駆け出し百人一首(12)うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒み偲ひつるかも(大伴家持)
うつせみの世(よ)は常(つね)なしと知るものを秋風(あきかぜ)寒(さむ)み偲(しの)びつるかも
万葉集 3巻 465番
**訳:現世が無常なのは知っているけれど、秋風が冷たいので、亡き人を恋い慕ってしまったのだなぁ。
Cold autumn winds made me miss my late wife, though I knew that all things in this world must pass away.**
大伴家持が妻の1人を亡くしたときの歌。万葉集の歌で、仏教的な無常観に触れているものは珍しい。頭では分かっていても、秋風に刺激されて、感情は止まらないのです。
和歌の修辞法
うつせみの:世、人、命、身にかかる枕詞。そもそも「うつせみ」は「現し身」から転じたとも言われ、現世、この世を意味する。「空蝉」とも書く。
文法事項
ものを:逆接の接続詞。「ものから」「ものゆゑ」と同じ。
寒み:形容詞の語幹+み。「〜ので」と訳す、ほぼ和歌にだけ登場する文法。
かも:詠嘆の終助詞。平安時代以降は「かな」と書く方が多い。
古文単語
偲び:この歌では現代語に近い「故人を偲ぶ、思い出す」の意味で使われているが、古文では単に「慕う」「恋しく思う」の意味で使われる方が多い。
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