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2021夏、広島原爆投下追悼式典@ローマに行ってみた

こんばんは!
イタリアの首都ローマに住んでる一般人、いねむりです。
昨年2021年の8月6日に、ローマで開催された
広島原爆投下追悼式典に行った時のこと、調べたことについて書きます。

もくじ
1.どこで行われたの?
2.すごい式典なのに、あまり知られていない…
3.誰が開催してるの?
4.どんな式典なの?
5.2021年の式典はどんなだったの?
6.バレリーナのカルラ・フラッチが登壇していた
7.もっと知りたい方に! おすすめ記事・映像
8.どんなイタリア語の単語で検索すればいいの?
9.実は各地で同様なものが開催されているらしい
10.おわりに
おまけ : 軽いレポマンガもあるよ!



1.どこで行われたの?

式典が行われたのは、パンテオンの前にあるロトンド広場。
パンテオンとは、118~128年にローマ皇帝ハドリアヌス帝が建造
(正確には再建)した、長い歴史のある神殿です。

この神殿は、歴史的な建造物建物にあふれるローマで
特に重要なモニュメントの一つで、
常に観光客で賑わう街の中心地にあります。


2.すごい式典なのに、あまり知られていない…

え、パンテオンですよパンテオン
日本に住んでいる日本の方にはピンとこないかもしれませんが…。
イタリア在住の日本人としては、まさかこんな所で
広島への式典をやってくれるの…?? と一瞬クラッとするくらい
おそれ多く格調高い場所です。

この式典の存在については、イタリア在住の日本人の間で
口伝え的にうっすら耳にはしていたのですが、
毎年行き逃し、昨年ようやく行ってきました。
でも、どうやら日本に興味のあるイタリア人にも
知られていないようだし、
重要度のわりには残念な知名度で、
日本に住んでいる日本人になんて全然届いてないのではと思い、
テキストとして残すことにしました。

3.誰が開催してるの?

ローマの日本大使館ももちろん関わっているようですが、
主催は「地球と平和委員会(Comitato "Terra e Pace")」という
イタリアの団体です。
政治家の アトス・デ・ルーカ(Athos De Luca)さんという方が会長で、
20年以上に渡って毎年8月6日あたりの日程で
パンテオンの前で式典を開催されているそうです。
様々な政治家が登壇したりメッセージを寄せたりもしているし、
憲兵隊による演奏もあり、憲兵の公式サイトにも情報が出る ので
イタリアの国が支援して行われているのかな、という印象です。


4.どんな式典なの?

式典のタイトルは「Mai Più Hiroshima マイ・ピュゥ・ヒロシマ」。
ヒロシマをもう繰り返さない」といった意味です。

式典の目的は、広島と長崎の原爆で犠牲になった人たちを追悼し、
悲しい歴史を繰り返さないように、毎年この原爆のことを
思い出しましょう、といったもののようです。

ネットで拾える記事を読む限り、毎年、
憲兵のバンドによる演奏や、日本の歌の歌唱、バレエ、
イタリアの政治家らによるメッセージ等が行われているようです。


5.2021年の式典はどんなだったの?

始まったのは、朝9時頃。
8月当時、ローマはロックダウンはしていなかったけれども、
感染者は多いままで、いずれにせよ自粛ぎみの状況でした。
おそらくその影響で、式典目当てに来ている人は
少ないようだなと感じました。

パンテオン右前に舞台が作られ、ここに登壇者の方々がおられます。
左に緑色のカバーが見えると思うのですが、
ここでなんとリアルタイムで掘削工事?が行われており、
まあ、ちょっとうるさかった…。

壇上で話しているのがDe Lucaさん。
彼のあいさつで式典は始まり…

憲兵の音楽隊が到着。

午前中なのでまだ良かったものの、すでに日差しが強く、
日陰にいないと長丁場の式典はつらい予感がしました。
憲兵さんたちも日陰にインして出番待ち。

憲兵さんらによるイタリアと日本の国歌演奏へ。

(ローマで君が代が聴けるとは思わなかったな…)

