藍の墨「藍晶(らんしょう)」販売再開について
一昨年に販売再開した「藍染め石けんシリーズ」に続いての再開アイテムは、藍墨です。私たちの農園で栽培したタデアイから顔料を精製し、墨師さんに仕立てていただいているものです。
この2年、藍墨を私自身がもっと楽しめるようになるために試みていたことなどに触れつつ、藍墨の楽しみや、販売再開についてのご案内をお届けいたします。
習字教室に通いました
字をきれいに書くことが苦手な私にとって、字のきれいな人は憧れであり続けました。そしてそれは、自分には手の届かない世界だと思っていました。
2021年の夏、そんな自分に「いや、ちゃんと自分の癖と向き合って稽古を重ねれば、いくらかは良くなるのではないか」と思うきっかけがありました。藍墨をもっと使いこなせるようになりたいという思いもかねてからありました。
思い立ったが吉日と、その日のうちに地元の習字教室の先生に連絡をして、入門させていただくことに。
46歳にして初めての習字教室。最初の月の清書はこんな感じでした。
「うったて」とか「はらい」とか、ちんぷんかんぷんですが、とにかくスタートラインに着くことが大事だと思って取り組んでいました。
通わせていただいている教室の先生は、毎月の課題だけでなく折々にオリジナルの作品に取り組む機会をくださるので、いろんな経験をさせていただきつつ、筆に親しめるようになりました。
週に2回、2時間ずつ教室に通って稽古を重ね、2年。人生で初めて有段者になることができました。
先生から教えていただくことに加え、同門の先輩方の稽古を見せていただくことで、たくさんの学びを得ています。
今、字をきれいに書くことへの憧れが、のびのびと自分の字を書く悦びにつながっている実感があります。とにかく続けることが肝心だという気持ちでいますので、ゆっくり長く、稽古を続けていくつもりです。
藍墨で書を楽しむ
通常の墨に使われる煤(すす)は大変細かい粒子ですが、藍の顔料はそれと同等の細かさにはなかなかなりません。その分、墨として練り固められた後、硯で擦ると水の中で顔料が分離しやすく、扱いに苦慮される方もいらっしゃいます。
藍墨をうまく使いこなす簡単なコツは、プルプルと粘りが出るまで濃く擦ること。そうすることで顔料が水と分離せず、しっかりと筆になじませることが可能になります。
「うったて」でしっかり藍墨を紙に移すと濃く力強い色になり、筆を浮かせながら丁寧に「はらい」を入れると、かすれながら藍の色に透明感が増し、涼やかな印象になります。ひとつの字に「うったて」の力強さと「はらい」の透明感の対比が生まれ、立体的な字に仕上がり、楽しいです(と書けるようになるのに2年かかりましたよ、2年)。
なお、これまでに藍晶(らんしょう)をご購入いただいたお客様の中には、万年筆でカリグラフィにお使いいただいたり、ガラスペンで作品作りに取り組まれた方がいらっしゃいました。
藍墨で塗り絵を楽しむ
書店の美術書関連のコーナーに足を運ぶと、バリエーション豊富な大人用の塗り絵を堪能することができるようになりました。
選ぶのに困るくらい、いろんな塗り絵が販売されていますね。中には書籍の形だけでなく、塗り終わったらお友達にあげたり飾ったりできるよう、ポストカードになっているものもあります。
藍墨で塗り絵に取り組む時のコツは、薄い色から彩色していくことです。
最初に藍墨を擦る時はプルプルの弾力が出るまで濃い色に擦り、それから好みの薄さになるように、硯の陸の部分で水を足しながら調整します。
そして、薄い色の部分を筆で塗ったらドライヤーで完全に乾かします。
今度は最初より少し濃い色を硯の陸で調整し、塗り足していきます。塗り足し部分を完全に乾かしたら、また少し濃い色を作り、という作業を繰り返します。
濃い色の部分を薄い色に滲ませたい時は、濃く塗り重ねた後で乾き切る前に、水を含ませた筆でこするようにして薄い色の部分になじませます。
大人の塗り絵は絵柄が美しく、細やかな描写を楽しめるものが豊富にあります。その分、初心者は色の配置に迷いが生じやすく、思い描いていたような仕上がりにならないこともしばしば。
藍墨の彩色の場合、藍の濃淡で完結するので、色の配置の迷いや破綻を生じさせることなく楽しむことができます。
さらに、白黒の濃淡より透明感や艶やかな印象のある作品に仕上げられるので、満足度も高いのです。
ちなみに、私が彩色した塗り絵はこちらです。
ポストカード版はこちら。
藍墨で切り絵を楽しむ
切り絵を楽しまれたことのある方や、ご興味をお持ちの方は、藍墨の彩色で仕上げてみられてはいかがでしょうか。
落ち着きのある中に艶やかさも備えた仕上がりとなり、お部屋や玄関などの演出として飾るのにお勧めです。
切り絵では黒い紙を切ることが多いかもしれません。藍墨を彩色に使う場合は白い紙で切って、爽やかさや軽やかさを取り入れるようにするといいように思います。
まずは好きなモチーフを丁寧に切って、その背景にどんな背景を作ればいいかよくイメージします。
全体を濃く塗るのもいいし、モチーフに合わせて濃淡を配置した背景を作るのも楽しいです。滲ませたりするのもいいですね。
濃い藍色のみで背景を作る場合、一度に濃い色に塗ろうとしないことがコツです。全体を薄い色で塗り、それをドライヤーで乾かし、またその上から少し濃い色で塗り、そしてまた乾かし、という作業を好みの色になるまで繰り返すことで、余分なムラの無い背景に仕上げることができます。
少しずつ塗り重ねる手間は、やってみると楽しい作業ですのでぜひお試しいただきたいです。
余談になりますが、全国の寺社仏閣に保存されている紺紙金泥経の紺色の紙は、これとほぼ同じ手順で作られているものと思われます。この辺りの話については、次回作の電子書籍で詳しく触れるつもりでいます。
切り絵の参考画像で使用しているモチーフは、全て松原真紀さんの『季節の草花と動物の切り絵』のものです。この方のモチーフはどれも本当に素敵で、いつも楽しく取り組ませていただいています。
切り絵を切るのに使用しているアートナイフです。
藍の墨「藍晶(らんしょう)」の販売再開
これまでも、直接ご連絡いただいたお客様には細々と販売していた藍晶ですが、今年からはオンラインショップにきちんとページを作ってご案内することにいたします。現在、増産のための藍顔料の精製を行っており、今月中には墨師さんに製作を依頼する手筈となっています。
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江戸時代には、浮世絵の彩色に使われていたという藍墨。今、国産の藍100%の藍墨は非常に手に入りづらい状況です。ぜひ、藍農家発の正直な藍墨に触れて、お楽しみいただきたいと思っています。
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