趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.097 映画 キム・ソンフン「トンネル 闇に鎖された男 」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は映画 キム・ソンフンの「トンネル 闇に鎖された男 」(2016/韓国)についてです。
韓国映画はレベルが高く、その中でもシンプルな災害映画ながら抜群の娯楽性と批評精神を持ち合わせた傑作。
こういう災害パニック、極限の状況、こそ人間性が出るので映画の題材としては相性がいい。
この作品は実話ではないが、いかにリアリティを出せるかが成功の鍵になる。
俳優陣がわかりやすい美男美女ではなく演技派の良い役者が揃っている。
ペ・ドゥナはもちろん可愛いですがw 演技派の女優さんです。
役者だけでなく、映像や演出も切れ味があり抜群。
特に最初の辺り、トンネルが崩壊するシーンでライトが消えていくところは怖いほど素晴らしい。
ハリウッドなら、災害パニックというジャンルがあるほど、火山、台風、津波、などCGでものすごい迫力のシーンが作れると思うが、
そういうのとは違う映画的なアイディアに溢れた作品こそ観たい。
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物語は、自動車ディーラーの主人公は仕事の契約もまとまり、意気揚々として家に帰るところだった。
しかし山の中のトンネルに入ると、突如トンネルの中に轟音が鳴り響き、照明が点滅する。
トンネルの真ん中あたりで、突如トンネルが崩壊して、車ごと生き埋めに。
気絶から目が覚め、あたり見ると車の周りはコンクリートや鉄骨や土に埋まってしまいどこへも行けない。
携帯のバッテリーは78%、水はペットボトル2本、娘の誕生日のために買ったケーキ。
トンネル崩壊の情報があって救助隊の隊長は現場に駆けつけるが、トンネルは完全に崩壊してしまった。
ギリギリ携帯電話がつながり、主人公と救助隊の隊長は連絡を取り合いながら、
サバイバルの方法を考える。
国をあげて大体的に救助作業も始まる。
何日間暗闇の中に耐えれば生き残れるのか・・・!
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いや〜痺れるほど面白かったです。
人間の死に方で、一番嫌なのは生き埋め。
火や水の事故は一瞬で死んでしまうが、生き埋めはジワジワと死の恐怖がやってくる。
この映画は災害パニックモノでもあるし、またサバイバル映画としてもかなりリアリティがある。
ペットボトルの水の飲み方も、口を直接つけると、そこから水が汚染されるので
少しづつ湿らす程度とか、
携帯のバッテリーをなるべく使わないように、毎日何時と決めて手短に話すとか、
またトンネルの中だけでなく、外の救助する側、家族との会話、マスコミや国や社会の様子もしっかり描いている。
これがハリウッドなら、大規模な事故になり何十人も生き埋めになって、チームで脱出するパターンになるような気がするが、
今作は極力人数を少なくしているからこそ、トンネルの中での孤独感が一層引き立ちます。
そして映画全体も間伸びせずピリッと際立った良い作品に。
こういう事件や災害は、韓国だけでなく、世界中で、日本でも手抜き工事や自然災害で起こりうることですね。
マスコミのえげつない報道合戦や、国の管理の無能さも、つい最近でも日本のニュースで見たような既視感を感じます。
こういう映画を見ると、どんな映画でもつい同じようなテーマになりますが、生き残るための知恵と諦めない精神力が大事になりますね。
印象的なのは映画の最初でスタンドでガソリンを入れてもらうが、少しボケた老人の店員に間違えて満タンに入れられてしまう。
お詫びにペットボトルを2本もらう。
これが運命の分かれ道というのも物語として面白いですね。
予備の水と携帯の充電に気をつけます!
今日はここまで。
「ハ・ジョンウとオ・ダルスの二人の男優が、『トンネル』で躍動感にあふれた演技をする中で、感情の動きを捉えるキャラクターがいなければならないと考えたが、それが私ならば嬉しいと思った」
/ペ・ドゥナ