趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.355 映画 須川栄三「君も出世ができる」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は映画 須川栄三の「君も出世ができる」(1964/日)についてです。
和製ミュージカル映画!それもかなり本格的。
1964年に制作され、その年は東京オリンピックのあった年。
日本が右肩上がりで勢いがあった頃の作品。
画面からものすごいエネルギーを感じる。
ちょっと太ったフランキー堺さんが画面狭しと動き回る!
そして空港や会社などでサラリーマンの大群衆が一斉に踊り出す!
もうインド映画にも負けないほどのパワーに圧倒されます。
「できーる、できーる、出世ができーる!」
「アメーリカでは〜」
「タクラマカン〜」
ガンガン歌いまくる。
こんな本格的なミュージカル映画が日本にあったんですね!
こんなに傑作なのに、興行的に失敗して、その後なかなか日本ではミュージカルは根付きませんでした。何度もいろいろな監督が挑戦しましたが。
文化的に馴染まないのでしょうか。
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物語は、大手観光会社に勤める主人公(フランキー堺)は後輩の会社員(高島忠夫)と出世するにはといつも考えている。
ある日主人公は社長を派手に空港まで送り大成功だと大喜び。
しかし飛行機の都合で社長は空港まで戻ってきた。
一人空港でぼんやりしていた後輩は社長に愛人にお金を届けてほしいと頼まれる。
主人公は後輩にその愛人と仲良くなって、社長の弱みを握ろうとするが、後輩は真面目なのでその愛人と積極的に仲良くできない。
そしてアメリカに留学中だった社長の娘(雪村いづみ)が帰国して会社の上司に。
アメリカ式合理主義を取り入れて会社経営に口をだす。
その娘は後輩をいろいろな仕事や用事に引っ張り回し、次第に彼の優しさに惹かれていく。
会社はオリンピックに海外のお客をアテンドする計画を立てるが、ライバル会社も同じようなことを考えている。
そこで海外に強い有力者を接待しようと、主人公は尽力する。
果たしてその計画は成功するのか?
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まあ物語はあるようでないような。
日本式モーレツサラリーマンと優しいその後輩とアメリカ式合理主義の社長の娘が繰り広げる会社が舞台の話。
とにかく、監督の須川栄三さんはわざわざ2週間アメリカのブロードウェイに行ってミュージカルを徹底的に研究して作ったらしい。
その完成度はミュージカルの長い歴史があるハリウッドにも引けを足らないほど。
歌も踊りもセットも、カメラワークも全てが素晴らしい。
まあサラリーマンが会社で奮闘する話は日本らしいですがw
映画が始まり、フランキー堺の細かいギミックな朝の支度の楽しさったら最高です!
そして中盤、社長の娘(雪村いづみ)が会社で、「アメリカでは〜」という歌を大人数で踊り歌うシーン、まさにミュージカルな大迫力。
そしてラスト、仕事に失敗したサラリーマンたちがお酒を飲んで憂さ晴らしに、
街中を大人数で大暴れに歌って踊って、ここがこの映画の頂点。
あまりにも凄さに、鳥肌が立ちました。
映画も時代も本当に勢いがあったんですね。
植木等さんもチラリとゲスト出演!
今日はここまで。
私はゼロになりたい。
/「君も出世ができる」より
フランキー堺が仕事に失敗して言う台詞。
多分「私は貝になりたい」のパロディ