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新規抗菌薬のまとめ

近年、多剤耐性菌の出現と拡大が世界的な公衆衛生上の脅威となっています。特に、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)や多剤耐性緑膿菌(MDRP)などによる難治性感染症は、既存の抗菌薬では治療が困難な場合が増えています。このような背景のもと、新しい作用機序や耐性菌に対する有効性を持つ新規抗菌薬の開発が急務となっています。

本稿では、最近承認された、あるいは開発中の新規抗菌薬について概説します。これらの薬剤は、既存の抗菌薬に耐性を示す細菌に対しても有効性を示し、難治性感染症の新たな治療選択肢として期待されています。特に、ザバクサ®(セフトロザン/タゾバクタム)、レカルブリオ®(イミペネム/シラスタチン/レレバクタム)、フェトロージャ®(セフィデロコル)、ザビセフタ®(セフタジジム/アビバクタム)に焦点を当て、それぞれの特徴、作用機序、適応症、臨床試験結果、安全性プロファイル、そして日本における位置付けについて詳細に解説します。


ザバクサ®(セフトロザン/タゾバクタム)

薬剤の概要

一般名:セフトロザン/タゾバクタム(CTLZ/TAZ)
商品名:ザバクサ配合点滴静注用
製造販売会社:MSD株式会社

特徴:新規セフェム系薬(セフトロザン)とβ-ラクタマーゼ阻害剤(タゾバクタム)の配合剤

作用機序:

  • セフトロザンはセファロスポリン系抗菌薬

  • タゾバクタムはβ-ラクタマーゼ阻害剤

抗菌スペクトル:

  • 基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌を含む多くの好気性グラム陰性桿菌に活性

  • Pseudomonas aeruginosaに強い活性

  • 多くのEnterococcus属、Staphylococcus属には活性なし

適応症と用法・用量

FDA承認

  • 腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症(UTI)

  • 複雑性腹腔内感染症(IAI)(メトロニダゾールと併用)

  • 院内肺炎(HAP)および人工呼吸器関連肺炎(VAP)

用法・用量(クレアチニンクリアランス > 50 mL/分の場合):

  • 複雑性尿路感染症:1.5 g静注8時間ごと、7日間

  • 複雑性腹腔内感染症:1.5 g静注8時間ごと、4〜14日間(メトロニダゾールと併用)

  • 院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎:3 g静注8時間ごと、8〜14日間


臨床試験の結果と有効性

ASPECT-cUTI試験 [1]

研究目的:複雑性下部尿路感染症または腎盂腎炎患者の治療において、新規抗菌薬セフトロザン-タゾバクタムの有効性と安全性を評価すること。

研究デザイン:無作為化、二重盲検、ダブルダミー、非劣性試験

対象患者:18歳以上の複雑性下部尿路感染症または腎盂腎炎と診断された入院患者

介入:セフトロザン-タゾバクタム1.5g を8時間ごとに静脈内投与

比較対照:レボフロキサシン750mgを1日1回静脈内投与

主要評価項目:治療5-9日後の細菌学的および臨床的治癒の複合エンドポイント

結果:

  • セフトロザン-タゾバクタム群の複合治癒率: 76.9% (306/398)

  • レボフロキサシン群の複合治癒率: 68.4% (275/402)

  • 差: 8.5% (95%CI 2.3-14.6)

結論:セフトロザン-タゾバクタムは複雑性下部尿路感染症または腎盂腎炎患者の治療において、高用量レボフロキサシンよりも優れた効果を示した。

ASPECT-cIAI試験 [2]

研究目的:複雑性腹腔内感染症患者の治療において、新規抗菌薬セフトロザン/タゾバクタム+メトロニダゾールの有効性と安全性を評価すること。

研究デザイン:多施設共同、前向き、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験

対象患者:複雑性腹腔内感染症で入院中の成人患者

介入:セフトロザン/タゾバクタム(1.5g)+ メトロニダゾール(500mg)を8時間ごとに静脈内投与

比較対照:メロペネム(1g)を8時間ごとに静脈内投与

主要評価項目:治療開始24-32日後の臨床治癒率

結果:

  • セフトロザン/タゾバクタム群の臨床治癒率: 83.0% (323/389)

  • メロペネム群の臨床治癒率: 87.3% (364/417)

  • 差: -4.2% (95%信頼区間 -8.91% to 0.54%)

