![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/161175941/rectangle_large_type_2_a4b05c9527b2ec3a388d4633eeaa9c53.png?width=1200)
Chap1.インドは中国に追いつくのか② サービス業の限界
前回(インドは中国に追いつくのか①)で、インドは中国のように、世界にモノを売って稼ぐことはできていないけれども、人・サービスで稼ぐことができるというお話をしました。
出稼ぎ労働者やITやBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)で、世界から稼ぐことができる、だからインドはこれまでの東アジアとは違った形で成長してくのだ、という話があります。
では、ITがあれば、インドは中国並みの経済水準に追いつくのでしょうか。
結論、追いつくことは難しいと考えていますが、まずは、インドがどれだけサービスで世界から稼いでいるかを見ていきましょう。
モノではなく、サービスで稼ぐインド
前回、先進国レベルの所得水準になるには、国内でぐるぐるお金を回すのではなく、外国(特に欧米・アラブなどのお金持ちの国)に何かを売って稼いで来ないといけないという話をしました。
では、各国が何で稼いでいるのかを示したのが以下の図になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1731122960-1bd4vjxtLmKlskIEMyWZJhOV.png?width=1200)
(IMF経常収支、2023)
この場合のモノは、車、鉄、半導体などになります。サービスは分かりやすいのはGoogleなどが提供しているITサービスや、旅行、コンサルティングサービスになります。
そして国家は出稼ぎ労働など(※二次所得収支)でも稼いでいます。新興国呼ばれる国は、フィリピンなどが分かりやすいですが世界で家政婦や建設現場の労働者として母国ではもらえない高い給与を受取り、仕送りとして、母国に送金しています。これも労働力の「輸出」と呼べそうです。
さあ比較して分かりますが、インドのサービス・出稼ぎによる稼ぎの比率が、各国と比べて突出しています。
中国が稼ぎのほとんどがモノなのに対して、インドは稼ぎの半分近くが、サービスや出稼ぎによって稼いでいます。
ビジネスをやっていると、先進国の人がやると高くつく、コールセンターや簡単なIT系のデータ入力作業、建築やITの設計作業、リサーチ業務などインドの会社に任せてしまう場面が多くあると思います。
ではここからが本題です。
なぜサービスの輸出では限界があるのか
結論を言うと、①インドが提供するサービス業はスケールしにくいからと、②インドが提供するサービスの付加価値が現時点で高くないため、ということが理由になります。
たくさん稼ぐということは限られたリソースで、より多くの人に使ってもらう(量を出す)、もしくは高く買ってもらう(単価を上げる)ということです。
製造業は、一般的に、1つの機械を使い、たくさんのものを作り出すことができます。そのため、稼働が続く限りは、1個当たりの固定費が下がり、多くの利益を生み出すことができます。
一方、サービス業はどうでしょうか。ここでサービス業も2タイプに分ける必要があります。
1つは、Googleが提供しているような、一度エンジニアが作成してしまえばどんどん複製して売ることができるクラウドサービス・ソフトウエアの提供。もう1つは、コンサルティングやコールセンター、家政婦、料理人、大工さんなど、実際に人が稼働しないと提供されないサービスが有ります。
このうち、後者は、事業拡大をしようとすると人が制約になります。
製造業では、10人の人で1000個のものを作ることができるかもしれないですが、サービス業の場合は、1000のサービスを提供するには1000人の人が必要になります。そうすると利益率が上がらず、事業拡大のスピードは製造業には追い付きません。
また、インドが提供しているITサービスは、主にBPOが中心で付加価値が高くありません。これは自分たちがGoogleのような世界に売り出すサービスを提供しているわけではなく、実際は(Googleなども含めた)世界中の企業の下請けとして働いているわけです。
インド発、世界を席巻するソフトウエアが生まれれば話は変わりますがそうした目立った動きはありません。(これは日本でも同じですね。日本でGoogleやAmazonなどの外資サービスを利用し「デジタル赤字」が起きているのと同じ状況です)
結論:中国と比較したインドの限界あり。しかし、インドに差し込む一筋の光は見え始めている
以上が、インドが中国以上の所得水準になりにくい大きな理由です。
まとめると、スケールすることで富をもたらすことができる製造業の発展が遅れ、それにより世界から稼ぐことができていないから、ということになります。
そこでモディ首相は2014年、Make in India運動によりインド国内製造および製品輸出を測ってきたわけであります。
Covid19以降、世界の企業が、政治的に緊迫する中国での製造の投資ペースを落とし、目線がインドに移ってきたわけで、今インドに新しいチャンスが来ているのは確かではあります。
ただ、インド人の、集団で決まったルールで動くよりは自由闊達で言論好きな性格は、あまり製造業向きとは言えず、東アジアのような製造業世界が実現するのは難しいのかなという(個人的な)印象は持っています。
では、インドは中規模の所得水準の国で終わるのか。その可能性は大です。
しかし、世界のインド化は止まりません。
世界ではインド人材の新しい潮流が起き始めているのです。
これがインド経済の一筋の希望になる、ということはまた次回説明します。
インドブログ プロフィール(詳細はこちら)
愛知県生まれ。
日本企業向けに、インドへの進出支援・事業戦略コンサルタントをしています。インドの経済をマクロ・ミクロな観点から、分かりやすく伝えていきます。趣味は登山。好きなインド料理はチキンティッカとゴア風カレー