演奏を終えるとささっと歩いて退場。(暑いしな…)

次に、イタリア人俳優 Fabrizio Barboni さんによる朗読。
読んでいたのは、トルコの詩人 ナーズム・ヒクメット
広島の原爆にまつわる詩「死んだ女の子」 (※ 詳細1)


それから、日本人歌手の方による、
山田耕筰 作曲の童謡「赤とんぼ」、「この道」の歌。


さらに、ローマのバレエ学校「Scuola Balletto Di Roma」
生徒さんたちによるバレエ
へ。


↑ 演技の前半のあたり。
陰になっていて見えづらいのですが、手前にいる子が、
白い鶴の折り紙を持って踊っていました。

↓ フィナーレ。

(ローマの歴史ある&悪名高き石畳サンピエトリーノで踊るとかすごすぎ)


そして、 婦人国際平和自由連盟 イタリア支部(WILPF Italia)
会長 Patrizia Sterpetti さんや、
日本大使館の行使(だったかな?)の方によるメッセージ。


最後は、トランペットによるソロ演奏「Silenzio d'ordinanza」
とともに祈りを捧げ、式典は閉幕しました(※ 詳細2)


※ 詳細1: ナーズム・ヒクメットの詩とは?

この詩「死んだ女の子」は、トルコの詩人である
ナーズム・ヒクメット(Nazim Hikmet)が1955年に発表したもの。
詩を元に曲がつけられ、
日本では元ちとせさんと坂本龍一さんによるカバーが有名ですね。

日本語の歌詞は、「10代がつくる平和新聞 ひろしま国」等で読めます。
イタリア語の題は「La bambina di Hiroshima」といいます。

また、イタリア人俳優 Flavio Insinna さんが朗読している動画が
YouTubeにありました(動きがめっちゃイタリア人…)。

以下は、詩の冒頭部分。
イタリア語訳も検索すると出てきます。

あけてちょうだい たたくのはあたし
あっちの戸 こっちの戸 あたしはたたくの
こわがらないで 見えないあたしを
だれにも見えない死んだ女の子を

Apritemi sono io…
busso alla porta di tutte le scale
ma nessuno mi vede
perché i bambini morti nessuno riesce a vederli.


※ 詳細2: トランペットの「Silenzio d'ordinanza」とは?

この最後の「Silenzio d'ordinanza(シレンツィオ・ドルディナンツァ)」
って何やねん、という話ですが、
これは、イタリアで、戦争や事故などで亡くなった
犠牲者を追悼する式典などの時などに、軍の音楽隊が演奏する定番の曲、
というもののようです。
日本でいう「黙祷」のようなものなのかな。

● Silenzio d'ordinanza とは : Taps - Wikipedia


ちなみにこちらは、イタリアの警察公式YouTubeチャンネルによる
「Silenzio d'ordinanza」の映像。


6.バレリーナのカルラ・フラッチが登壇していた

イタリアを代表する有名なバレリーナである
カルラ・フラッチ(Carla Fracci)さんが、
長年この式典に関わり登壇していたようです。
↑ 上の動画は2011年のもの。

彼女は2021年5月に亡くなり、イタリアでも大きく報道されました。
共同通信の記事 : 「バレエのC・フラッチさん死去(2021/5/27)」

↓ イタリアの有力紙「Corriere di Sera」にも、
 2016年にフラッチさんが登壇したという記事が映像つきで出ています。


↓ こちらの記事等でも、彼女とこの式典の活動について書かれています。


58年にミラノのスカラ座バレエ団のプリマとなり、
イギリスのロイヤルバレエ団等でも活躍されたフラッチさん。
代表作は「ジゼル」だそうですが、
検索するとたくさん映像がでてきてどれが一番いいのかよくわからず…
画質が悪いけど、この舞台美術素敵だなあと思ったのを貼ります!


7.もっと知りたい方に!おすすめ記事

私はジャーナリストでもないし、政治の話を正確に話すのは無理なので、
せめてネットで見つけられる記事をみなさんにシェアしたいと思います!


