見出し画像

折り返し地点

誰もが口を揃えて言うように、歳を重ねると時間が経つのが早くなる。錯覚なのかもしれないし、実質的に時間あたりの行動力が落ちているのかもしれない。いずれにしても時間が速いと感じることは過去と未来が近づくことを意味する。

この身体には50年分の歴史が刻まれていて、僕は50年という年月がどれくらいの長さなのかを実感している。40歳で想像する50年とは違う。実際に生きてきた50年だ。

そうやって手に入れた50年の物差しを僕が生まれた1973年から逆向きに当ててみると1923年に到達する。大正12年。関東大震災のあった年らしい。

歴史上の出来事がリアルに感じられる。自分の人生を左手に載せたとすると、右手には関東大震災や第二次世界大戦、人類初の月面着陸がすっぽり収まるスケール感である。

今度は物差しを現在から未来に向けて置いてみる。100歳まで生きるとすればここが折り返し地点になるだろう。しかし、先ほどと同じく左手にこれまでの人生を載せたとしても、右手に同じ量の思い出は積み上がらない。時間は加速しているからだ。

焦りや不安がないといえば嘘になる。量が見込めないなら質を高めるしかないが、意外と何とかなりそうな気がしている。過去をより遠くまで見渡せる視点を手に入れたことがおそらく自信につながっている。