42-3.国試直前対策を伝授!頑張れ受験生
注目新刊本「著者」対話講習会
1.皆で、3月国試の受験生を応援しよう!
公認心理師養成大学院の教育課程は、大混乱です。それは、公認心理師資格試験が3月3日実施され、3月29日(金)に合否が出るからです。これは、医師、看護師、薬剤師など医療職の国家試験日程に準じたものです。
修士課程2年の院生は、授業の単位を取得するだけでなく、学内外の実習を受けつつ研究を進めて修士論文を作成・提出するとともに試験準備をして受験し、さらに就職活動も進めるという、超過密スケジュールを余儀なくされます。これでは、まともな心理職教育はできません。
そのため、修士論文は早めに終わらせて公認心理師試験の準備に集中させる大学院も出てきています。実際、大学院では、修士論文以外の課題も簡便化し、3月国試にスケジュールを合わせざるを得ない状況です。心理職教育はこれで良いのかと危惧しつつ、国試を最優先せざるを得ないのが実情です。
受験生は、修士論文を提出してほっとしている暇なく、3月3日の試験の準備をしなくてはなりません。国試に合格しなければ、就職活動で得られた内定も取り消される可能性があります。ですから、皆で受験生を応援しなければならない事態になっています。
2.第7回公認心理師試験の直前対策を伝授
臨床心理iNEXTでは、公認心理師試験のバイブルとなっている「赤本 公認心理師国試対策2024(講談社)」※)の著者である河合塾KALSの宮川純先生を講師として、試験の傾向と対策についての講義と、その後に参加者との対話集会を実施します。
※)https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000380796
研修会では、下記プログラムで受験生や大学院の教員の皆様に向けて、修士課程修了前の試験にどのように備えるのかについてお話を伺います。また、受験生や教員からご質問を受けて宮川先生と質疑応答ができるコーナーも設けてあります。
研修会の副題は、「さあ!3/3国家試験までどう過ごす?」となっています。ですので、対話集会では、参加者の皆様からの「直前3週間をどのように過ごすのか?」、「どのような試験対策と準備をするのがよいか?」、「どのようなことに気をつけたらよいか?」等々、試験に関連する質問をなんでも受け付けます。
修士課程2年生だけでなく、公認心理師試験の受験を考えている修士課程1年生や学部生も参加できます。受験生が在学中であるので、大学院教員の皆様は、在学生の指導という点でも責任があるので、ぜひご参加いただきたく思っています。
3.3月に公認心理師試験があることの影響
冒頭に示した研修会講師の宮川先生にインタビューしました。なお、インタビューのご紹介動画は以下となっています。
(前半)https://www.youtube.com/watch?v=GN5FWVW4cSk
(後半)https://www.youtube.com/watch?v=1piea6J00HA
[下山]今年の国試は3月3日ですよね。昨年は5月の連休後の試験で、受験生は少し余裕がありました。しかし、他の医療関連職の国試スケジュールに準じて、どんどん早まり、今回は修士課程修了前に実施されることになりました。これは前代未聞ですね。心理職教育のステージが大きく変わってきたと思います。
公認心理師は、パブリックサービスとして多くの人に利用していただくということで、知識や技能を高めていかなければいけないということはあります。しかし、それを2年間で準備するのは大変だと思いますが、どうでしょうか。予備校で教えている中で、この3月になったことの意味はどのようなものなんでしょうか?
[宮川]3月試験になり、修士論文提出発表から試験までの期間がものすごく短い。それで、修士論文の作成や発表を二の次として試験に備える学生が出てくるのではと思っていました。しかし、そういった大学院生はかなり少なくて、むしろ修士論文をきちんとやっている。実習やケースもきちんと担当している。だから、ある意味試験に流されずに大学院生としてやるべきことをやっている方が多い印象です。
「論文や実習はどうでもいいから、試験だけ受けて合格すればいいんです」といった問い合わせは極めて少ないです。皆さん大学院生としてやるべきことをすごく大事にされている。ヒアリングをしていて、そういう方が多いなと思います。
4.大学院生を守り、サポートする
[宮川]ただ、その反面、修士課程でやるべきことをしっかりとやっているが故に試験にかけられる時間はものすごく少なくなってしまう。そこで、何らかの形で効率的な勉強ができると良いと思います。「大学院生の方々が大事にしているものを大事にしつつ、でもやっぱり合格もしていただきたいので、そのための手助けができないかな」ということを、我々としては思っているところではあります。
[下山]それは、私も大学院で指導していて感じます。一所懸命に修論を書き、外部実習にも行っていたら受験勉強なんかできないですね。しかも、就活もしなければいけないが、その余裕がない。そのように頑張っていた院生が試験に受からずに就職もできないことになれば、それは本当に残念でならないんですよね。
正直言って、3月受験のシステムは無理がありますね。看護師とか保健師とか薬剤師、もちろん医師も含めて医療職の教育システムでは、試験に向けて体系的に知識と技術を授業で積み上げてきています。就活だって関連病院など、複数のルートがあるわけですよね。心理職はそういうものはない。そもそも就職は、常勤職は非常に厳しい。
