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分かるようで分からない「マーケティングの仕事」を現役マーケターが解説!

第1回:「立ち位置」で見るマーケティング

「マーケティング」という言葉を聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

人と話をしていて仕事は何かと尋ねられると「マーケティングの仕事をしています」というと、多くの方は「マーケティングなんですね」という答えが返ってくるのですが、その時に思うのは「この人は“マーケティング”という言葉で自分がどんな仕事をしているのか分かるのだろうか?」ということです。そのぐらいマーケティングの仕事とは多岐に渡る仕事の領域を指し示す言葉だったりします。

実際、転職エージェントから紹介したい仕事があるといわれ、いざジョブディスクリプションを見てみると、全く分野の異なるマーケティングの仕事だったことが結構あります。ちなみに私の場合はコミュニケーション領域が専門なので、それ以外のマーケティングの仕事の場合、知識があったとしても領域外の仕事ととなるため、これまでの経験が評価される可能性は非常に低いです。

そんな、知ってそうで知らないマーケティングと言われる仕事を少し整理しながら解説してみたいと思います。

マーケティングと言う仕事を分類するうえで、一番大きな分類項目としては「たち位置」という考え方を用いると分かりやすいかもしれません。ここでいう「たち位置」とはどのスタンスからマーケティングを行うかという意味合いです。つまり、「インハウス(=自社)」なのか「エージェント(=代理店)」なのかという点です。この立ち位置が異なると、マーケティングの目的が大きく異なります。

インハウス =会社の社員として自社の商品やサービスに関するマーケティングを行ないます

エージェント=広告代理店やPRエージェントの様にクライアントのマーケティングを行います。

【インハウスマーケター】
「自社」の商品やサービスを、どのようにして認知高め、消費者に購入・利用してもらえるようにするかを追求し売上に貢献することが求められます。それとあわせて、将来的に企業・ブランド価値を上げていくことも重要な目的となります。
それゆえ「自社の強みとなっていること」と「今足りていないこと」を正しく把握し、会社の定める事業戦略に沿ったマーケティング戦略の立案やそのための各施策の計画と実施、社内共有や承認プロセスなどを行います。
社内での関連部署との調整業務なども多く、戦略や施策プランニングに失敗すると売上目標が達成できないため、業績に対しての責任を負います。
投資した広告費に対してどの程度の効果が得られたかを示すROAS(Return On Advertising Spend)を高めることを求められ、成果を出せないときは担当マーケターは自らの評価を落としてしまいます。(※効果には売上が含まれますが、ブランディングの観点からそれ以外に「PR Value(=媒体露出の広告換算額)」「Top of Mind」「Share of Voice」なども効果に含まれます。)

【エージェントマーケター】
「クライアント」の商品やサービスの認知を高め、消費者に購入・利用してもらえるように施策を提案・実行し、その対価として収入を得ます。
それゆえ、提案する施策はクライアントのニーズやブランディング、そしてマーケティング戦略に沿った内容であることが求められます。
一部の場合を除いては、基本的にクライアント企業の社内調整には関わりませんが、施策実施に伴う複数の協力会社の調整などを行います。
個人的には、クライアントのマーケティング目標を達成するための業務という意味で、コンサルタントやTHE MODEL型営業のCS(カスタマーサクセス)と業務内容が近いように思います。
一定以上の効果をあげることが求められますが、あくまでもクライアント側が判断して採用された施策であるためクライアントの業績に対する責任を負わない点が特徴です。(※成果が上がらない場合は契約が無くなり売上は落ちますが、新たなクライアントを見つけることができれば売上損失の補填は可能だからです。)

また、この2つのスタンスの違いにより発生する大きな違いに「点と面」という考え方があります。エージェントが担うマーケティングは、施策単位という「点」であるのに対し、インハウスマーケターが担うべきマーケティングは時間軸も含めた中長期的で多次元から構成される「面」であると言えます。

極端な例でいえばこんな感じです。

■ 小売企業A社はエージェントB社の提案でECキャンペーンXを実施。予想以上の効果を出し、大幅な売上の増加や認知の向上が実現しました。
■ 一方で、同時期に実施していた店頭キャンペーンYがキャンペーンXと競合してしまったことで成果を出すことができませんでした。
■ また、ECチームやシステム部門への連携がうまくいかず、キャンペーンXを実施したことで一時的にECサイトがダウンしたことでSNS上では小売企業Aに対する悪評が拡散されてしまいました。

エージェントマB社のマーケター:
■ 
提案したプロジェクトXの成功によりクライアントのニーズを満たすことができました。施策としても高い評価を得ることでしょう。
■キャンペーンYに関しては関与していないためその失敗に対しては一切の責任を負いません。
■ キャンペーンXが原因で生じたECサイトの一時的なダウンやそれに伴い拡散された悪評には責任を負いません。

小売企業A社のマーケター:
■ キャンペーンXの成果と言う点は評価されます。
■ キャンペーンYに関しては評価を落とします。
■ キャンペーンXが原因でSNSで拡散された悪評に関しては一定の責任が追及されます。(関連部門への情報共有が出来ていなかった場合は特に)

このように、エージェントマーケターは「施策」という「点」で効果を上げることが最も重要です。一つの「点」である施策の大きな失敗は契約終了の原因にもなり得るため、各施策ごとの効果性が求められます。

一方で、インハウスマーケターは複数の「施策」という点が集合してできた「面」で効果を上げることが最も重要です。自社で同時期に実施するキャンペーンや関連部門との協力体制の構築、中長期的な影響など、総合的・複合的な観点からプロジェクトを検討し効果を出すことが求められます。

このように、インハウスマーケターかエージェントマーケターかで、業務に対する責任範囲や、効果性検証期間などに違いがあり、また業務内容自体にも大きな違いが有ることが分かります。

マーケターを目指す方は、この特性とご自身のキャリアビジョンをしっかりと考えたうえで、どちらのマーケティングの仕事に就くかをしっかりと検討いただければと思います。


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