ラストエリクサー症候群
役に立たなくてもいいという話。
ファイナルファンタジーシリーズにはラストエリクサーと呼ばれる回復アイテムが登場する。主人公たちが全滅の危機に瀕しても、このアイテムを使うと一瞬で体力が満タンになって窮地を脱することができる。極めて有用なアイテムに思えるが、僕のゲーム人生では一度も役に立ったことはない。
ラストエリクサーはその効果が強力すぎるため、ゲーム内では使用回数が極端に限られている。もったいなくて使えないのだ。今まさに全滅しかけているとしても、これより厳しい本当の危機が未来に待っているかもしれない。
先のことはその時に考えればいいやと場当たり的にラストエリクサーを使ったとしよう。敵と味方がお互いに消耗していた状態だったのが、突然味方だけが全回復するのである。なんかズルい、そんな勝ち方をして楽しいのかという葛藤が生まれる。
結局、最後まで一度も使わない。ゲームのエンディングを見ながらアイテム欄に手付かずのまま残っているはずのラストエリクサーを思い出す。それは難所を自力で切り抜けた名誉の勲章であり、使うべきときに使えなかった不名誉の烙印でもある。
役には立たなかった。しかし、手に入れたことには意味があったと思う。