「美」の認識を間違えていませんか?
皆さんの思う「美しい体」とはどのようなイメージですか?
美しさの基準は人それぞれですが、多くの人が考えている “理想的な体” というものは、実はそれほど健康的ではないことがあります。
「これから運動をはじめよう」と行動を起こす背景には、自身の生理学的経験や心理的感情が複雑に絡んでいます。
生い立ち・国柄・文化などは健康美に対する認識へ関係していますが、テレビ・雑誌・広告・SNSなどメディアで目にするものも、健康や運動意欲に大きく影響を与えます。
スーパーモデルの例を見てみましょう。
平均的な体型とかけ離れている、とても細い体のモデルが理想として宣伝されています。
しかし多くのモデルは、コットンボール・ダイエット(綿を食べることで満腹感を得るダイエット)のような不健康で危険なダイエットによって、その薄っぺらい体を維持しています。
そして、メディアを通してスーパーモデルを目にした人々や、モデルに憧れる若い女性達は、そのモデルの体型を理想的な体と捉えます。
これは間違った健康美を印象付けてしまう一例に過ぎず、その他にも誤解を与えてしまう要素はたくさんあります。
健康で綺麗になるための選択
偶像化された体型は、必ずしも健康的なライフスタイルによって生みだされているという訳ではありません。
摂食障害のひとつである「オルトレキシア(orthorexia)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
一般的な摂食障害との大きな違いは、カロリーや量ではなく質に異常なまでに執着してしまうことで、グルテン・オイル・糖質・添加物・動物性食材などを徹底的に制限し、極端な偏食になっていきます。
「健康的」と考えられる食事以外を信じられなくなっている状態なので、不健康なものを摂取することに過剰な不安や恐怖心を抱き、制限を破ってしまうと嘔吐したりしてしまうこともあります。
結果、ビタミン・ミネラル・タンパク質など健康を保つために必要不可欠な栄養素が不足し、重度な栄養失調や神経性やせ症など様々な病気を引き起こしてしまいます。
体脂肪は多過ぎても健康には良くありませんが、少な過ぎても良くありません。
体脂肪は体温調節やホルモンの材料としても使われており、生命維持のためにも必要な成分です。
美意識が高いと言われるモデルや女優、セレブらによって、オーガニックフード・ヴィーガン・スーパーフード・スムージーなどお洒落なライフスタイルが毎日のようにSNSで拡散されている今日では、「こういう食事を取らなければ健康になれない」と受け取ってしまうのも致し方ありません。
しかし、痩せることを望んで(体重を減らしたくて)生じる拒食症とは異なり、オルトレキシアは純粋に健康的で自然体になりたいことを望んで発症しているため、自身が摂食障害であることを理解するのが難しく、不健康な状態もなかなか気づきにくいです。
本当に意識すべき健康マーカー
体重とBMIが標準に入っているからと、安心していませんか?
健康と考えていた体が、実際は健康とかけ離れているということはないでしょうか?
体重とBMIは、健康状態を評価する指標としては十分ではないと指摘されているにもかかわらず、最も長く使用され、最も一般的に使用されている項目です。
体重やBMIは手軽に測定できるので、自身の体型評価をこれらに頼っているという方も多くいますが、体重やBMIは見かけの肥満度にしか過ぎません。
BMIは単純に身長と体重の比率に過ぎず、その比率で低体重(BMI18.5未満)・普通体重(BMI18.5~25.0)・肥満(BMI30.0以上)を決定します。
BMIだけで健康を評価すると、筋肉量が多い健康なスポーツ選手が肥満(不健康)に分類されたり、代謝異常によって過剰に体脂肪量が貯蓄されている患者が標準体重(健康)に分類されたりしてしまうことも問題です。
性別・身長・体重が同じでも、見た目や体型はまったく異なるという場合もあります。
このことから、体成分がとても重要であるということが理解できます。
体成分分析は体を構成している各成分を定量化して、その過不足を評価します。
単純に体重を筋肉量と体脂肪量に分けるだけでなく、筋肉を構成している体水分量とタンパク質量をそれぞれ表示し、除脂肪量は筋肉量とミネラル量の合計として、体系的に表示します。
全ての成分が定量化されることで、本当の意味で筋肉質であるのか、痩せているのかを評価できます。
痩せているとは、
【身長に対して必要な体重が足りていないこと(標準体重より軽いこと)】
を指しますが、
【体重は標準体重であっても、筋肉量が足りていない痩せタイプ(隠れ肥満・痩せ肥満体型・サルコペニア肥満・スキニーファット)】も確認することができます。
全てを手に入れることはできません
運動をする目的は、大きく分けると次の3つです。
▶スタイルを整えて外見を良くするため
▶健康のため
▶スポーツ活動でパフォーマンスを向上させるため
残念なことに、この3つの目的を同時に達成することはできません。
それぞれの目的を達成するには、異なるアプローチ、トレーニングが必要であるためです。
そして、このような目的を持ち運動をしている方は、必ずしも健康体・健康美であるという訳ではありません。
スタイルに関して間違った理想を持ち、その理想に近づくことだけを目標にしていると、過剰なトレーニングや偏った食事など不健康なライフスタイルにたどり着くこともあります。
健康のためと考えて選択した行動であっても、夢中になり過ぎると、疲労感・脱力感・無気力・罪悪感などに苛まれ、精神的な症状が発生することもあります。
一見、不健康とは真逆にいるようなトップアスリートの中には、肝不全を経験したボディービルダーや心臓発作を起こしたレスリング選手もいます。
バランスの良い食事と一緒に好きなものを食べましょう。
健康だからと言って、特定のものだけを食べ続けるようなことはしないでください。
野菜・果物・穀物・赤身のタンパク質など、栄養豊富な食事を目指して努力することが大切です。
糖質を少しでも抑えたい場合は、炭水化物を一切抜くのではなく、ごはんを大麦に置き換えるなど工夫してみましょう。
大麦はg当たりの糖質がごはんの約1/2で、食物繊維は約20倍もあります。
栄養が適切に補給できていること、過度に制限されていないことを確認してください。
好きなトレーニングを選択してください。
ランニングが嫌いだからと言って、有酸素運動を避けてはいませんか?
有酸素運動はランニングが全てではありません。
水泳・ハイキング・サイクリング・ヨガ・ローイングエルゴなども有酸素運動として選択肢になります。
筋トレには、重いウエイト器具だけが効果的であると考えていませんか?
トレーニングチューブや体重を使ったトレーニングも効率よく筋肉を鍛えることができます。
様々なトレーニングを試して、自分に合ったものを探してみましょう。
十分な休養と睡眠を取ってください。
睡眠は筋肉の成長や喪失に関わる体内のホルモン分泌に直接影響するので、体成分にとって重要な要素です。
水分補給も忘れないでください。
人体の大部分は “水” です。脱水は、筋肉疲労・めまい・頭痛などの諸症状を引き起こします。
健康美に対する認識が間違った状態で、食事・運動・ダイエット方法などを決定しないでください。
健康の焦点を体成分に当ててみると、今後の選択が変わってくるかもしれません。