インドでおなかを守る極意と、インド的「下請け文化」の考察-1/3
インドは、衛生環境の悪さで世界にその名をとどろかせている。
実際にインドに来たことのない人間でさえ、「インドは汚い国である」という認識を持っている。現場を知らない見解や偏見は最も避けるべきものだが、私も実際インドに住んでみた結果、残念ながら日本人の視点から見て「インドは汚い」という感覚は正しいと言わざるを得ない。もちろんデリーやムンバイなどの大都市には、極めて限られた小ぎれいな地域が存在するが、そういった大都市ですらお世辞にも衛生環境が良いとは言えない。ましてや、地方都市や農村であれば言うまでもない。外務省や厚労省が発表している注意情報を見ても、他の国では見ないほどの、あらゆる感染症が羅列されていることもその証左の一つでもある。
インドを一言で語ることはできないが、いかなる社会階層、いかなる地域でも、「不衛生なインド」に全く影響されずに生活することができないのは確かだ。今回は、衛生環境が悪いインドにおいて我々日本人がどのように対応すればよいのか、特にインドの食からおなかを守る極意について考察する。そして後段では、「不衛生なインド」の背後にあるインド社会の「下請け文化」についての考察も記録したい。
インドに一週間以上出張や旅行に来る人々を見ていると、四人に一人くらいは下痢や腹痛や食あたりなど何らかの不調を体験して帰国している。インド出張中の国内移動も考えた場合、おなかを壊すのは致命的である。インドのおなかの不調は一日二日で治るものではなく、出張や旅行の目的そのものを揺るがしかねない深刻な事態だ。そして、帰りの飛行機を考えた場合、もはや地獄の苦しみである。駐在員にとっても、おなかを守ることは重要だ。病院も頼りにならず、他国へ逃げだすことができない状況で、長期に渡ってインドからおなかを守るのは仕事を進めるうえでの基本動作である。
インドにおけるすべての活動は、まず、おなかを守ることから始まると言っても過言ではない。この問題は、あなたの全てのインド体験を左右する。
それでは一体何にどう気を付ければいいのだろうか。駐在員でさえも痛い思いをして、やっと効果的な対処に行き着くという遠回りをしている。
これだけ多くの邦人がインドに訪れているにもかかわらず、この状況が繰り返されるのは全くの無駄なので、駐在生活を経た個人及び周囲の経験に基づき、インドからおなかを守るための実践的な対応のセットを、その社会的背景も含めて、ここに書き留めておきたいと思う。
それらは、習慣と道具の二つの守り方に分けて説明できる。①習慣を使った守りとは、食に臨むにあたってどのような行動をすればいいのかということ。②道具を使った守りとは、いくつかの基本道具を携帯・利用することで、おなかを守り、もし被害にあった場合にその影響を最小限に食い止める方法である。
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