機応変な対応を好むか。
これら4つの指向の組み合わせによって、たとえば「INTJ」や「ENFP」といった16のタイプに分類される。各タイプは異なる特徴や強み、対人関係の傾向を持つとされ、自己理解やキャリア、コミュニケーションスタイルの改善に役立つとして多くの企業や教育機関で使われている。
そして、それ以上に10-20代男女のアイデンティティの分類として機能している。
自分の個性や他人との相性をMBTIに委ねる。
「少し人見知りなところがあっても、『I』だからしょうがないよね。」
「別れた元カレはENFPでさ、結局浮気されてた。もうENFPとは付き合わない！」
そこに、自分の意思はない。
MBTIという神に身を捧げているに等しい。
PSYCHO-PASSで好きなシーンがある。
縢「分かんねえよ。俺なんかに分かるわけねーじゃん。あんたは何にでもなれた。どんな人生を選ぶことだってできた。それで悩みさえしたんだろう？すげえよな、まるでシビュラができる前のジジババみてえだ」
常守「うん、すごいよね。誰もが自分の人生を手探りで選んでた。それが当たり前の世界があったなんてね」
縢「今じゃシビュラシステムがそいつの才能を読み取って、一番幸せになれる生き方を教えてくれるってのに。本当の人生？生まれてきた意味？そんなもんで悩む奴がいるなんて、考えもしなかったよ」
常守「そうだね、重たくて辛い悩みだよ。でもね、今では思うんだ。それを悩むことができるって、本当はとても幸せなことじゃないかって」
僕らは、”何か”に分類され、ハッシュタグを背負って生きる。その方が楽だ。
自分で決めなくていい。
辛いことがあっても、不条理なことに直面しても、自分に非があることであったとしても、全てはMBTIのせい。
しょうがない？
違う。自分の人生に無責任なだけだ。
傷つくのが恐くて、他人からの否定の先に孤独になるのを避けている。
僕たちを、人間たらしめるのは、他でもない自分の意思だ。
>>>次回へ続く