#6 日本人として死にたい。
「一期一会」という言葉は、耳にしたことがある人が多いと思います。
「一期一会」とは、一生に一度限りの機会や出会いを意味します。
何度も会う機会がある人に対しても、常に「これが最後かもしれない」と考え、そのときを大切にすべき、という教えです。
茶道には、同じ瞬間は二度とありません。
夏は風炉で、冬は炉に変わります。
掛け軸も月によって毎回変わります。
お菓子も季節それぞれのものに移ろっていきます。
当然、お稽古を一緒に行なう人も変わります。
茶道を初めて1年も経っていませんが、同じ光景を目にしたことはありません。
昔の日本人は季節とその移ろいを大切にして、その一瞬一瞬を味わっていたのだと深い興味を抱きました。
月も新月や上限の月だけではなく、十三夜月・小望月・十六夜月・立待月など丸みや時期によって、多様な呼び名が付けられています。
日本人の自然に対する言葉の豊富さと美的感性は、世界に誇るべき文化であると感じます。
言葉の多様性は、実際に自然体験をしたり、その体験から学び考えて言語化したり、より洗練された言葉に出会ったりの積み重ねで生まれるものです。
単に自然を体験のみして、少し書籍を読み、SNSで言葉を探すだけでは決して身につきません。
1人の日本人として、歴史・古典文学・芸術を身につけたい。
自然を愛し、上品で美しい所作と言葉を紡ぎたい。
最期は、日本人として死にたい。
>>>次回へ続く