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うまく就農できなかった原因は土地と支援制度〜新規就農の最低条件〜

2024年春、主人の「農家になりたい」という夢を追いかけて、地方移住した我が家。

周りからの声を聞いても、客観的に見ても、農業にはビジネスチャンスがあるし、田舎にはポテンシャルがある。

なのに、半年で仕事をなくしました。


客観的には、農業はポテンシャルが高い

先日とあるテレビ番組で、「農業ビジネスはポテンシャルが高い」とほり●えもんが言っていました。

彼の言わんとすることは「まだまだ非効率的なところが多いからそこを改善すればめっちゃ儲かる」という話だったと思うのですが(違ったらごめんなさい)、そうでなくても、実際、知り合いの農業関係の方々からは、こんな声が聞かれました。

●田舎の農家は後継者不足に悩まされてるよ。
●歳とって辞める農家が増えて、土地もどんどん空いてきてるよ。
●特にみかんは単価の高い品種も出てきて、安定しているよ。
●とにかく今はビジネスチャンス!

また、移住先の地元の方(ママ友)は温かく歓迎してくれ、こんな言葉をかけてくれました。

●農家いいねー!うちのおじいちゃんも農家だよ!安定したら楽に儲かるよ!
●こんな田舎に来てくれただけでも、ありがたい!
●名産品も高齢化で衰退する一方だから、貴重な人材!

どの言葉も、真実だと思うじゃないですか。実際、真実だと思うんです。
なのに、我が家はうまく行かなかったんです。

実際には、やる気があってもうまく就農できない


いろいろ原因はあると思うのですが、システム的な要因として、我が家がぶつかった壁は『土地』と『支援制度の不足』でした。

①良い土地は代々引き継がれている

「辞めていく人が多いなら、土地はいくらでもある!」と軽率に考えていた私。

しかし、本当に土地がありません。正確には、『良い土地』がありません。どこの自治体にも、たいてい『農地バンク』というのはありますが、土地があると言っても、その土地の条件が良いとは限らないのです。

良い土地を持っている農家さんは、その土地を自分の子供・孫に引き継ぎたいと思って所有しています。なので、新規参入者には、良い土地は用意されないわけです。

②空いた土地がすでに荒れていて、初期コストがかかりすぎる

もちろん、良い土地を持っていても、後継者がいなくて辞めていく農家さんもいます。ただ、その良い土地も、一度手入れを辞めたら荒れ地になります。

そこからまたゼロから始めるとなると、すぐに収入に結びつかないどころか、初めに大きなコストがかかります。

我が家もある程度の資金を用意してはいますが、新規就農するために仕事を辞めてくる人に、ゼロからスタートして数年分の生活費と耕作放棄地を蘇らす資金と労力を求めていては、人が集まらないのも無理はありません。

それでも農業をやりたければ、『条件の悪い土地でも、耕してやる!』という根性、もしくは、『条件の悪い土地でも育つ作物を栽培する!』という賢さが必要です。

そこまで高いレベルを求められたら、新規就農のハードルは上がってしまいます。地方は衰退の一途を辿るしかないのが、よく分かります。

豪華な移住推進パンフレットや遠方への研修費の予算を、辞めていく農家さんがせっかく育ててきた農地を守ったり、農業に挑戦したいと言う人の支援金に充てるのは、難しい話なのでしょうか……

③自治体の農業への関心が薄い

そもそも、我が家の移住先の自治体には農業を盛り上げる意識がありません。

手始めに県のオンライン移住相談で、「農業はオススメしません」とはっきり言われました。市の移住ツアーでの相談でも「どうしても農業なんですか」「十分な資産はお持ちなのですか」と、全く支援する気が見られませんでした。

それでも、街が気に入ったので移住しました。恥ずかしながら、これは完全に失敗でした。

さらに、市が農業関連の支援制度を理解していませんでした。主人は10年程前に農家でアルバイトをした経験があるのですが、その時に受けた補助金と今回受けようとしていた補助金は、名称が変わっただけで中身が同じものでした。結果「支援金を受け取れない」という事態が発生しました。この事態はかなりの打撃でした。

しかし、そもそも国の新規就農の支援金って、所得制限があったりして、うまく使える仕組みに整っていないのです。(3月まで会社に勤めると条件の所得を超えるので、その年度は支援金がもらえなかったりします。)

なので、その土地の市町村がいかに独自の支援制度を上乗せするかが、新規就農者を定着させる鍵になっているのだと思います。

実際には、我が自治体にも、新規就農に必須となる市独自の2年間の研修がありました。しかし、3ヶ月も経たないうちに、主人はその研修先に、価値観の違いなどを理由に「解雇」を言い渡されて、仕事がなくなったのです。

自力で雇用してもらえる先を探そうと思っても、個人の農家さんが多く、人を雇う余力はない。

「困ったときは力になりますよ」と言ってくれた農家さんも、自分と相性の合わない農家さんに相談したことを知ると「最初にあっちに相談したなら、うちでは雇えない」と言う顛末。

そして、市に相談しても、他の有力な研修先を提示されることはありませんでした。

田舎にありがちな個人的ないざこざはともかくとして、結局、我が家が農家になろうがなかろうが、この自治体には関係なかったのだなと感じています。

今は、周辺の自治体にも範囲を広げて、就農先を探しています。奇しくも、お隣の市は、親身に話を聞いてくれるところでした。

そんな我が家の失敗から、新規就農の最低条件はこれです。

  1.  市独自の補助金制度が充実していること

  2. (地元の一般人ではなく)自治体の担当部署や現地の農家が、支援に前向きになってくれること

当然のことではあるのですが、就農地方移住には本当によく地域を見極める必要がありますし、おそらくそれができる人は一握りもいないのでは、と思います。日本の地方と農業の衰退は、なるべくしてなっているとしか言いようがありません……

しかしそもそも、その「衰退する日本の農業」をどうにかしたいと思って移住した身です。『石の上にも3年』。「新規就農の地方移住をして良かった」と言える日を夢見て、まずは3年、頑張っていきたいと思います。

いただいたサポートは、新規就農にかかる事業費と、田舎での暮らしや子育てを充実させるための地域貢献活動に使わせていただきます!