映画『Red』における“空虚な女”について考えてみる
※この記事はAmazonアソシエイトのPRを含みます。
イラストの元ネタの4コマ漫画もよろしく⭐︎
先日観た映画『スオミの話をしよう』の感想の中で“空虚な女”について考えていたら、以前Amazonプライムビデオで少しだけ観たものの、途中で投げ出した映画の主人公を思い出した。
2020年公開、夏帆さん主演の『Red』。原作は島本理生さん。
何かのネット記事で、“女性目線での性描写が新しい”的なことが書かれていたような。
R15指定の、ものすごく端的に言ってしまうと不倫のお話だ。
この主人公の女性、夏帆さん演じる塔子は、たしかキングオブ空虚、空虚日本代表ぐらいのキャラだったなあと思い、最初から最後まで視聴し直してみた。
いつもどこか虚ろな目をしている専業主婦の塔子。都内の豪邸でエリートサラリーマンの夫と幼稚園児の1人娘、そして義母と暮らしている。
ある日夫の付き添いで出席したパーティーで、塔子は10年前に不倫関係にあった妻夫木聡さん演じる鞍田と再会する。
再会した途端、密室で激しいキスをかわす2人。
ん?ちょっとどういうことだ?
10年前に別れたけど、お互いずっと忘れられずに好きだったの?そこらへんの描写がなく、またその後もなぜ10年前に別れたのか、ずっと思い続けていたのかなどの説明はなし。
日活だから、日活ロマンポルノ風な(すいません、観たことないので、あくまでイメージ)センセーショナルなオープニングシーンにしたかったという解釈でよろしいでしょうか?その後を象徴する、予告編的な?
子供は問題なく素直に育っていて、夫は若干マザコンで自分本位な気質もありながら、ひどいモラハラとか、そういう感じは見受けられない。
義母も孫のお迎えなどに協力していて、あからさまなイビリとか、嫌味を言うとかはない。
どちらかといえば、複雑な家庭環境に育った塔子(父親が女を作って出て行ったとのこと)が、夫一家からいつもナチュラルに見下されているような気がして、勝手に引け目を感じているように思われる。
その後塔子は鞍田の紹介で鞍田と同じ建築設計の会社で働き始める。
塔子にちょっかいを出す先輩社員も登場しつつ、爆速で鞍田と再び関係を結ぶ塔子。
既婚者であることの躊躇や、心の葛藤はまったく見られない。
まあ、10年前も当時既婚者の鞍田と不倫してるんだもんね。
ちなみに冒頭のネット記事にあった“女性目線の性描写”って、女性の裸体を一切見せないアングルで撮りましたってことかな?
別に女性が好きに主導権握ってます的なことではなかったので、そこまでの斬新さはないかも。
塔子は家族といても鞍田といても、いつも虚ろな表情で、空虚そのもの。
外見は小柄で可愛らしく従順そう。だから登場人物の男たちに、これでもかと幻想を詰め込まれる。
塔子は鞍田と再会することによって、抑圧していた自分の自我を取り戻すストーリーと見せかけて、やっぱりそんなことはなく、最後まで鞍田の理想のお人形にされていたという印象だ。
ラスト(言っちゃいますよ)
鞍田は病死して、夫と娘が迎えに来るのだが、塔子はまた虚ろな目でそれを振り切る。
子供が新しいランドセル背負って、「ママいっしょに帰ろう?」と泣きながら叫んでいるのに。
これは、言葉は悪いが、正直胸くそ悪い。
最初から最後まで、子供にすら愛情を注げなかった塔子。夫は正直なところどうでもいいが(おい、ちょっとキツイですよ💦)、子供と離れることへの心の葛藤が弱過ぎて、空虚なだけでなく、人としてなにか絶望的に欠落していることが浮き彫りとなってしまう。
子供より鞍田への愛が強かったとか、そんな問題ではないだろう。
でもきっとこの人は、一生ひとりで生きていくことはなくて、また会社の先輩社員みたいな男が現れて、
「俺…ほっとけねえよ、お前のこと。もう無理するなよ…!」(😂)
みたいなセリフで抱きしめられて、新たな幻想を詰め込まれるのでしょう。
いやー、いいっすね。いや、よくないか。
観る前は、女性の自立を描いた作品なのかな?と思っていたのだが、『男にモテたければ空虚な女になれ!』というサブタイトルが付きそうなHOWTO映画でした。
興味のある方はAmazonプライムビデオでチェックしてみてくださいね。
最後に、この映画のロケ地として新潟が出てくるのだが、新潟弁ってぼんやりしてて難しいから、もう無理せず標準語でいいと思う。
ヨボヨボのお年寄りしか使わなそうな方言が、当たり前みたいにセリフに落とし込まれてるの聞くと、笑ってしまう。
他の地域の方言もけっこうそうなんじゃないかな。
ハリウッド映画で、日本人サラリーマン役の人が「拙者はサラリーマンでござる」って言ってるように聞こえちゃう。
『超訳ニーチェの言葉』より
男たちから魅力的と思われたいなら
男たちからもてたいと思っているなら、自分の中身に何があるか見せないようにすればいい。
まるで純粋な仮面だけのような女で、しかも姿がうっすらとしか見えない幽霊のような神秘的存在でいればいい。
すると、男たちの欲望はこのうえなく刺激される。男たちは、彼女の中身を探し始めるのだ。どんな魂を内に持っているのだろうかといつまでも探し続けるのだ。