(862字)BLUEBACKS「船の科学」の感想
私は生物学者であり、物理学・工学については何にも知らない。しかし生物の採集等で船に乗る機会はそこそこあり、船がどのように進歩してきたのか(生物学者なのでこういうところで「進化」と使いたくないのである)、興味を持って読み出した。
本書は船の歴史から、どのように作られるか、未来に向けてどのように開発が進むのか、「本の科学」の入門編、といった感じでまとめられている。
船の構造について語る以上、水の抵抗、波を受けた時の耐衝撃性や左右に揺さぶられても転覆しないための仕組みなど、工学的な話は多めではある。おそらく著者が想定しているのは、「物理学・工学についてはそこそこ知識があるが船については何も知らない人」だと思うが、門外漢も「難しいなあ」と思いつつも読み進めることはできると思う。
この辺り、「知識がある人には簡単過ぎるし、全然知らない人には難し過ぎる」という「概説本あるある」がある。この本についても、「自動車のエンジニアが船に興味を持って読んだ」場合には説明が浅いだろうし、「文系の人が手に取ってみた」というには難しいだろう。自分はどちらかと言えば後者に近いのだが、「まあ難しいところは完璧に理解できていないけどこういう感じなんだろうなー」くらいに軽く読み進めるくらいでちょうどよかった。
私は日本史、世界史問わず歴史についても関心がある。
この本を軽く通読しただけで、もちろん船について精通できるというわけにはいかないけれども、歴史の本に登場してくる船についてもより理解が深まり、想像できるようになる気がする。
個人のわがままを言えば、著者には「船の歴史」的な本を書いて欲しいところである(ブルーバックスではなくて現代新書か?)。ベネチア共和国等の海洋国家が作ってきた船や、有名な海戦で用いられた船など、船が人類の歴史に果たしてきた役割は大きい。ある意味、文明の歴史とさえいって良いと個人的には思う。「この時代のこの船はこういった動きが難しかっただろう。故にooの海戦ではxx側が敗北したのだ」みたいな解説を読んでみたいとも思った。
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