Webサイト制作における『マクドナルドのヘルシーなハンバーグ問題』
Webサイトをリニューアルする理由に「更新しづらい/更新しやすくしたい」がよく挙げられますがぼくは半信半疑で聞いています。だって現サイトがほぼ放置されているような状態だったりするし。
もちろん「更新しづらいからそうなっているんだ!」という弁も成立しますが、Webの活用や更新が本当に事業に不可欠なものだったら「①こんなに長年放置しない」か「②とっくに手を入れた跡がある」のどちらかです。Webサイトが更新しづらい状態を数年も放置して平気だったんだから、ちょっとすぐには信じがたい。
Web単体で見たらもちろん更新しづらいのでしょうが、事業の側面で見たら別にどうということもないという状況なのだと思います。事業における優先順位が低いということですね。Web活用においてむしろ重要なのはそこです。事業計画や営業戦略にWeb活用が組み込まれていない/課題になっていないことが問題であって、更新のしやすさ云々は表層的な意見に過ぎません。
Webサイトのリニューアル目的で「更新のしやすさ」が顧客の要望に入っていると、「お任せください!当社のCMSはこんなこともあんなこともできます!」と制作会社は機能の説明に力が入ります。これにもぼくはすごく懐疑的です。これは『マクドナルドのヘルシーなハンバーグ問題』と同義じゃないかって。
『マクドナルドのヘルシーなハンバーグ問題』とは例のあれです。マクドナルドがユーザーアンケートを取ったら「もっとヘルシーな商品を増やして」の回答が多かったので商品開発して販売したら全然売れなかったという伝説。本当かどうかは知りませんがいかにもありそうな話です。それくらいぼくたち消費者は本当の自分と理想の自分が乖離しています。
聞かれたらそう答えるけれど、実際の自分はそうじゃないし、そもそも求めてもいないというやつですね。ぼくだって「あと5キロ痩せたいですか?」と人間ドックで質問されたら「痩せたいです」と答えるけれど、だからといってジムに通い始めるわけでもない。
もちろん本当にジムに通い始めるひともいます。でも皆がそうじゃない。大切なのは「オフィシャルな質問では理想を答えるけれど、それが本当にやりたいことか(行動するためのペインがあるのか/顧客のインサイトなのか)は全く別」ということをWeb制作側が理解しているかどうかです。
すごく単純な話ですが、Web制作会社においてぼくはけっこう肝だと思っています。基本的にクライアントワークだけど、顧客は常に真実を表現できているわけではありません。インサイトとはそもそもそういうものだし。この目線があるかどうかでヒアリングもコミュニケーションも全然変わる。
これからのWeb制作に営業の経験とスキルが非常に重要になると個人的に思っていますが、その論拠は前述と関係します。言われたままに作っただけでは商売にならないのは当然として、言われたことすらも疑って「本当に必要なこと」を顧客と一緒に探せるひとでなければ事業に役立つWebサイトは作れない。
少なくとも顧客から「ヘルシーなハンバーグ」を要望されたら鵜呑みにしないでとことん話し合うのは絶対必要だし、結論として「これはヘルシーなハンバーグだったのではあるまいか」と顧客と一緒に着地できなければ前に進まない。
今のWeb制作はそういうターンだと思っています。作れたらいいってわけじゃないし、顧客のオーダーに応えればいいってわけじゃない。大変ですよね。