結論:複雑性腹腔内感染症患者の治療において、セフトロザン/タゾバクタム+メトロニダゾールはメロペネムに非劣性であることが示された。多剤耐性病原体による感染症を含む複雑性腹腔内感染症の治療に有効である可能性が示唆された。

ASPECT-NP試験(3)

研究目的:人工呼吸器関連肺炎または人工呼吸管理下の院内肺炎患者の治療におけるセフトロザン-タゾバクタムの有効性と安全性をメロペネムと比較評価すること。

研究デザイン:無作為化、対照、二重盲検、第3相非劣性試験

対象患者:18歳以上で人工呼吸器を装着し、人工呼吸器関連肺炎または人工呼吸管理下の院内肺炎と診断された入院患者

介入:セフトロザン-タゾバクタム3gを8時間ごとに静脈内投与

比較対照:メロペネム1gを8時間ごとに静脈内投与

主要評価項目:28日全死因死亡率 (intention-to-treat集団)

結果:

  • セフトロザン-タゾバクタム群の28日死亡率: 24.0% (87/362)

  • メロペネム群の28日死亡率: 25.3% (92/364)

  • 重み付け治療差: 1.1% (95%信頼区間 -5.1 to 7.4)

結論:重症の人工呼吸器関連肺炎または人工呼吸管理下の院内肺炎患者の治療において、高用量セフトロザン-タゾバクタムはメロペネムと同等の有効性と忍容性を示した。

安全性プロファイルと主な副作用

一般的に忍容性が高く、安全性プロファイルは良好
頻度の多い副作用は悪心、下痢、頭痛、発熱など
臨床試験や実臨床での使用において、重大な副作用は少ない
副作用による投与中止は稀

日本における位置付け

  • 2019年1月に製造販売承認を取得し、同年12月に適応症が拡大

  • 多剤耐性グラム陰性菌、特にESBL産生菌やP. aeruginosaによる難治性感染症に対する新たな治療選択肢として期待されている

レカルブリオ®(イミペネム/シラスタチン/レレバクタム)

薬剤の概要

一般名:イミペネム/シラスタチン/レレバクタム(IPM/CS/REL)
商品名:レカルブリオ
製造販売会社:MSD株式会社

特徴:カルバペネム系抗菌薬(イミペネム)、腎デヒドロペプチダーゼ-I阻害薬(シラスタチン)、新規β-ラクタマーゼ阻害薬(レレバクタム)の3剤配合

作用機序:

  • イミペネム:細菌の細胞壁合成を阻害

  • シラスタチン:イミペネムの腎での分解を抑制

  • レレバクタム:クラスAおよびクラスCβ-ラクタマーゼを阻害

抗菌スペクトル:

  • 腸内細菌科

  • Bacteroides属

  • Pseudomonas aeruginosa

  • ESBL、AmpCセファロスポリナーゼ、セリン型カルバペネマーゼ、Klebsiella産生カルバペネマーゼ(KPC)産生株を含む

  • MRSA、E. faecium、Stenotrophomonas maltophilia、Burkhoderia属の一部、メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生菌には活性がない

適応症と用法・用量

FDA承認

  • 院内肺炎または人工呼吸器関連肺炎

  • 複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)

  • 複雑性腹腔内感染

用法・用量(クレアチニンクリアランス ≧ 90 mL/分の場合):

  • 推奨用量(CrCl≧90mL/分):1.25g静注6時間ごと

  • 1.25g = イミペネム500mg + シラスタチン500mg + レレバクタム250mg

  • 30分以上かけて静注

臨床試験の結果と有効性

RESTORE-IMI 1 試験 [4]

研究目的:イミペネム非感受性細菌感染症の治療におけるイミペネム/レレバクタムの有効性と安全性をコリスチン+イミペネムと比較評価すること。

研究デザイン:無作為化、対照、二重盲検、第3相試験

対象患者:イミペネム非感受性(ただしコリスチンおよびイミペネム/レレバクタムには感受性)の院内肺炎/人工呼吸器関連肺炎、複雑性腹腔内感染症、または複雑性尿路感染症と診断された18歳以上の入院患者

