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「稲田さんの書く文章はスラスラ読めて心地よいです。言葉の選び方なのでしょうか」と訊ねてくれたA君への返答。
「稲田さんの書く文章はスラスラ読めて心地よいです。言葉の選び方なのでしょうか」と同僚のA君からチャットで質問されました。普段なら「わーい。ありがとう」で終わるところですが、A君は文章表現に興味がありそうなのでちゃんと返答してみました。
A君への返答
ありがとうございます。もしぼくの文章が読みやすいとしたらリズムを最大限に心がけているからだと思います。ただ、これは数十年にわたって身体に入れてきた文章の総体で身についたものであり、非常にフィジカルなものなのでA君は現時点であまり気にしなくていいと思います。
言葉の選び方を説明すると「それっぽい言葉は極力排除する=自分の身体を通った言葉しか使わない」になると思いますが、これも感覚的には身体性が強いです。
文章表現を語る際に構造やロジックといったメソッド的なものが多いですが、ぼくはとてもフィジカルなものだと思っています。その人の身体を潜り抜けた言葉にこそ何かが宿るし、そもそも文章とはその人の身体が刻むリズムや呼吸やテンションと無関係ではいられないはずで。その点で文章と音楽は非常に近いと感じています。そこを無視して頭だけで考えられた文章は読みづらいです。そこには息づかいがない。読みやすい文章は必ず書き手の息づかいに知らず知らずと合わせて読んでしまうはずです。それがガイドとなり、すらすら読める現象を生む。不思議なことに文章表現であまり語られないけれど身体性は重要なファクターです。
A君にはA君の身体性があるはずで、もし文章表現に興味があるなら自身の身体性に耳を傾けてあげることが何かしらの手掛かりになるかもしれません。A君は文章表現に興味を持っていそうだから長々と書いてみました。特に興味がなかったらスルーしてください。笑
追記(1)
そういえば村上春樹が文章とリズムについて書いていたなあ…と検索したらこんなのが出てきました。ぼくもそう思います。
「もしその文章にリズムがあれば、人はそれを読み続けるでしょう。でももしリズムがなければ、そうはいかないでしょう。二、三ページ読んだところで飽きてしまいますよ。リズムというのはすごく大切なのです」
「僕は文章を書く方法というか、書き方みたいなものは誰にも教わらなかったし、とくに勉強もしていません。で、何から書き方を学んだかというと、音楽から学んだんです。それで、何が大事かっていうと、リズムですよね。文章にリズムがないと、そんなもの誰も読まないんです。前に前にと読み手を送っていく内在的な律動感というか…」
追記(2)
A君から「文章の雰囲気がとても好きで憧れている書き手さんがいるのだけど、どうしたらいいのかよく分からない」と返事が届き、さらに返したのがこちらです。
雰囲気は文体です。文体の中にリズムがあると言ってもいいです。そして獲得したい文体があるならその書き手の文章を量多く読むことです。とにかく読む。何度も読む。浴びるように読んで獲得したい文体を自分の細胞や身体に通す感覚です。身体の中に文体がないのに見た目を真似してもたぶんあまり上手くいきません。がんばってくださいー。