arabesque

引くこと　削ぎ落とし　研ぎ澄まして　余白のうつくしさは影に宿る
ちっとも解ってはいなかったのだと気がつく　不意の訪れ

愛しているとつたえたい　知ってると此方を見遣るだらう
口を開きながら少しうつむくやも　それでもいま云ひたくて

あなたを抱きしめる両腕　遥かの彼方まで運ばれる日に
夢みる瞬間は現実のものへ　人魚の最後の　光に溶け出すchampagne
泡の如く儚くなったとて構わない　きっと抱きとめ口づける
安心して溺れやう　かさなる息に湧き上がる雲　幾本も虹がかかって
凝縮する熱情　きよらなる求肥　求めていた浮かぶ瞳に飛び込む

あなたの声が冬の草原を渡るとき　喜ぶのは野兎ばかりではない
叩くとき空へ向かう音は言祝ぎ　宙はあなたに向かってひらいている
描くとき夜は傍でそっと見つめてゐる　黒鉛　インク　筆の運び
カンヴァスに相対する頬をなで　慈しみの灯火に
走り出すとき風が笑う声を聴く　みちる波動にささやく花々
力を込めるときすべてが調和する　絶え間ないうつくしさに

天使の髪をフォークに絡め　陽射しを浴びたトマトをオイル瓶に詰めて
コルクは開かれる時を待ち侘びて　Buon’appetito
黄金のアーチをくぐり　唐草の魔法が待つ木陰へ