介入:イミペネム/レレバクタム 500mg/250mg を6時間ごとに静脈内投与

比較対照:コリスチン(負荷量300mg、その後12時間ごとに150mgまで) + イミペネム500mgを6時間ごとに静脈内投与

主要評価項目:modified microbiologic intent-to-treat集団における全体的な治療反応(感染型ごとに定義)

結果:

  • イミペネム/レレバクタム群の全体的治療反応率: 71.4% (15/21)

  • コリスチン+イミペネム群の全体的治療反応率: 70.0% (7/10)

  • 調整済み治療差: -7.3% (90%信頼区間 -27.5% to 21.4%)

結論:イミペネム/レレバクタムはイミペネム非感受性細菌感染症の治療において、コリスチン+イミペネムと同等の有効性を示し、腎毒性などの有害事象が少なかった。カルバペネム非感受性感染症の治療選択肢として有望である。

RESTORE-IMI 2 試験 [5]

研究目的:成人の院内肺炎および人工呼吸器関連肺炎の治療におけるイミペネム/シラスタチン/レレバクタムの有効性と安全性をピペラシリン/タゾバクタムと比較評価すること。

研究デザイン:無作為化、対照、二重盲検、第3相非劣性試験

対象患者:院内肺炎または人工呼吸器関連肺炎と診断された18歳以上の成人入院患者

介入:イミペネム/シラスタチン/レレバクタム 500mg/500mg/250mg を6時間ごとに静脈内投与

比較対照:ピペラシリン/タゾバクタム 4g/500mg を6時間ごとに静脈内投与

主要評価項目:28日全死因死亡率 (modified intent-to-treat集団)

結果:

  • イミペネム/シラスタチン/レレバクタム群の28日死亡率: 15.9% (42/264)

  • ピペラシリン/タゾバクタム群の28日死亡率: 21.3% (57/267)

  • 調整済み治療差: -5.3% (95%信頼区間 -11.9% to 1.2%)

結論:イミペネム/シラスタチン/レレバクタムは成人の院内肺炎および人工呼吸器関連肺炎の治療において、ピペラシリン/タゾバクタムに対して非劣性であることが示された。重症患者を含む幅広い患者層に対して有効な新しい治療選択肢となる可能性がある。

安全性プロファイルと主な副作用

  • 主な副作用は悪心、下痢、頭痛、発熱など

  • Clostridioides difficile下痢の報告あり

  • 他のβラクタム薬に不耐な患者で交差反応性(程度は不明)

  • けいれんリスク:バルプロ酸との併用で上昇(併用を避ける)

日本における位置付け

  • 2021年11月9日に日本で販売承認された。

  • 多剤耐性グラム陰性菌、特にカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)やカルバペネム耐性緑膿菌による難治性感染症に対する新たな治療選択肢として期待されている

  • 既存のカルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌による感染症の治療オプションとして重要な役割を果たす可能性がある

フェトロージャ®(セフィデロコル)

薬剤の概要

一般名:セフィデロコル(CFDC)
商品名:フェトロージャ
製造販売会社:塩野義製薬株式会社

特徴:シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬

作用機序:

  • シデロフォアとして鉄イオンをキレートし、細菌の鉄イオントランスポーターを利用

  • 細菌のペリプラズム内に高濃度に蓄積し、細胞壁合成を阻害

抗菌スペクトル:

  • 多剤耐性グラム陰性桿菌(カルバペネム耐性菌を含む)に広範な活性

  • グラム陽性菌および嫌気性菌には活性なし

適応症と用法・用量

FDA承認

  • 複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)

  • 院内肺炎および人工呼吸器関連肺炎

用法・用量(クレアチニンクリアランス ≧ 60 mL/分の場合):

  • 推奨用量:2g(3時間以上かけて)静注8時間ごと・7~14日間

臨床試験の結果と有効性

APEKS-cUTI試験 [6]

研究目的:グラム陰性菌による複雑性尿路感染症患者を対象に、セフィデロコールの有効性と安全性をイミペネム-シラスタチンと比較評価すること

研究デザイン:多施設共同、ランダム化、二重盲検、並行群間、非劣性試験

対象患者:複雑性尿路感染症または急性単純性腎盂腎炎と診断された18歳以上の入院患者

主要評価項目:治療終了7日後の臨床反応と微生物学的反応の複合アウトカム

結果:

  • セフィデロコール群: 183/252例(73%)が主要評価項目を達成

  • イミペネム-シラスタチン群: 65/119例(55%)が主要評価項目を達成

  • 調整後の群間差: 18.58% (95%CI: 8.23-28.92; p=0.0004)