そのような中で、試験が3月というのは本当に酷だなと思います。だからこそサポートしなくてはいけないと思っています。話に聞きますと、河合塾KALSさんは、大学院と模擬試験の団体一括契約をする仕組みを提供しているとのことですね。実際、院生が模擬試験を受けられるようにしてサポートをしている大学院もあるとのことです。大学単位で学生を守り、サポートする環境を作っていかないと、学生だけでなく、教員も疲弊してしまうと心配になります。
5.模擬試験などを活用する
[下山]今後、公認心理師制度の遵守がより強くなってきた場合、大学の教員が全て学生の学課授業、学内学外実習、研究指導、論文指導、受験指導、進路(就活)指導などを担当することは難しいと思います。そのために、受験指導は、外部の助けを借りることも必要と思います。
[宮川]確かにそれは必要になると思います。大学院単位で河合塾KALSの契約を結んで予算的にも院生が安心して模擬試験※)を受けられるように環境を整えている大学もあります。ただ、このような学生サポートの仕組みがあることをご存知ない大学関係者の方もおられるようです。
※)公認心理師国家試験対応「模擬試験」
https://school.kals.jp/information/clinical-psy-moshi2024?_ttr=ed77660c566153a9e2fcee021d11982etc11705448284508
学生さんが修士論文、実習、ケース担当という課題に集中していて試験まで気が回ってないことは正直あります。大学の先生の中には、そのような状況に危機感を感じていらっしゃる方もおられます。学生さんの中には、内定が決まっていたけれども、3月の公認心理師試験に合格できなかった場合は、内定を見直させてもらうと言われた方もいるそうです。
そのような状況に危機感を持っている先生方が我々の講座を指導に活用されたり、我々を授業講師として呼んでくださったりしています。模擬試験に関しては、3月試験になって明らかに風向きが変わってきたと感じています。個人で申し込まれる方よりも、大学側から一括で申し込まれる割合が多くなっています。学生の余裕のなさを感じた教員が大学として申し込んでおきましょうとなっているところが増えているのではないかと思います。
6.第7回試験の傾向と対策とは
[下山]臨床心理iNEXTでも、同じように受験指導のプロである宮川先生にお願いをして、頑張っている多くの学生さんに、できる限り良質のサポートを届けたいと考えて、今回の対話研究会を企画しました。3月試験に向けて効果的なサポート環境を整えたいと願っています。
今回は、受験準備の時間が少ないので効果的に勉強する必要がありますね。これまでの6回の試験内容の出題傾向を分析すると対策も見えてくると思います。そのあたりは、受験指導の専門家ではないとわかりません。そのような第7回試験に向けての傾向と対策を教えていただけますか。
[宮川]我々河合塾では、これまでの公認心理師試験を分野別にまとめたデータがあります。今お見せしているもの※)は、心理検査に関するものです。各年度の試験で何回ずつ出題されているかをまとめたものです。
※)この場面は下記動画で視聴できます。
https://www.youtube.com/watch?v=1piea6J00HA
心理検査の数はものすごく沢山あります。しかし、出題される検査はある程度絞られてきています。毎年のように出る検査もあったりするわけです。5回試験で出なかったものが6回試験で出ているとか、第4回試験で出なかったものが5回試験で出ているということがあります。4回、5回では出なかったものが、次の回で出ていたりするのですね。
そのように考えると、例えば第5回試験まででそこそこ出ていて、第6回試験で出なかったものとして、一番下にある自閉スペクトラムの症状評価尺度であるAQJがあります。それで、来年はAQJの出る確率がそこそこ高いのではないかということが見えてきます、その上にある検査、WISCやWAISといった代表的な検査もこれまでこんなに出ているわけですから、まずこれらの検査を優先した方が良いということも見えてきます。
2月10日のiNEXT研修会では、心理検査に限らず、このような具体的なデータを使って、「3月3日の試験日までの残り1ヶ月はここを勉強しておきましょう」という傾向と対策をお伝えしたいと思っています。
7.試験前3週間の効果的な勉強法とは
[下山]なるほど。公認心理師試験の傾向と対策を具体的にしていただけるということですね。それは受験生にとっては何よりもありがたいことです。受験生の中には、宮川先生が著者「赤本 公認心理師試験国試対策2004(講談社)」※)などで、自己採点などしている人も多くいると思います。しかし、客観的な自己評価は難しいですね。
※)https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000380796
むしろ、修士論文を出して口述試験の準備をしていて気づいたら、もう試験までに1ヶ月を切って3週間となって慌てている人もいるでしょう。今回の研修会では、この3週間をどう過ごすかということもお話いただけると聞いています。
[宮川]3週間でどのように勉強していくかについては、ある程度のノウハウがあります。実は、効率が悪い勉強の仕方もあるので注意しなければいけません。大学院受験の時は、「とにかく書きなさい」と言われことが多かったと思います。「書いて勉強しなさい!」と言われるのは、大学院受験では論述試験であることの影響が大きいのです。ただ単に分かっているだけでは不十分で、それを論述で表現できなければいけないので、書く勉強がすごく求められます。