2021年の式典の映像

まずこちらのYouTube映像、2021年の式典のものです。
壇上の参加者さんたちが話しているシーンもあります。


大使館情報

大使館による報告としては、このあたりが見つかります。

2016年の報告
2017年の報告


日伊協会さんの記事

日本語で検索すると、いくつかの新聞社が取り上げているものの、
海外のニュースとして軽く触れられただけの記事が多いです。
私が読んだ中では、日伊協会さんの2018年の記事が
一番詳しく書かれていました。


下院議長による、式典に寄せたメッセージ

こちらは、ロベルト・フィコ 下院議長
原爆後74年の式典(2019年)に寄せたメッセージ

ところで下院議長って?という方には→ イタリアの代議院について(Wikipedia)


個人的におすすめなイタリア語の記事

式典についてイタリア語で検索すると、
ローマのローカルニュースの一つとして様々な記事がヒットします。
私が一番分かりやすかったというか、
2021年の式典の具体的な内容について結構書かれているみたいだな
と思ったのは、こちら。

20年以上続いている式典ですし、イタリア語の記事は結構見つかります。


8.どんなイタリア語の単語で検索すればいいの?

もっと記事を読んだり映像を検索してみたい! という方へ、
いくつかキーワードとなる単語を置いておきます。

Hiroshima」に、「bomba atomica 原爆」や、
anniversario 記念日」「cerimonia 式典、セレモニー」
Roma ローマ」「Pantheon パンテオン」

あたりの言葉を組み合わせてみてください。

あとは式典名「Mai Più Hiroshima」もいいかと。

2021年の式典は、2時間弱ほどだったでしょうか。
バレエや演奏の時間もありましたが、ほとんどは、
参加者の方々が順々に発言されている時間でした。
各参加者さんがどのようなメッセージを発言されていたかどうか、
私が記事を訳したり映像から拾ってきてもいいけれど、
政治の話題での正確な翻訳は自信がないので、
興味のある方はご自分でお読みください。


9.実は各地で同様なものが開催されているらしい

このローマの式典だけでもすごいのに、どうやら色々な所で
原爆関係のイベントが行われているようです。

● エミリア=ロマーニャ州の チェルヴィアCervia)とか、
ここ明らかに小さな街ですが、原爆に関するイベントを開催したそうです。


ボローニャ(Bologna)でも、ボローニャの市や大学、イタリア外務省、
日本総領事館等が後援となって、 灯篭流し等のイベントが行われました。


シチリア島のパレルモ(Palermo)でも、島の日本文化協会が
市長や評議員らの後援を受け、写真展やドキュメンタリー映像の上演等の
イベントを行ったそうです。


また、聞きかじった話によると、イタリアだけでなく結構色々な国で
同様のイベントが行われているらしく…。

(私が生まれ育った所は、原爆関係のイベント開催等は
 聞いたこともないような土地だったので、
 こんな遠くの異国で継続的にイベントが行われていることを知って
 純粋に驚きです)

10.おわりに

今回、式典に行ったり、
いくつか日本語やイタリア語の記事を読んでみました。
この式典での一環したメッセージは、総合的に言えば、
広島と長崎の原爆はひどいものだった、
戦争はやめよう、
今後も世の中の様々な苦しみをなくすようにしたいね、

ということのようでした。

考えてみれば、パンテオンが2000年も同じ場所に同じように建っているのは
尋常ではない奇跡的なことです。
今のウクライナ、それからもっと前からの世界各国の様々な場所での
爆撃された街の様子などを見ると、言いようのない気持ちになります。
あまり知られていないけれど、ローマも大戦中に爆撃されているし
(今度どこかで書こうかな)。
私は反戦デモに参加したいとか
アクティビストになりたいタイプではないのですが、
黙っていてもやっぱり仕方がないので、
こうした式典に参加したり、署名や投票や寄付をしたり、
ちまちまと人知れずテキストを書いてネットに放つことが、私の反戦です。
来年も、またこの式典に行けたらいいし、
新しい追悼式典がもう生まれないでほしいとも思います。


おまけ : 軽いレポマンガもあるよ!


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