趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.301 映画 松岡錠司「歓喜の歌」
こんにちは、カメラマンの稲垣です。
今日は映画 松岡錠司の「歓喜の歌」(2008/日)についてです。
落語家・立川志の輔の同名新作落語を映画化したドタバタ人情コメディ。
監督は「バタアシ金魚」や「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」など人物描写に定評がある松岡錠司。
主演は小林薫、ヒロインは安田成美、
他に伊藤淳史、由紀さおり、浅田美代子、光石研、でんでん、片桐はいり、藤田弓子、笹野高史、塩見三省、筒井道隆、立川談志、などかなり芸達者な方ばかり。
内容は地方の文化会館で良い加減な主任がママさんコーラスグループの発表会をダブルブッキングしてしまい大騒動に。
こうやってみるといつものちょっと笑いのある日本映画っぽいが、
やはり落語が原作の映画なので、破綻もなくきっちりオチのある安定感のあるコメディになっている。
この感覚が他のコメディとはちょっと違うような気がします。
この作品も映画ですが、映画のようなダイナミックな感動より、落語テイストの安心した笑いの作品でした。
そこは腕のたつ松岡監督、ちゃんと落語の良さを映画に落とし込んでいる気がするんです。
・
物語は、地方の文化会館。明日は大晦日。そこの主任である良い加減な主人公(小林薫)は、大晦日にあるママさんコーラスの発表会が似たような名前だったため、ダブルブッキングをしてしまったことに気が付く。
まあどうせ暇つぶしのママさんコーラスだから頼めばなんとかなるだろうとタカをくくっていたが、
どちらのコーラスグループも1年前から予約し、このコンサートのためにチケットも売り、必死に練習してきて、どちらも譲らない。
安定の公務員でテキトーにやってきた主人公は、ママさんたちの情熱に右往左往してしまう。
そんなときに悪いことは重なり、飲み屋のツケが溜まり高額請求されたり、家族の不破で離婚を迫られたり、踏んだり蹴ったり。
ママさんグループのリーダー(安田成美)はなんとか妥協点を探ろうと、主人公とその後輩(伊藤淳史)と一緒に、もう一つのママさんグループに頼みに行く。
もう一つのママさんグループは市長の奥さんやスーパーの社長夫人(由紀さおり)までいるお金持ちグループ。
しかし病院の慰問をしたり、活動に対する態度は真剣。
リーダー(安田成美)のグループは皆バイトや仕事をしながら、好きな歌を真剣にやっている。
リーダーは老人介護の職員、旦那は夢見るタクシー運転手。それでも腐らずいつも笑顔で前向き。
スーパーの社長夫人(由紀さおり)はリーダー(安田成美)の話を聞き、合同演奏会を承諾する。
ただ文化会館は全員入れない。
そこで主人公の主任は工務店に頼み込んで、急遽ホールを改造してもらう。
発表会はうまくいきそう。
そしてお店のツケも、市長から預かった金魚(らんちゅう)を盗んでくればちゃらにしてもらえると聞き、主任はリーダーと盗みに。
そしてついに発表会は始まることに。
ラーメン屋と服のリフォームをやっているおばさん。彼女が出前の間違いをして、餃子のサービスをして、その餃子から大事なことを学んだ主人公。
そのおばさんが、急遽クレーマーのお客が来て来れないことに。
主任は駆けつけ、自分が代わりに服のリフォームを!
果たして発表会はうまく行くでしょうか!
服のリフォームは?
離婚の危機は?
金魚は?
・
ちゃんとダブルブッキングから始まったドタバタが群像劇で一気に広がり、
また主人公の良い加減なキャラ、数々の問題、離婚、借金も重なり、大爆発しそうなところから、一気に展開が変わり、最後はビシッとオチが決まる。
まさに”落語”な映画でした。
映画は映画、落語は落語と思っていましたが、意外に悪くないコラボでした。落語家が主人公の映画は結構ありますね。
「しゃべれども、しゃべれども」未見ですが「タイガー&ドラゴン」あとは「の・ようなもの」「幕末太陽傳」「頭山」
これからもこういう落語が原作や、落語の世界の映画など観てみたいです。
・
あとはこの映画主役の小林薫 さんの良い加減さダメ加減が最高。なんとなく吹き溜まりのような場所に左遷させられてやる気のない公務員の方って本当にいそうな気もします。
小林薫さんって渋い役もでき、このような軽い役も本当にお上手にできその幅の広さに驚きました。
ここまで良い加減なキャラクター、植木等か渥美清と思うほど。
この映画、もちろん物語も面白いですが、小林薫さんの良い加減な演技がかなり魅力になっていると思います。
今日はここまで。
「歌が好きなんです。歌っていると、辛いことも苦しいこともスーッと消えていくんです・・・」
/「歓喜の歌」より
働き者の中華料理屋兼服のリフォーム屋のおばちゃんの台詞