ドバイ 石油王が出席する世界的なフォーラムで社長の圧倒的なプレゼン。世界レベルだ
1)プリンスの登場
早朝、ロビーで七田社長を待つ。
すると「ちょっと5分ほどまってくれ!」と電話がかかってきた。
それからしばらくすると腰に手をやった社長が登場した。「ギックリ腰だ!」と顔に冷や汗をかきながらの登場だ。
「針を打ち込んだので、少しは良くなったけど、いやぁーまいった」と言いながらバギーに乗り込む。高齢になると体も大変だ。
自分で針を持っていて、腰を痛めたらそれを指すという、器用な人だ。素人が針を指して良くなるかは疑問だが、「本人は治ったよ」といっているので多少の効果があったのだろう。
そんなちょっとしたハプニングで不安を残しつつ、本会場へ。改めて来ると、やはりドでかい。ここで自分が講演するとなると、ちょっと手に汗握る。
社長はVIPとして最前列に席が用意されており、スタッフの誘導によりそこへ。
VIP席は20席だ。横一列に並んでおり真ん中になるにつれて、席の装飾が豪華になる。真ん中にはプリンスとサウジアラビアの優良企業Sabic社のAl-Mady氏の席があり、カップルシートになっている。このカップルシートはアラブ式なのだろうか。
しばらくすると、周囲がざわつき始めた。後ろを見てみると、20人ちかい白装束集団がぞろぞろとやってくる。真ん中には、薄黄色のマントをスーパーマンのようにつけている人がいる。
「Prince、Prince」と周囲がざわざわしている。どうやらプリンスのようだ。
プリンスの呼び名は「HRH Abdulaziz Bin Salman Bin Abdulaziz」だ。
「HRHはHis Royal Highness」で、皇族を表現する時に使う言葉で、名前は左からファーストネーム、父親の名前、祖父の名前と3つの名前が順番に並んでいる。アラブの王様の名前の作りは、面白いものだ。
プリンスが近づいてくるとあたりは興奮し始める。「おおプリンスだ」という感じで、周りが立ちはじめ、握手を交わす。ひと通りプリンスが挨拶し終わると、さっそくフォーラムが開始だ。
2)開会の言葉
まずは、Sabic社のAl-Madyがウェルカムスピーチだ。
そして、その次にプリンスが登場する。プリンスのスピーチには温かい拍手が送られる。会場が一体感につつまれるようだ。この国の人はプリンスが大好きだ。
本日は2つのセッションがあり、それぞれセッションごとに、3名が登壇しプレゼンとパネルディスカッションをする。
社長は第二セッションである。第一セッションは順調に進んでいく。どれも優良企業の社長でプレゼンはうまい。
進行役のモデレーターはNima氏で、完璧なファシリテーションをする。彼女はBBCやアルジャジージャのアナウンサーをしており、自分でもNPO法人を立ち上げているビジネスウーマンだ。
年齢は40歳くらいだろう。ピシッとしている姿勢と立ち振る舞い、キレイな英語でファシリテーションを行っていく。さらにはスピーカーに臆せず、様々な角度から質問をする。すばらしいモデレーターであり、世界のレベルを観たような気がした。
社長の登壇の時間が来た。いままで、欧米系の人間が多かったので、アジア系の社長が登場するのはやや場違いな気がする。しかしながら、そこは社長の腕前を期待する。
3)社長のプレゼンテーションがはじまる
Nimaに呼ばれる。「アジアから来たイノベーション企業にプレゼンをお願いしたい。ではこちらへ」といわれる。
社長がのそのそと壇上に歩いて行く。6段ほどある階段を上り終えて、壇上のまんなかでクルッと振り向き一礼をする。
社長の背中には、見たことの無いほど大きなスクリーンがあり、そこにパワポの画面が映りだされている。一礼をしたのち、壇上の左に位置するプレゼン台に移動し、話し始める。
まず、「アラブのような資源がある国とは違う、日本のような資源のない国がどのような発展を遂げてきたか、その観点で話をさせて頂きます。それが、私が呼ばれた役割だと思います。」という切り出し方だ。自分がプレゼンをする意味合いを位置づける、しまりの良い出だしだ。
プレゼンは原稿通り進んでいく。英語も流暢だ。緊張もしておらず、堂々としたプレゼンテーションで、大いに感心してしまう。日本の一部上場企業の社長で、ここまでできる人はすくないのではないだろうか。
そして、いい感じで時間内に終えた。
モデレーターNimaは社長のプレゼンにいたく感銘したようで、プレゼン後のパネルディスカッションで、先行してプレゼンをした2名を飛ばして、一番に社長に質問を投げかけた。
「なぜ、このようなイノベーションが何十年にもわたって行うことが出来たのか?その秘密はなんだ?」ときれいな英語で質問する。
社長は「え、俺?いきなり?」とややきょとんとした表情で、モゴモゴ回答をする。少し観点の違う回答をしていたので、モデレーターも困った表情をしていたが、そこはプロなのでうまいことまとめていた。
さらに、社長への質問は続く。「どんな事が経営において今後脅威となりえるか?」という問いだ。
社長が話し始める。
「日本企業にとって、もっとも大切なのは経営資源の配分である。いわゆる事業ポートフォリオをどのように構成するかである。このポートフォリオのなかで、どの事業で儲けるか、またどの事業はなくすべきか、を常に考えている。この組み換えをいかに最適に行うか、この事業ポートフォリオを変革するリスクに対しての脅威がいつも存在している。日本の家電メーカーの一部は、この組み換えに失敗したので現在は大変苦労している。」
説得力のある回答だ。
演壇から席に戻った。このパネルディスカッションが終了した時点でフォーラム終了だ。社長の周りには、プレゼンに対してのコメントや質問のために集まっている。ぼくは少し離れた場所から見ていたが、話は弾んでいた。
一段落して、離れて見ていた俺の方にきた。「やって良かったな。おい。いい宣伝になったぞ。おい」と緊張感も解けたのか、ご満悦の様子だった。
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