桃
そっとやって来た霧 町中がすっぽりと白く覆われ 静けさが漂う
何だかわくわくして 幾度か外を覗くと 漸く眠りに就いて
ブルーと淡い桃に染まった曙の空 ロマンチックな一日のはじまり
お台所へゆく度に包まれる この季節のよろこびの香は官能の頂点
ただそこにあるだけで 完璧な調和 色かたちの高貴な佇まい
口もとへ運ぶたび甘い溜め息 至福は続く 柔らかに指が吸いつく
食べ頃を味わううれしさ しずしずと並ぶ姿がいとおしい
紙で折った箱にそっと差し入れ 渡した先から容れ物への反応も
数日置いて様子を見ていたというマダム 紙の調節機能が素晴らしいわねと
そっと覗く尖り まろみが際立たせる香り 今も手元に箱を置くひと在りて
したたる露 蝶の口吻 するりと伸ばし くるると巻き取って
最奥をさぐり当つ 味蕾には迷いがない 急な夕立が涼やかさを運ぶ
交わすなめらかさ わき上がる潮 煙る空 風に感覚を踊らせやう
Dense Fog Advisory (気象)濃霧警報
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Erat, est, fuit
あった、ある、あるであろう....🌛