Dr.L@感染症専門医

日本感染症学会感染症専門医 & 日本内科学会総合内科専門医 &日本エイズ学会認定医🩺/ 大学病院勤務 / 論文を基にした信頼できる知識を提供 / 主な研究分野はHIV感染症ですが、幅広い感染症情報を扱います🔬 /#UequalsU/Straight Ally🏳️‍🌈

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HIVについて知ってほしいこと

HIV/AIDSに関する医学的理解は、この数十年で劇的に進歩しました。かつては「致命的な病」とされたHIVは、現代では適切な治療により健康的な生活を送ることができる慢性疾患となっています。 このnoteでは、HIVとAIDSの基本的な理解から、最新の治療法、予防策、そして社会的課題までを包括的に解説します。正確な科学的知識の共有が、より良い医療提供と社会の理解促進につながることを願っています。 HIVとAIDSの理解HIVは人々の免疫システムを徐々に弱体化させるウイルスです

    • 新規抗菌薬のまとめ

      近年、多剤耐性菌の出現と拡大が世界的な公衆衛生上の脅威となっています。特に、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)や多剤耐性緑膿菌(MDRP)などによる難治性感染症は、既存の抗菌薬では治療が困難な場合が増えています。このような背景のもと、新しい作用機序や耐性菌に対する有効性を持つ新規抗菌薬の開発が急務となっています。 本稿では、最近承認された、あるいは開発中の新規抗菌薬について概説します。これらの薬剤は、既存の抗菌薬に耐性を示す細菌に対しても有効性を示し、難治性感染症の新

      • Long COVID

        新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、世界中の人々の健康と生活に多大な影響を及ぼしました。急性期を乗り越えた後も、多くの方々が長期にわたる健康上の問題に直面しています。 この現象は「Long COVID」として知られるようになり、医学界や公衆衛生分野において重要な課題となっています。 Long COVIDは、「SARS-CoV-2感染後に発症し、少なくとも3か月間継続する慢性的な症状群」と定義されています[1, 2]。 Long COVIDには、改善す

        • HIV PrEPについて

          HIV感染予防の分野で革新的な進展をもたらしたPrEP(Pre-Exposure Prophylaxis)は、HIV陰性者がHIV感染を予防するために使用する抗HIV薬です。1990年代後半のHIV治療の進歩から生まれたこの予防法は、適切に使用すれば感染リスクを最大99%減少させる効果があります。本稿では、PrEPの概要、歴史、主要な臨床研究、効果、服用方法、副作用、そして日本における現状について詳細に解説します。 PrEPとはPrEP(Pre-Exposure Proph

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          HIVと悪性腫瘍

          HIVと悪性腫瘍の関連性は、HIV/AIDS流行の初期から注目されてきました。抗レトロウイルス療法(ART)の導入以前は、カポジ肉腫や非ホジキンリンパ腫などのAIDS関連悪性腫瘍(ADC)が主な問題でした。しかし、ARTの普及により、HIV陽性者の生命予後は大きく改善し、悪性腫瘍の発生パターンも変化してきています。 現在、HIV陽性者における悪性腫瘍は、死亡原因の主要な合併症となっています。ADCの発生率は減少傾向にありますが、非AIDS関連悪性腫瘍(NADC)の重要性が増

          感染症診療に役立つ微生物の基礎知識

          こんにちは。Dr.Kです。大学病院に勤務しながら、感染症に関する知識の啓発を行っています。 今日は「感染症診療に役立つ微生物の基礎知識」についてです。 感染症の勉強をするにあたって、微生物に関する知識が苦手という方は多いのではないでしょうか? 菌の種類が多くて覚えられない、ラテン語の読み方がわからない、そもそも興味がない、このように感じている医療従事者は少なくないと思います。 「肺炎ならセフトリアキソンを使えばいい」 「尿路感染症ならセフメタゾールを使い、CRPが高ければ

