オンライン体験は一過性のものなのか?これからの観光体験の姿
2020年7月23日に開催されたインバウンド業界最大規模のカンファレンス「インバウンドサミット2020」。「体験・ガイド」セッションの様子をお届けする。
新型コロナウィルス流行中の昨今、リアルでの観光ツアーができなくなった中で台頭してきたのがオンライン体験だ。
Airbnbのオンライン体験が4月にローンチしてから数か月経った現在、その予約数は約5万件に上るほど、オンライン体験は世界中で注目されている。オンライン体験の担い手が工夫を凝らした結果、体験自体の質が確実に上がっている。新型コロナウィルス収束後もオンライン体験の勢いは衰えないとの見方もある。
現在すべきことはオンライン体験の可能性を認識すること。そしてオンラインとオフライン双方の可能性を感じ、リアルの観光につなげる方法を模索することだ。この時期にこそ、地域の魅力を再発見し、オンライン体験を通して世界中に発信していく必要がある。
従来とは違ったものの見方で、観光のこれからを考えていく必要性が問われた。
オンライン体験の可能性
オンライン体験は一過性のものだと捉え懐疑的な人もいるが、新型コロナウィルスが収まったころにも盛り上がるとオンライン体験のホストを務める大森氏は言う。それは、ホストが工夫を凝らし、オンライン体験自体のクオリティが上がってきていることに起因する。今後、オンライン体験の担い手が増加すれば、体験の質は上がっていくに違いない。
オンライン体験はさまざまな場面で、ホストとゲストに多様な選択肢を与える。身体的な都合で自由に観光を楽しむことができない人にとっても、オンライン体験はプラスの要素になりうる。また例えば酒蔵といった普段は入れない所の見学もオンラインだからこそ体験出来るというのも魅力になる。
これからの体験はオンラインとオフライン共存の時代
オンラインの可能性が大きくなってきた現在、今までとは違った視点で物事をとらえ、柔軟に対応していくことが求められる。なぜなら、オフラインとオンラインでは提供できるコンテンツが異なるからだ。オンラインは、世界中に向けて発信できるというメリットがある一方で、時差を考慮したスケジュールが必要になるという点を、リアルの体験との差別化を図ることがポイントとなる。
また、オンライン体験を提供するにあたっては、通信環境などのインフラ整備を行う必要がある。また渋谷区観光協会のようなパブリックとプライベートの間に存在する団体が積極的にスキルやノウハウのトレーニングをする必要もあると同協会の小池氏は話す。
将来の旅の切符をオンライン体験で
今までは、InstagramやFacebook等のSNSを使って旅行先を決める人もいたが、今後はそれらに加えてオンライン体験が旅先を選ぶツールになる可能性がある。オンライン体験によって、その場所に行きたいという気持ちをより強くし、オフラインの観光につなげることもできる。
人を軸としたコト体験が主流になってくると、オンライン体験のホストに会いに行くことを目的に旅行を計画する人が出てくるのではないか。そのためにも、1回の体験で終わらせるのではなく、SNS等を通じたやりとりを続けオンライン体験以外の部分にも派生させることが重要になる。
新たな文化の形成に向けて
新型コロナウィルスが流行している現在は、いったん立ち止まったうえで「観光」というものを俯瞰し、地域の魅力を再発見する機会にもなる。また行政を巻き込んでいく姿勢、インフラの整備、地域のコミュニティとの連携を同時並行的に進めていく必要がある。
オンライン体験を始めてみてその可能性に気づくことがあるため、早めにオンラインを使ってみることを勧める。リアルの体験との差別化を図りつつ、オンラインならではのコンテンツの提供を行う。そしてリアルの観光が再開したとしても、オンライン体験を継続し、オンラインとオフラインの共存を図る必要がある。
新たな文化形成のための「トライ」の部分を、渋谷区観光協会やAirbnbから始めることで、未来につなげていくことが可能となる。
<登壇者>
佐々木 文人 氏
ノットワールド代表取締役。インバウンド領域において外国人向けのツアーの企画・運営。
大森峻太氏
ジェイノベーションズ代表取締役社長。渋谷観光案内所の運営やツアー事業。国際交流プラットフォーム作りやイベント対応を行う。
小池ひろよ氏
渋谷区観光協会 理事兼事務局長。行政、地域、来街者にとって渋谷での豊かな体験作り。世界に誇れる・次世代の観光資源を作りがミッション。
横田博之氏
Airbnb Japan 公共政策本部 渉外担当。居場所がある世界作り。コロナ禍でオンライン体験の始動。
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執筆:明治大学 渡邉夏美
編集:株式会社やまとごころ 堀内祐香
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