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Webサイトは「カオス → 整然」のルートを通って作られる。

仕事の肝のひとつは「複雑/カオスな状態をシンプル/整然とした状態にトランスフォームすること」だと思っています。バリューの源泉ともいえる。仕事は準備が八割とよく言われますが、その大半が整理整頓なのかもしれません。複雑な状態を複雑なままにパスするのは仕事じゃないし価値を生んでいない。

Webディレクターは「複雑/カオスな状態をシンプル/整然とした状態にトランスフォームすること」にとても近い職務だと思います。企業の各Webサイトを作るには「カオス → 整然」のルートを通らざるを得ないからです。しかも要素や変数は企業文化・製品・社内リソース・ユーザーと多岐に渡ります。

そんなのぐちゃぐちゃに決まっているんだから、ひとつずつ整理して、あるべき場所に格納して、誰も迷子にならないような筋道を作るしかありませんよね。Webサイトは「カオス → 整然」を通過したアウトプットです。だから、他社のWebサイトを見て「ああいうのが欲しい」というオーダーはあまり意味がありません。それはその会社独自の「カオス → 整然」を通過した末にできあがったものなので。

もしあなたが事業会社のWeb担当者なら、あなたはあなたの会社の掃除をしなくてはいけません。誰も手をつけないまま放置されたカオスを整理し、誰もがもっと有意義に動ける「場」を用意するのがあなたの業務であり、Webサイトの制作です。

「誰もが」にはユーザーも協力会社も販売代理店も社員も就活者も株主も地域住民も含まれます。「今は誰を優先するべきか」の課題設定でまず作るべきWebサイトが決まります。制作会社やWebディレクターはその手助けとなります。ピカピカなカッコいいWebサイトを作るのではなく、汗をかいて整理整頓して今のカオスを片付けるのが制作会社の最初の仕事なので。

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このnoteを書いているタイミングで下記のツイートに出会いました。

デザインのクリエイティブに対する正しいアカウンタビリティとは「丸みのあるロゴがかわいさや親しみやすさを表現していて...」ではなく、「出産を経験し乳幼児を育てている母親は角張ったものを避ける傾向があるため...」といった事実に基づいた説明である

佐藤可士和さんがすごいのは、彼のクリエイティビティに勝る「アカウンタビリティ」なのです
普通のデザイナーやアートディレクターは柳井さんとフラットに話することなんかできない
クリエイティブ系のデザイナーは「良いものを作れるようになれば」というが、磨くべき場所が違うんだよといつも思う

ぼくはデザイナーでも何でもない地方のWeb制作者だけど、Web制作も基本的に同じだと思います。自分たちの文法で一方的に話して顧客に通じないと「リテラシーが低いよね」と陰口を叩くのは最悪で。クライアントの文脈で説明して対話して合意形成できる能力がWeb制作者には必要なんですよね。営業パーソンであれプランナーであれディレクターであれデザイナーであれエンジニアであれ。

同じ意味で「よいWebサイトを作れば顧客に分かってもらえる/役に立つ」という考えも信じていません。だって、その「よいWebサイト」って自分たちや同業者にしか通用しない判断基準なんだもの。判断するのはユーザーであって。顧客の文脈ですら話せない制作者がユーザーに届くものを作れるとは思えない。相手の文脈で対話できること。どんな仕事であれ、まずはそこがスタートラインだと思います。


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