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          Doxy-PEPについて

          今日は、性感染症(STI)の予防における新たな選択肢として注目されている「Doxy-PEP」についてお話ししたいと思います。 Doxy-PEPとは、性的接触後に予防的にドキシサイクリンを服用することで、細菌性のSTIを予防する方法です。 コンドームの使用は最も効果的なSTI予防法ですが、Doxy-PEPは追加の予防オプションとして期待されています。 特に、男性とセックスをする男性(MSM)やHIV陽性者の間では、細菌性STIの発生率が増加傾向にあり、新たな予防策が求められてい

          HPVとHPVワクチンについて

          今日は、ヒトパピローマウイルス(HPV)とHPVワクチンについてです。 HPVは、性的接触により感染するウイルスで、子宮頸がんなどの原因となることが知られています。HPVワクチンは、このHPVの感染を予防するためのワクチンです。 日本では、2013年に「HPVワクチン接種の積極的推奨の中止」が行われましたが、これは副反応の報告を受けての措置でした。しかし、その後の研究で、HPVワクチンの安全性は確認されており、現在では接種が再開されています。 また、HPVは女性だけでなく、男

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          U=Uについて

          HIVは、長年にわたり深刻な公衆衛生問題として認識されてきました。 しかし、医学と科学の進歩により、HIV陽性者の生活の質と寿命は劇的に改善されました。その中でも、「U=U(Undetectable = Untransmittable)」の概念は、HIV陽性者とそのパートナーにとって革命的な意味を持つ新しいパラダイムです。 本記事では、U=Uの意味、その科学的根拠、社会的影響、そして課題について詳しく説明します。 U=Uとは何か?U=Uとは、「検出不能(Undetectab

          ドウベイトの登場とHIV治療の新たな潮流

          今回は各国のガイドラインでも初回治療の推奨レジメンとして記載されているドルテグラビル/ラミブジン(ドウベイト)配合錠についての解説です。 今までの抗レトロウイルス療法はなぜ3剤だったのか、2剤にすることの安全性やメリット、デメリットはなんなのか?、などについて様々な研究結果を元に解説したいと思います。 かなりの長文ですが、お付き合いください。 1. HIV治療の変遷HIV感染症に対する抗レトロウイルス療法の歴史を振り返ると、1980年代後半に登場したジドブジンを皮切りに、様

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          抗HIV治療ガイドライン2024年版【初回治療に用いる抗HIV薬の選び方】

          こんにちは。Dr.Kです。大学病院に勤務しながら、HIVや感染症に関する知識の啓発を行っています。 初回治療に用いる抗HIV薬の選び方について2024年3月に改訂された抗HIV治療ガイドラインにそって解説を行いたいと思います。 現在ガイドラインで推奨されている抗HIV薬の大まかな特徴についてまとめました。 長文となっていますがお読みいただけると幸いです。 抗HIV薬選択の基本2024年3月現在、日本で使用可能な抗HIV薬は、作用機序により6つのカテゴリー、合計で31種類の

          抗HIV治療ガイドライン2024年版【初回治療に用いる抗HIV薬の選び方】

          抗HIV治療ガイドライン2024年版【抗HIV治療の開始時期(成人、慢性期)】

          こんにちは。Dr.Kです。大学病院に勤務しながら、HIVや感染症に関する知識の啓発を行っています。 第2段目の投稿ですが、抗HIV治療の開始時期について2024年3月に改訂された抗HIV治療ガイドラインにそって解説を行いたいと思います。 HIV陽性となった場合、 いつから治療を始めるのか? いつから治療を始めたらいいのか? いつになったら治療が始められるのか? などについて解説していきます。 抗HIV治療ガイドライン2024年版3月PDF版 治療開始時期と治療成績HIV

          抗HIV治療ガイドライン2024年版【抗HIV治療の開始時期(成人、慢性期)】

          抗HIV治療ガイドライン2024年版【抗HIV治療の基礎知識】

          はじめまして。Dr.Kと申します。大学病院に勤務しながら、HIVや感染症に関する知識の啓発を行っています。 記念すべき初めての投稿ですが、基本的なHIVの知識について2024年3月に改訂された抗HIV治療ガイドラインにそって解説を行いたいと思います。 このガイドラインは毎年3月に改訂されていますが、毎年最新の情報を元にアップデートを重ねられている編集委員の先生には頭が上がりません。 抗HIV治療ガイドライン2024年版3月PDF版 https://hiv-guideline

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