ジャック・アマノの “アメリカNOW” 副大統領候補の討論会開催。勝ったのは
10月7日の水曜日の晩、一発勝負の副大統領候補討論会があって、数日が経過して、どちらが勝ったのかの調査結果が出てきている。勝者は挑戦者のカマラ・ハリス、というのがアメリカの受け止め方のようだ。
それとは逆の、「現職副大統領のマイク・ペンスが優勢だった」と発表しているのは、全面的に大統領陣営と共和党を支持してきているフォックスとその系列。ドナルド・トランプ大統領自身も、「ペンスがハリスをぶっ潰した」とコメントしていたが、事実と真逆のことを真実のように、しかもクリアに言い切るのが彼だから。今回もそれだな、という印象。フォックス系以外は、「カマラ・ハリスが今回の討論の勝者」とする調査結果で、贔屓目なしにこっちの方が多くなっている。日本ではどう報道されてますかね?
アメリカはCOVID-19でボロボロ。そうなったのは大統領が有効な対策を指示しなかったからで、副大統領も同罪。ペンスはCOVID対策本部のトップを務めて来ているし。その彼に、「COVID-19が見つかった最初の日から大統領はアメリカ国民の健康を最優先して来ている」なんて言われても……ねぇ。今や死者数は21万人超。説得力はなかった。
経済、税制の話になるとペンスは勢いづいて、「バイデン政権になったら大増税だ」と言っていたが、事実と違う情報を口にするというか、巧みに言葉を操って視聴者に間違った印象(=国民全員が増税の対象)を植え付けようするのってフェアじゃない。確かにトランプは法人税を大幅に下げたけれど、恩恵に浴したのは大企業と一部の富裕層だけ。対するバイデンは、法人税を上げるプランを表明してはいるものの、景気への影響を考えてオバマ時代の税率に全面的に戻すことはしないし、低所得層の増税をしないことも明言している。
討論が終わっての感想は「ハリス、もっと攻め込めたのにな」というものだった。COVIDの失政については、もっと叩いて良かったと思う。叩くべきだった、とも。でも、(女性が)あまりにガンガン攻め込んだり、相手(男性)を論破したりすると、「感じが悪い」と世間が印象を持つので、それがかなり警戒されていたようだ。あまりに強いと拒否反応が出るので、男性、女性、どちらの間でも。ハリスが議会で最高裁判事候補のブレット・カバナー氏に質問をした際、元検察官の彼女は鋭く切り込んで、カバナーに最後まで答えさせなかったりがあって、「キツい女性」、「意地が悪い」という印象を持たれた。そこに今回は学んだのでは?
日本では、「アメリカは男女同権」てイメージが強いかと思うけれど、実際にはアメリカ社会、かなり保守的だ。まだまだ男性上位だし、女性の間でさえ、「女性は大人しくあるべき」とか、「女性は家庭にいて」的な考えの人って少なくない。だから、討論では女性が不利。黒人女性なら、もう一段不利。それでハリスは笑顔を絶やさないように、険しい表情をしないよう努力をしていたと思う。前回のヒラリー・クリントン、強過ぎるところが逆にマイナス・ポイントになっていたから。ハリスは、”金切り声を上げていた”とか、”感情的になっていた”みたいな批判が出ないよう声のトーンも抑え、発言を遮られても怒らないようにしていた。そんな彼女の笑顔に対し、”相手を小馬鹿にしているかのようだった”という声が上がっていた。険しい表情してても、笑顔でも、結局どちらでも批判する人は批判をするってこと。でも、あの笑顔に関して、「討論で不利に追い込まれ、それを隠そうとニヤニヤしていた」なんて指摘していた人がいたけど、それはてんで的外れ。
副大統領候補の討論会を終えての週末、トランプとバイデン、どちらに投票するかという調査の結果(1社の……ですけどね)では、獲得選挙人の予測=勝敗が279対125でバイデンの圧勝となっている。こういう調査の数字がまるでアテにならなかったのが、前回=2016年の選挙だったが、今回はさすがにトランプ陣営、厳しいのでは? マスク反対でずっときてたのに、自分がコロナに罹っちゃった=それもホワイトハウスで開いた集まりで。そんなだから、共和党議員でトランプと大統領選を戦ったテッド・クルーズでさえ、「大統領選、議会選挙の両方で大敗するかも……」と予測、憂慮をしている。
以上