結論:セフィデロコールはイミペネム-シラスタチンに対して非劣性を示し、事後解析では優越性も示された。安全性プロファイルはセファロスポリン系抗菌薬と同様であった。

APEKS-NP試験 [7]

研究目的:グラム陰性菌による院内肺炎患者を対象に、セフィデロコールの有効性と安全性を高用量持続注入メロペネムと比較評価すること

研究デザイン:多施設共同、ランダム化、二重盲検、並行群間、非劣性試験

主要評価項目:14日目の全死因死亡率

結果:

  • セフィデロコール群の14日目全死因死亡率: 12.4% (18/145例)

  • メロペネム群の14日目全死因死亡率: 11.6% (17/146例)

  • 調整後の群間差: 0.8% (95%CI: -6.6〜8.2; p=0.002 for 非劣性)

結論:セフィデロコールは14日目の全死因死亡率においてメロペネムに対して非劣性を示し、安全性プロファイルも同等であった。セフィデロコールは多剤耐性グラム陰性菌によるリスクのある院内肺炎患者の治療選択肢となる可能性がある。

CREDIBLE-CR試験 [8]

研究目的:カルバペネム耐性グラム陰性菌による重症感染症患者を対象に、セフィデロコールと最良の利用可能な治療法(BAT)の有効性と安全性を比較評価すること

研究デザイン:多施設共同、ランダム化、非盲検、並行群間、記述的第3相試験

主要評価項目:

  • 肺炎または血流感染/敗血症患者:治療終了7日後の臨床治癒率

  • 複雑性尿路感染症患者:治療終了7日後の微生物学的根絶率

結果:

  • 臨床治癒率は両群で同程度(セフィデロコール群50-53%、BAT群43-53%)

  • 微生物学的根絶率も同程度(セフィデロコール群53%、BAT群20%)

  • 有害事象の発現率は両群で同程度(セフィデロコール群91%、BAT群96%)

  • 全死亡率はセフィデロコール群で高かった(34% vs 18%)

結論:セフィデロコールはカルバペネム耐性グラム陰性菌感染症に対して、BATと同程度の臨床的・微生物学的有効性を示した。全死亡率の差は主にAcinetobacter属感染例で認められた。セフィデロコールは治療選択肢の限られた患者に対する治療オプションとなる可能性がある。

安全性プロファイルと主な副作用

  • 主な副作用は吐き気、下痢、発疹、肝機能検査値の上昇、低カリウム血症など

  • 臨床試験では、セフィデロコールが患者の鉄止血に影響を与えたことを示唆するような臨床検査値の異常は報告されていない。

日本における位置付け

  • 2023年11に製造販売承認を取得

  • 2023年11月7日:「抗菌薬確保支援事業」の第1号に指定

  • 薬剤耐性(AMR)感染症に対する新たな治療選択肢として期待

  • 適正使用促進のため、薬剤耐性確認検査手法の開発にも注力

ザビセフタ®(セフタジジム/アビバクタム)

薬剤の概要

一般名:セフタジジム/アビバクタム(CAZ/AVI)
商品名:ザビセフタ配合点滴静注用
製造販売会社:ファイザー株式会社

特徴:抗Pseudomonasセファロスポリン系薬(セフタジジム)と非βラクタム系βラクタマーゼ阻害薬(アビバクタム)の配合剤

作用機序:

  • セフタジジム:細菌の細胞壁合成を阻害

  • アビバクタム:βラクタマーゼを阻害し、セフタジジムを酵素による分解から保護

抗菌スペクトル:

以下の酵素による耐性菌に対して有効:

  • TEM, SHV

  • 基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL):CTX-M

  • AmpCセファロスポリナーゼ

  • Klebsiella pneumoniaeカルバペネマーゼ(KPC)

  • 特定のオキサシリナーゼカルバペネマーゼ

  • メタロカルバペネマーゼ産生菌、排出ポンプ過剰産生菌、ポリン変異菌には効果が限定的

適応症と用法・用量

FDA承認

  • 複雑性尿路感染症

  • 複雑性腹腔内感染症(メトロニダゾールと併用)

  • 人工呼吸器関連肺炎を含む院内肺炎

  • これらの感染症に関連する菌血症

用法・用量(クレアチニンクリアランス > 50 mL/分の場合):

