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女子サッカー育成プラン

10年以上、指導者としてサッカー、特に女子サッカーに携わってきました。
その中で色々と課題を感じ、以前とあるクラブに提案した内容です。
色々と難しかったですが、誰かの参考になれば😁


1. クラブが目指す方向性


理念の統一

クラブが掲げる目標を明確化する必要があります。
日本国内での優勝を目指すのか、世界大会での成功を目指すのか、方向性によって戦略が大きく異なります。

  • 国内での活躍を重視 国内大会で安定的な強さを発揮し、地域やクラブブランドを向上させることを重視。
    特定のクラブが能力の高い選手を多く抱えれば、他のクラブは人材が少なくなります。結果相対的に特定のクラブが強くなります。
    ※実際、戦術などなくても、選手の能力で毎年ベスト4には入れます。

  • 世界大会での活躍を重視 世界大会での活躍を目標とし、長期的な視点で選手を育成。高度な戦略・戦術の導入、トップ選手の育成に注力。

特に女子サッカーにおいては、世界大会での成功が競技全体の注目度を高め、競技人口増加や育成環境改善につながるため、世界大会での活躍を重視する方針を提案します。


2. 背景

少子化と競技者人口減少

日本全体で少子化が進行しており、それに伴いサッカー競技者の数も減少傾向にあります。
特に女子サッカーは男子に比べて競技人口が少なく、今後の育成環境整備が急務となっています。

女子サッカーの現状と課題

  • 競技力の低下 日本女子サッカーは、2011年のFIFA女子ワールドカップ優勝という歴史的成果を収めましたが、その後の成績は低下しています。

    • 例:2023年のFIFA女子ワールドカップではベスト8に進出するも、優勝候補国との差が明確に見られました。

    • 世界ランキングも過去のトップレベルから徐々に順位を落としており、競技力の維持が課題となっています。

  • 盛り上がりの欠如 国内リーグの観客動員数やメディア露出は減少傾向にあり、注目度が低下しています。


3. 現状と課題

現状:選抜型システムの限界

現在の女子サッカーの育成は、セレクションを通じて選手を選抜し、生き残った選手をトップに昇格させる「選抜型」です。
この方法は短期的に成果を上げることができますが、以下の課題があります:

  1. 選手の多様性が失われる

    • 競争が激化し、早熟選手や特定の能力に特化した選手が優遇される傾向。以前いたクラブでは、28名中22名が4〜9月生まれでした。1〜3月生まれは1名のみ。

  2. 育成リソースの偏在

    • 一部のクラブや地域にリソースが集中し、全体の競技力向上にはつながらない。

  3. 競争の不均衡

    • 国内では勝てても、世界大会ではヨーロッパ上位国、アメリカなどとの競争力不足が顕著。

課題:育成環境の限界

経済成長や競技力向上には以下の要素が必要です(W.J.バーンスタインの理論を基に):

  1. 私的所有権の保護

    • 成果が個人やチームに還元される仕組み。

  2. イノベーション

    • 育成方法や戦略の継続的な改善。

  3. 科学的合理主義

    • 科学的根拠に基づいた再現性の高いトレーニングや評価。

  4. 債権債務の制度化

    • 財政的安定とリソースの確保。

  5. 参加の自由

    • 地域やクラブ間の柔軟な移籍や交流。

  6. 開放性

    • 情報や人材の流動性。

日本の女子サッカー育成環境では全て当てはまりますが、特に「イノベーション」「科学的合理主義」「参加の自由」「開放性」が不足していると感じられます。


4. 育成プランの提案

1. 生物学的年齢を重視した育成

  • 身体的成長に応じたカテゴリー昇格を実施。

    • 例:13-14歳はJr.Youth、15-16歳はYouth、17歳でトップ昇格を目指す。

  • ボールスキルよりも身体的発達を基準とし、適切なトレーニング環境を提供。

  • 早熟選手には上位カテゴリーでの競争環境を早期に用意。

2. セレクションの廃止

  • 数回の練習参加を通じて選手を評価。長期的視点で選手の可能性を見極める。

  • 学力チェック廃止:学業成績とサッカー能力の関連性が不明瞭であり、不必要な排除を避ける。

3. 育成人数の削減

  • チーム編成を少人数制(例:1チーム20名以下)に変更。

  • 出場機会を増やし、試合を通じて選手を育成。

4. 地域連携型の育成

  • 他クラブや部活動との連携を強化。

  • 選手の移籍期間やルールを柔軟化。
    学年単位での移籍を可能にし、長期在籍による停滞を防止。

5. スタッフ教育と評価基準の策定

  • スタッフの教育プログラムを構築。
    科学的トレーニング理論や最新の育成手法を学ぶ機会を提供。

  • スタッフの評価基準を明確化し、教育の質を向上。

6. 選手の自主性向上

  • 内発的動機を重視した指導を行い、選手が自ら考え行動できる環境を提供。

  • 自主性を育むことで、長期的な競技力向上を図る。


5. 戦略的パートナーシップの構築

  • 周辺地域のクラブや学校と連携し、地域全体で選手を育成。

  • 〇〇を中心としたモデルケースを構築し、全国へ波及。


6. 長期目標

  1. 世界大会での活躍

    • 長期的視点で選手を育成し、競技全体のレベルを底上げ。

  2. 競技人口の増加

    • 世界大会での成功を基に、競技への注目度を向上。

  3. 持続可能な育成モデルの確立

    • 1クラブに依存せず、地域全体で選手を育成する仕組みを構築。


この提案は、女子サッカー界の発展を目的としたものでした。
今後、人口減少がほぼ確定している日本においては、他競技にも必要性が出てくると思います。

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