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Reuben

混み合うイベント会場で 年配の女性にこの子にも着せてやってくれると
声をかけられた もちろん、どの浴衣にしようかと尋ねると ”これにする
ママが好きな色だから”と迷いなく アートの時間のサインペンや折り紙
自分がすきな色を我勝ちに選び取る子どもたちの勢い 金色や銀色はないの
ラメがいいと そこに用意されていなければ躊躇いなく声を上げる
自分以外の誰かのすきなものを選ぶ子は初めて やってきたときから
何となく気に掛かった からだに強張りがあるのでも
目線が合わないのでもない 声も出て 力もすっと抜ける 気のせいか

みな短冊にどんなことを書いているかなと 七夕飾りを吊るした笹の傍
”残り半年もよい時になりますように” ”みんなが幸せであって”
”お金持ちになって、馬を飼いおおきな馬小屋を建てる” なんとも
中西部らしいお願い事も 友が見つけた ”生きているお母さんに会いたい”

折り紙がすきな子や 何か作りたくてうずうずする子 けん玉にこま
だるま落としなど木のおもちゃに熱中する子 懐かしい国 嬉しい出会い
片付けに追われた夕暮れ 倒れるように眠りに就いて

翌朝目覚めて白湯を飲みかけたとき 短冊に添えられた名を唐突に思い出す
サンドウィッチと同じ名 祖母を訪ねて南東の州から来てくれていた

だからすぐ脱がなかったのだ 母のすきな色に包まれて
束の間安堵を覚えたのかもしれない ただ脱ぐのが面倒だったのやも
熱心に遊ぶうち襟直しに駆け寄ってきて 帯を締め直してやった
女性は頻りにシャッターを切っていた きっと彼の父親や天国の母親に
見せるのだろう また暫く会えなくなる孫の成長を 静かに収め続けて

流れる涙の理由を いつも的確に説明できるわけじゃない
言葉がうまく出ないときも感覚は常に先をゆく えらび取る色 感触は
本能の声 内部の 感性の表出を色が助ける 心は動き出すことを求めて
あの色を持っていってよかった 心を和らげる瞬間は あらゆるところに
隠れている そっと寄り添えば いつでも力を貸してくれる自然の理 

Don't Worry Be Happy ゆるやかなハミング 足指の解放にくつくつ笑い
日々のエッセンシャル ステップを刻み続け とりあえず踊ってしまおう

ブルーベリーのお茶が香る ひとときの出会い あの場でなければ
会えなかったであろう人たち 同じちいさな町に住んでいても
タイミングと流れが合うとき奇跡は起こる また会えたとて
何ができるわけでもないけれど 私の国へ行きたいと話してくれた
にほんで出会う色たちはどう映るだろう 心をつつむ色が四季折々に
そっと待っているから あの子がこれからもまっすぐ歩き続けられるよう
なるべくたくさんの時を笑って過ごせますよう 星がきっと守ってくれる

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芹沢 沓胡
Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