  • 複雑性尿路感染/腎盂腎炎: 2.5g2時間以上かけて静注8時間ごと、7~14日

  • 複雑性腹腔内感染: 2.5g 2時間以上かけて静注8時間ごと+MNZ 500mg静注8時間ごと、5~14日(重篤な肝機能不全の場合は低用量)

  • 院内肺炎: 2.5mg2時間以上かけて静注8時間ごと

臨床試験の結果と有効性

複雑性尿路感染症 [9]

研究目的: 複雑性腹腔内感染症(cIAI)患者を対象に、セフタジジム/アビバクタム+メトロニダゾールの有効性と安全性をメロペネムと比較評価すること。

研究デザイン: 多施設共同、ランダム化、二重盲検、実薬対照、第II相臨床試験。

対象患者: 外科的介入と抗生物質治療を必要とするcIAIの入院成人患者203名。

介入: セフタジジム2g/アビバクタム500mg 8時間ごと静注 + メトロニダゾール500mg 8時間ごと静注。

比較対象: メロペネム1g 8時間ごと静注。

主要評価項目: 微生物学的評価可能集団における、最終投与14日後(TOC)の臨床効果。

結果:

  • 微生物学的評価可能集団でのTOCにおける臨床効果: セフタジジム/アビバクタム群 91.2% (62/68例) メロペネム群 93.4% (71/76例)

  • 推定差: -2.2% (95%CI: -20.4%, 12.2%)

  • セフタジジム非感受性菌に対しても高い有効性を示した(25/26, 96.2%)

結論: セフタジジム/アビバクタム+メトロニダゾールはcIAI患者に対して有効で忍容性も良好であり、メロペネムと同程度の有効性を示唆した。セフタジジム非感受性菌に対しても有効性を示したが、より重症な患者を対象とした追加の臨床試験が必要である。

安全性プロファイルと主な副作用

主な副作用:

  • 過敏性反応(セフタジジム、アズトレオナム、セフィデロコルとの交差反応性に注意)

  • Clostridioides difficile関連下痢

  • 中枢神経系症状(けいれん、昏睡、ミオクローヌスなど)

  • 悪心・嘔吐(メトロニダゾールとの併用時に10%)

  • 便秘・不安(尿路感染症で10%)

日本における位置付け

  • 2024年6月24日:製造販売承認取得

  • 国内第3相試験および国際共同治験の結果に基づき承認

  • 薬剤耐性(AMR)対策の新たな治療選択肢として期待

まとめ

新規抗菌薬の登場は、多剤耐性菌による感染症治療に新たな光明をもたらしています。ザバクサ®、レカルブリオ®、フェトロージャ®、ザビセフタ®は、それぞれ独自の作用機序や抗菌スペクトルを持ち、既存の抗菌薬では対応が困難だった耐性菌にも有効性を示しています。

しかし、これらの新規抗菌薬の使用にあたっては、適正使用の徹底が不可欠です。耐性菌の更なる出現を防ぐため、感染症専門医のコンサルテーションのもと、適切な症例選択と用法・用量の遵守が求められます。また、これらの薬剤の長期的な有効性と安全性を評価するため、市販後調査や追加の臨床研究が重要となります。

新規抗菌薬の登場は、薬剤耐性(AMR)対策における重要な進展ですが、これらの薬剤だけで問題が解決するわけではありません。感染予防策の徹底、抗菌薬の適正使用の推進、新たな抗菌薬や治療法の継続的な研究開発など、総合的なアプローチが今後も必要です。医療従事者、製薬企業、行政が一体となって取り組むことで、多剤耐性菌の脅威に立ち向かい、患者さんにより良い治療を提供できることが期待されます。

おまけ

参考文献

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2. Solomkin J, Hershberger E, Miller B, Popejoy M, Friedland I, Steenbergen J, et al. Ceftolozane/Tazobactam Plus Metronidazole for Complicated Intra-abdominal Infections in an Era of Multidrug Resistance: Results From a Randomized, Double-Blind, Phase 3 Trial (ASPECT-cIAI). Clin Infect Dis. 2015;60(10):1462-71. Epub 20150210. doi: 10.1093/cid/civ097. PubMed PMID: 25670823; PubMed Central PMCID: PMC4412191.
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