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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.079 映画 ラミン・バーラニ「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は映画 ラミン・バーラニの「ドリーム ホーム 99%を操る男たち(2014/米)についてです。
![](https://assets.st-note.com/img/1653649884568-sfIpgOmr8O.jpg?width=1200)
こういうアメリカの社会問題(今作はローンの返済不能で家を差し押さえられる)をリアルに描いていく作品は、わざわざ映画館に行って観ないが、心に響くことが多いので、テレビ放送される機会があれば観たい作品です。
ニュースやテレビドキュメンタリーより、何十倍も記憶に残る。
リーマンショック後、このような話は報道でよく見たが、所詮ニュースだと自分の出来事のように思えなく距離感がある。
やはり物語として見ると、突然家を失う恐怖、また悪いことだと思いながら食べるために家を追い出す仕事をしていく心が麻痺していく様子、家族にとって”家”の大事さをひしひしと伝わってきて
この物語が単なる寓話とは思えない、いろいろと考えさせられる作品でした。
主な俳優たちの演技も、また家を失っていく人々を演じたリアルな素人の方々が素晴らしかったです。
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物語は、主人公は建築現場で働き、母と息子と三人で暮らす、平凡なシングルファーザー。
ある日、不況のため仕事がなく仕事道具や家のローンを滞納したため、突然自分の家を差し押さえにされた。
警察官を連れて不動産業者がすぐにこの家から出ていけと。家財道具も全て家から出されしまい途方に暮れる。
母と息子と共に治安の悪い安いモーテルへ退避し、主人公は必死に仕事を探すが不況で全くない。
家を出されたときに仕事道具が盗まれたと思い、その不動産業者に文句を言いに従業員と喧嘩になるが、そのとき不動産業者の社長に人の嫌がる仕事をやるか持ちかけられる。
自分を家から追い出した不動産業者から仕事をもらうのは屈辱的だが、家族のために、家を取り戻すために、その不動産業者の仕事を手伝うようになる。
最初は汚物だらけの家の掃除から、違法な法の穴をくぐり抜けて政府からお金を取ったり、次第に昔の自分と同じ境遇の人を騙していくようになる。
経験を積んでいき、その悪徳ビジネスをわかっていながら次第に倫理観が麻痺していく。
その結末は・・・。
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もう並みのサスペンス映画より、生々しくて怖い。
特に家を追い出されるシーンのあまりにものリアリティに眩暈がするほど驚き、けど目が離せませんでした。
そして映画の題名「ドリーム ホーム 99%を操る男たち」のように、
たった1%のお金持ちが99%の人間を操っていく、99%の人間を騙して搾取していく、アメリカの圧倒的な貧富の差にくらくらしてしまいました。
もしこの逃れられないスパイラルから、騙される99%の人間から搾取する1%側に回ったら、どんなに倫理観があっても自分を律するのは難しいでしょうね。
悪徳不動産の社長と主人公の会話で
「この国は負け犬には手を差し伸べない」
「成功した勝者が築いた国だ」
「この欺瞞の国は」
「勝者の勝者による勝者のための国だ」
「教会にはいくのか?」
「箱舟に乗れるのは100人に1人だ」
「他は溺れ死ぬ」
「私は溺れない」
ううう、自分はアメリカでは生きていけないかもw
内容も物語も考えさせられて素晴らしいが、やはり俳優たちが見事。
特に悪徳不動産の社長を演じた、マイケル・シャノンのあの冷たい瞳がこの映画の象徴のような気がする。
主人公のアンドリュー・ガーフィールドも若くシングルファーザーで家を追い出される役としてピッタリ。
そして1番の驚きは主人公の母親役があのローラ・ダン。「ワイルドアットハート」や「ジェラシックパーク」に出演していた人がお母さん?子供のいる主人公だからなんとお婆さん!
まあ若くして産んだという設定ならあり得るかも、けど非常に驚きました。
アメリカの社会問題の内容も、家を奪われる側から家を奪う側にという転落していく物語も、主な役に演技派の俳優、家を奪われる市民たちに素人の方を配置して、徹底的なリアリティを演出。
こういう社会派の映画たまには良いですね。毎回はきついですw
「いいか 家への思い入れは捨てろ」
「ただの箱だ 聞いているか?」
「大きな箱 小さな箱」
「大事なのはいくつ手に入れるかだ」
「家をたくさん持てば女たちも喜ぶ」
「母親の家 息子の家 自分の家」
大事なことはこの悪徳不動産社長の台詞の反対のこと。
家は単なる箱ではない、そこには人生がある。
今日はここまで。
映画を作ることで、そこに会話が生まれる。会話、会話、会話。とにかく僕にできることは問題についての会話を生み出すことで、その会話が世の中を少しでもいい方向に変えるきっかけになることを願うだけだよ。/ラミン・バーラニ監督