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Photo by
noriaki_wada
最初はチョキ
たまに映画やドラマの中で、サプライズパーティーなるものが催される。誕生日の主役が何も知らずにドアを開けるとパーティーの準備が整っていて、クラッカーの音とともに仲間たちからの祝福を浴びせられるアレだ。
平和で楽しいイベントのはずだが、僕の心は少しざわざわする。
小学生の時、6人ずつのグループに分かれて給食を食べるしきたりがあった。班分けは席の位置で自動的に決まるので、とくに仲良しグループというわけでもない。
食後には牛乳パックを集めて捨てる仕事が待っている。仕事といっても空の牛乳パックを教室前のバケツにいれるだけの簡単なお仕事だ。この当番をうちの班では毎回じゃんけんで決めていた。
普通、6人のじゃんけんは初手で勝負がつかない。が、その日は僕がチョキを出し、他の全員がグーを出した。それが事前に示し合わされたものだとすぐに気づいて、僕は泣いてしまった。
負けて悔しかったのではない。仕事を押し付けられたとか、いじめられたと感じたわけでもない。彼らに悪意がないのはわかっていて、僕が勝手に疎外感で寂しかっただけである。
誰も悪くないからこそ、あの場面で笑えなかった自分は人の輪に入るべきでないと、つくづく思うのだった。