しかし、公認心理師試験だけでなく、臨床心理士試験も含めてですけれど資格試験は、マークシートになります。論述力が問われるわけではないので、論述力がなくてもきちんと分かっていれば解けるのです。書く勉強はすごい時間がかかるので、費用対効果がかかり適していないのです。今時の言い方をすると、“タイパ”がよくないのですね。我々日本人は幼い頃の漢字学習で、「10回書けば覚えられる」といった呪いにかかっているので、書く勉強の神話がなかなか抜けないんですよね。
[下山]なるほど、ノートを作るとかいうこともそれに含まれますね。私は“ノートを作る”派で、書いて覚えないと不安なタイプなので第7回試験を受ける院生だったら困ったと思います。
[宮川]研修会では、「このような勉強法では到底間に合いません」といった話もできたらと思っています。
8.研修会では試験場面を想定して解答練習をする
[下山]もう時間がないですから、無駄な勉強をしている暇はないですね。修論提出が2月初めという大学院もあると聞いています。それで、もし可能ならば、2月10日の研修会で、参加者の皆さんと一緒に問題を解く練習などもしていただけるとありがたいです。受験生には、事前のシミュレーション体験になって安心できるかと思います。
[宮川]どうしても話を聞いているだけだと、「では、実際どうするの?」ということになりますね。そこで、2月10日の研修会では、具体的に問題を皆さんに考えていただいて、「この問題はこういう視点で解けるんですよ」といった解説をすることも考えています。試験場面の事前体験のようなものですね。
公認心理試験では知らない問題とか、見たことない問題は出ると思っていた方が良いです。そういったものに出会った時にどうするかみたいな話もできたらと思っていますね。その時に具体的な問題を示してやった方が伝わりやすいですね。
[下山]河合塾KALSでは、直前対策で模擬試験を実施しているんですよね。
[宮川]実は、残念ですが、申込はもう締め切っているんです。大学院で一括して申し込んでいただいたところでは、模擬試験を受けて体験できます。我々としては全ての公認心理師カルキュラムを用意している大学院に模擬試験のご案内を送っています。団体申込ですと、安く模擬試験を受けることができます。
でも、担当の先生までなかなか届いていないことが多いのが実情のようです。知り合いの大学の先生から来てないと言われました。事務のところで止まってしまったりとかしているのだと思います。ですので、このマガジンや研修会で模擬試験の団体申込の制度があることをお知りになったら大学院関係者にお伝えいただければと思っています。
[下山]模擬試験の経験がないと、本当に本番で一発勝負みたいになってしまいますね。今回の研修会で類似した問題を出していただいて、みんなで解き方を学ぶみたいな、そんな体験ができると良いですね。そういう機会があると、実力を発揮できる準備ができると思います。
9.公認心理師制度が押し寄せてくる
[下山]私の印象ですと、公認心理師制度は、江戸時代末期の黒船到来のように、外部から押し寄せてくる感じがするんです。心理学や心理職の関係者が皆で協力して公認心理師制度を作ってきているのではありません。心理関係者以外で心理職を利用する目的で制度を作りたい人たちがいて、その動きがどんどん押し寄せてくる感じです。
特に医学モデルに基づく動きが押し寄せてくるので、院生だけでなく、教員も含めて心理関係者は皆、後手後手に回っています。現実の方が先に進んでおり、それを後追いする形で心理関係者は「3月試験どうしよう?」となってしまっている。
その結果、一番困るのは院生です。修論は書かなきゃいけない、外部実習には行かなきゃいけない、単位は取らなきゃいけない、就活もしなきゃいけない、試験も受けなきゃいけないとなっている。そのような院生たちを守り、サポートすることを、心理職が皆んなでやれたら良いですね。それがまだできていないのは残念です。
10.皆で助け合って問題を乗り越えていく
[下山]このような状況で、少なくとも受験生や院生は皆困っています。ですから、関係者が助け合うことは大切ですね。今回の研修会でも、宮川先生には講義だけではなく、その後に参加者から質問を受けて答えていただくなどの対話集会も予定しています。皆でわからないこと、困っていることを出して、皆の知恵を持ち寄ってワイワイと助け合いながら課題を乗り越えていく。これからは、そのような場が必要と思います。
公認心理師制度が導入され、さらにコロナ禍の影響もあったと思いますが、至る所で分断や孤立が起きています。そこで、臨床心理iNEXTでは、研修会だけでなく、会員の中にiCommunityという会員のコミュニティ組織を形成して、メンバーでお互いに情報共有や意見交換をして助け合う場を提供しています。今回の研修会では、iCommunityのメンバーは誰でも無料で参加できるようになっています。
公認心理師制度については、心理職以外の力が働いてどんどん方針や政策が決まっていく印象があります。だからこそ、心理職は、学生も含めてみんなで手を取り合って、自分たちの専門性なりスキルを守っていかなきゃいけない、そのように思っています。
今回の研修会も、そのような機会として、多くの皆様に参加してもらえたらと思っています。
当日は、どうぞ宜しくお願い致します。
■記事校正 by 田嶋志保(臨床心理iNEXT 研究員)
■デザイン by 原田優(公認心理師&臨床心理士)
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