韓国財閥は律儀で勉強熱心。日本と比べて韓国の方が頑張っているかも。
1)韓国の財閥の訪問
「毎年のように新年のご挨拶にお邪魔したいのですが」という電話が、日本支社長のキムさんより、1月中旬にあった。お隣韓国では、旧正月の暦で正月を祝うため、2月に新年の挨拶回りをする。
日本人にとっては、新年感覚が抜けているなかで、「Happy New Year」と来られても、テンションの摺合せができないが、毎年恒例のイベントである。
来社する方は、韓国の財閥企業のオーナーだ。
韓国にはサムスン、ヒュンダイ、LG、LS、GS、ロッテ、SKなどの財閥企業がある。その財閥企業のオーナーが、わざわざ律義に当社に新年のあいさつに来るのだ。
2)韓国のお国事情
韓国は産業の裾野が狭く、日本のような中小企業・精密機械など産業を下支えする企業が少なく、大型投資で勝負する装置産業が主となっている。
そこでは財閥企業がグループ会社で大きな金を回しており、就職の機会は多くない。そのため仕事探しは大変な状況である。
財閥系に入社するのは選ばれたものだけであり、それが周知事実として、子供の頃からの競争激化を通じて、吐くほどに勉強するよう。
アメリカ留学時に、クラスメートの美女で酒豪のジンアンに「おれTOIEC800点弱だよ」と話したところ、「Very Low」と言われ、さらには「My score is 920.」と冷笑され、
「Youの会社有名らしいが、有名企業にそのスコアで入社出来るのは韓国ではImpossible。日本は本当に羨ましい」と笑顔で罵倒された。
韓国の就職に対する垣根の高さは良く聞く話だ。
また、韓国では、大手企業が社員の子供の大学授業料を補助する。2名までとの事だが、「4年×100万円×2名で合計800万円」を大手企業だと負担してくれる。
その補助なしでは、大学入学は難しいようで、「大手企業の社員の子は、また大手に行くし、逆に大手でなければ、ずっと大手でない」という構図らしい。1軍、2軍みたいになっている。
3)韓国財閥オーナーが訪問する理由
財閥企業のオーナーが当社に新年の挨拶にくる理由は、歴史にある。これはなかなか興味深い。
日本は、アジア企業で一歩先に高度経済成長を遂げた。その過程のなかで、韓国企業に設備投資をしており、時には無償で技術供与をしているケースがある。
日本から技術供与をうけた企業が、韓国でバンバン成長して、いまやサポートした日本企業が背中を見る事が出来ないほどビジネスで先行している企業になっていることがある。
当社にくる財閥企業も、1960年代に当社が技術供与している。もともとは技術が無く情熱だけの男性に、基礎技術を提供したのだ。
その後、極めて順調に成功し、コングロマリット化もうまくいき、10兆円企業に成りあがった。
その恩義をいまでも感じてくれており、新年に「うちがあるのは御社のおかげです!」とくるのだ。リップサービスのように思うが、その口調・内容を聞く限り本心だ。
4)ご一行の訪問
うちの会社のボードルームで、「母も宜しくお伝え下さいとの事です」とオーナーが深々と頭を下げている。
今回のご一行は、ズラズラと総勢10名だ。こちらも10人で応対しているのでボードルームがいっぱいになっている。それぞれの前にネームプレートが置かれており、先方はキムさんが4人もいる。覚えづらい。
特にアジェンダが無い会議なので、和気あいあいの雰囲気である。お互いを、ただただ持ち上げ合う。
「ウォン高ながら、この規模を確保できるのはスゴイ。」、「いやいや、御社の技術力は本当に驚くばかりだ」などなど。お互いを称えあった。
議題がないと、終わりのタイミングつかめない。皆さんが「いつ終わるんだろう」とそわそわした雰囲気になったとき、七田社長が「それでは記念写真を撮りましょう!その後、会食場へ移動しましょう」と切り出した。
そして都庁がきれいな応接室に移動し、20名の記念写真を取ったのち、それぞれが用意したレクサスで会食上に移動だ。
会食場に選んだプリンスホテルにある料亭は日本側10名、韓国側10名がズラッと一列に並べる畳の部屋で、お互いが手を伸ばしながら、日本酒をつぎ合っている。
ここでもひたすらに褒め合い、ホクホクのまま時間を過ごす。
目的は懇親のため、普通の飲み会になっている。おじさん達の爆笑が響き、和気藹藹だ。
オーナーの娘の話になった。娘は今年スタンフォード大学に入学したようだ。アジアのお金持ちは、米国の一流大学に入学させると言うがまさにその通りだ。
オーナーの物腰を見る限り、ナッツリターンの様な横暴さは感じられず、極めて紳士的な振いまいだ。厳しい両親に育てられ、帝王学をしっかりと身に付けさせられたと推測する。
実家の父親・母親が10兆円の売り上げ持つ会社を運営していたら、どんな思想・思考プロセスになるか想像も付かないが、社会に対して自分が持つ責任のデカさは認識するはずだ。
ナッツリターンで財閥企業は悪いイメージを持ってしまったが、本来は責任感を持つ重厚な人物に育つのがあるべき姿だ。
2.5時間ほどの会合であったが、最後は「ありがと」、「カムサハムニダ」で解散した。
解散後、東京支社長のキムさんからお礼の電話があった。「ありがとうございます。ちょっと、オーナーを送り届けましたので、みんなで韓国スナックに行ってきます。2次会です。」。ボスを送り届け、下っ端で2次会に行くのというのはどこでも同じだ。
5)ちょっとしたクレーム
海外VIPが宿泊するホテルを限られているので、目星をつけて電話で確認する。そして、その部屋にサプライズでスイーツを置いておく。
5万円ほどの豪華なスイーツだ。今回も、同様に手配をいれた。
翌日、キムさんから電話があった。「 スイーツありがとうございます。しかし、今後は絶対に行わないでください。宿泊場所が知っているのを、ひどく嫌がります。わたしも憤慨されました。。。」とクレームがあった。
難しいものである。
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